マシーシ2 19世紀から20世紀初頭 マシーシは社会的偏見にさらされました。 マシーシは恵まれない階級の人々に とても人気があるダンスでした。 しかしカップルで踊るその振り付けが、 政府と教会から スキャンダラスなものとして敵視され禁止されました。 投獄された者もいました。
マシーシ1 マシーシ(Maxixe)はショーロで使われるリズムの1つです。 1880年頃のブラジル、リオデジャネイロで ダンスの音楽として生まれました。 ヨーロッパのダンスであるポルカ、 キューバのハバネラ、 アフリカ系のルンドゥーなど 複数の文化のリズムが混合したものです。
マシーシ4 音楽面に言及すると 南米によくあるハバネラの派生形と言えます。 シンコペーションが特徴的で アフリカ系ブラジルの「ルンドゥー」と ほぼ同じリズムと考えて差し支えないと思います。 またエルネスト・ナザレーの楽曲にある 「タンゴ・ブラジレイロ」ともかなり似通っています。
キューバのハバネラの影響って かなり大きくて 今のレゲトンだって同じリズム 人間は同じ事を繰り返している(笑) コロンビアのクンビアだって 違いはあれど似たフィーリングは感じる アフリカ由来の踊り・風習が 現地の文化と結びついた音楽っていう事なのかな
マシーシ9 ジョアン・ペルナンブーコのSons de Carrilhões「鐘の響き」も 基本マシーシですが 「マシーシ+ポルカ」の折衷型で演奏すると その田舎っぽさ、素朴さが強調されてより良いと思います。 また1拍目の音を、重く少し長めに強調すると より土臭さが増しますね
マシーシ8 Choros No.1は 一般的なショーロの進行とほぼ一致していますね 実際には、アンサンブルで演奏する曲と ギター独奏曲では構成が異なる場合もあります 例えばジョアン・ペルナンブーコのSons de Carrilhões等 ギター独奏曲はABの2部構成が多いです
マシーシ7 各セクションはそれぞれ異なるキー(調)を持ち 通常16小節で構成されます Choros No.1の場合 A→Eマイナー B→Cメジャー C→Eメジャーとなります 小節数は AA→32(16+16) BB→24(16+8) CC→32(16+16) ですね
マシーシ6 ヴィラ=ロボスのChoros No.1 曲全体に流れるリズムは「マシーシ」だと思います 冒頭のフェルマータ3つは マシーシの曲調にままあるテンポ変化を指し示します ここからは形式論ですが ショーロの曲構成は一般的にABC3部構成 それがAABBACCAと進行します
マシーシ5 またマシーシは、緩慢なテンポから始まったり 急速調になったり 緩急を伴う楽曲が多いですね。 例:Apanhei-te Cavaquinho(エルネスト・ナザレー) ここでクラシックの曲ですが ヴィラ=ロボスのショーロ No.1を参考にアナライズして行きましょう
ファビアーノ・ド・ナシメント来日公演 https://www.ele-king.net/news/009510/ 10/13(金)南青山のBAROOM <JAZZ at BAROOM>に出演との事 ブラジル音楽は、JAZZにもクラシックにも近接しているので 音楽文化に興味のある方にはオススメだと思います
7弦ギター26 ・Solistaの特徴 伝統的なショーロやサンバの流れを汲みつつも 楽器の可能性を最大限引き出すため コンサート・ホールでの独奏をメインに行うスタイル クラシック・ギター同様ナイロン弦を張ります 調弦はBEADGBEですが 曲によって7弦をAにすることもあります
7弦ギター24 結果に気をよくしたルイス・オタヴィオ・ブラガは 1983年、ギター製作家のセルジオ・アブレウに発注し 伝統的なショーロからコンサート・ホールまで対応できる ナイロン弦用の7弦ギターを作りました セルジオ・アブレウのクラシック・ギターは 村治佳織氏も使っていますね
7弦ギター2 製作家ラコルトと共に開発したこの7弦ギターには 左手で押弦する指板がありません つまり開放弦or共鳴弦の役割となります ナポレオン・コストの教則本では 7弦を主にDにチューニングしています デンマークのギタリスト・作曲家 セフレン・デゲンもこの楽器を愛用しました
僕は以前、安達常一氏にクラシックギターを師事していた 当時はガットギターで ジャズと現代音楽を演奏するというビジョンを描いていた そして同時期に ペルー音楽と現代音楽の笹久保伸氏も在籍していた http://shin-sasakubo.com/ 新しい音楽の創り手として期待したい
パンデイロ5 ショーロでは ジャコー・ド・バンドリンの楽隊「エポカ・ヂ・オウロ」のパンデイリスタ ジョルジーニョ・ド・パンデイロが第一人者だと思います 山羊皮でチューニングは緩めずテーピングもしません 楽器を持つ手の振りが重要視され その為16分音符が訛り独特のノリになります
7弦ギター20 ・Típicoの特徴6 ブラジルでの7弦ギターの先駆者はトゥチと言われていますが もう1人パイオニアを上げるとすれば 管楽器奏者のピシンギーニャです ベネジート・ラセルダとの双頭バンドでの ピシンギーニャの対旋律(裏メロ)が 7弦ギタリストをインスパイアしました
カヴァキーニョ5 パゴーヂやサンバでは花形楽器です また胴体がバンジョーで、より大きな音量の出る バンジョー・カヴァキーニョも有名ですね もちろん通常のカヴァキーニョでも、達人マウロ・ヂニスや ショーロのエンヒーキ・カゼス、ルシアーナ・ハベーロなど 大活躍している楽器です
カヴァキーニョ3 また調弦も、ウクレレよりもかなり高い音に合わせます ウクレレはGCEAですが カヴァキーニョは5度高いDGBDになります ウクレレとほぼ同じサイズで 鉄弦で且つ調弦が高いので 張力を強く感じます またDGBDの調弦を、パラグアイ・チューンと言います
7弦ギター1 クラシック・ギターを弾かれる方でしたら ナポレオン・コスト(1805-1883)の名前はご存知でしょう 19世紀フランスの作曲家・ギタリストです ソルの弟子でもありました 彼は写真左側にある「ヘプタコルド(heptacorde)」という 7弦ギターを使っていました
カヴァキーニョ4 ギターの4〜1弦と同じように DGBEと調弦する場合もあります 右手はナイロン製のピックを使います 弦を購入すると付いてきますね カヴァキーニョの右手の基本ストロークは タンボリンのスティック・ワークと同様で その為ブラジル音楽独特のグルーヴになります
7弦ギター8 ブラジルでの7弦ギター導入には諸説あります 「トゥチTute(1886 -1957)がロマに出会った後に導入した」説と 「ピシンギーニャの兄弟であるシナChina(1888-1927)が ヨーロッパツアーの際に持ち帰った」説です いずれにせよ20世紀初頭の頃です
7弦ギター28 ・Solistaの特徴3 右手はデデイラを使いません フィンランドのミカ・カウリスマキの映画 「ブラジレイリーニョ」では ヤマンドゥ・コスタがネイルサロンで 爪を仕上げているシーンが話題になりましたが 今はジェルネイルですね もちろん地爪でも問題ありません
カヴァキーニョ2 共通の祖を持つカヴァキーニョとウクレレですが いくつか相違点もあります それは弦/調律/右手です 弦は鉄弦を張ります ウクレレはナイロン弦で、柔らかく優しい音色ですが カヴァキーニョは鉄弦で、キラキラして切れの良い音色です より打楽器に近い役割だと思います
カヴァキーニョ サンバやパゴーヂ、ショーロで使われる小ぶりな弦楽器です ショーロだと「セントロ(中心)」と言われ リズムを構成する弦楽器としてはまさに要の楽器です 起源はポルトガルの弦楽器ブラギーニャです ハワイに伝わったウクレレと共通の祖なので サイズや弦の数は同じです
7弦ギター7 ヤマンドゥ・コスタ氏は「Sete Vidas em 7 Cordas」というTV番組で 「トゥチが、7弦ギターを弾くロマたちに出会い その楽器をショーロに導入した」という説を元に その起源を求めてロシアに向かいます https://www.youtube.com/watch?v=oLKpj-0_CEU
7弦ギター18 ・Típicoの特徴4 ヂノの場合、1〜2弦はナイロン弦を張り よりマイルドな音にしています またバンドリン奏者デュトラの提案により 7弦にチェロの弦を張るようになりました ナイロン弦の6弦ギター奏者とより調和的で 且つバイシャリアは目立つ弦構成になっていますね
7弦ギター25 そしてハファエル・ハベーロが ナイロン弦の7弦ギターを手にします Solistaスタイルの誕生です ハファエルのジョビン集「Todos os Tons」には マリオ・ジョルジ・パッソスの 1986、1991年製作の7弦ギターが聴こえます 6弦ギターはラミレスです
八王子ホーダ・ヂ・ショーロのご紹介です ホストは井ノ上ご夫妻です 4/29(土)の13〜16時 八王子サクラヤコーヒーにて開催です https://www.sakuraya-cafe.jp/ ヤマンドゥ・コスタ氏の楽曲に挑戦される猛者もいらっしゃるようです ご都合の良い方は是非どうぞ
7弦ギター21 ・Típicoの特徴7 対旋律と言っても即興演奏なので クラシックのように厳格な書法や禁則がある訳ではありません しかしバイシャリアは、いわゆる通奏低音よりも 音数が密になる傾向があります また即興でも慣用句のようなフレーズが多いので 曲調はある程度維持されます
7弦ギター12 ブラジルでの7弦ギターを 今日のような「バイシャリア」を多用するスタイルに築き上げたのは 何と言ってもヂノ・セッチ・コルダスの功績が大きいでしょう。 特にショーロは「ブラジルのバロック音楽」と言われるように 対旋律の使用、通奏低音的なバス、転回形の多用があります
7弦ギター19 ・Típicoの特徴5 バイシャリアを強調するもう一つの方法が 「デデイラ」と呼ばれる鉄製のサムピックの使用です 一般的には「アポヤンド」で弾きます 「アポヤンド」はクラシック・ギターでお馴染みの 「弾いた弦の隣の弦に寄りかかって止まる、強いタッチ」ですね
7弦ギター17 ・Típicoの特徴3 鉄弦の演奏面でのメリットは 音の立ち上がりが速く、音量が大きく、音質が鋭くなる事です ギターは他楽器と比較して 生音の音量がとても小さいのですが 鉄弦にすることで楽隊の中でも存在感を出せます 多人数での伴奏に適した弦の選択だと思います
ブラジル音楽の140文字コラム 次、グアラニー族か7弦ギターに関して書きたいな ポルトガル語の文献なども調べているから 少し時間かかるけれども 特に7弦ギターの場合、演奏者によっては 高音弦はナイロン弦 低音弦はスチール弦(鉄弦)と張り替えていたり なかなか面白い領域だと思う