走水 ゼロ(はしうど ぜろ)

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最近の記事

兵庫県庁に多数の抗議電話がかかっているとの報道に一県民として思うこと

今年の3月以来、兵庫県知事や県庁のニュースが続く。私は30年来の兵庫県民だが、記憶にある限り、兵庫県政の話題がここまで連日かつ長期間、全国報道されるのは阪神・淡路大震災以来だと思う。 報道の内容を見るにかなり異常な事態である。 一県民として思うところはあるが、県議会などが既に調査や対応に動いている。 効果のある対応は、そういう責任ある機関の方々に任せるしかない。 そんな中、気になるニュースがあった。 県庁に抗議の電話が殺到し、日中仕事にならないとか、他の部署からの応援を受

    • 失敗や不幸の原因を探し疲れた方へ

      物事が順調なとき、幸せを感じるとき、その理由をあれこれ考えることはありません。 一方、不本意なことが起こると「何でこんなことになったのか」とその原因を探したくなるものです。 私の場合、約1年半の調査と根回しを進めてきたプロジェクト案がトップへの5分程度の説明でボツになったときや、大事だった人との縁が切れた(または切った)ときなどに深刻な原因探索モードに陥りました。 失敗は忘れて前を向いていこう!というメッセージは私には受け入れ難いものでした。 それができたらやってますよと

      • サングラスと避雷針

        人であふれる街の中で、人生の敗戦を抱えて歩き続けるのは容易ではない。少なくとも今の自分にはそうだ。 恥を忍んでいうと、他人の幸福(と感じられるもの)を目にすることに気が進まない。自分の器の小ささに目を覆いたくなるが、事実である。 かといって閉じこもっていては生活が立ち行かないし、目を閉じ耳を塞いで外出するわけにもいかない。 この点、サングラスは便利だ。 サングラスを掛けると自分と社会の間に薄い壁を作るので、多少落ち着く。 また薄黒の色が付いた世界はリアリティが抑制され、作

        • 遂に、百貨店1階の香りにたどり着きました

          百貨店1階の上品な香りで住処を覆い尽くしたいという思いが高まった8月の暑い週末、アロマ専門店に向かいました。 しかし私はそういう店で買い物などしたことがない男です。いざ店の前に来ると自分の場違い感に恥じらいました。逡巡の末、店に踏み込みました。 感じの良い小柄な女性店員さんが挙動不審な私に声をかけてくれました。 「どういうのをお探しですか?」 いや、アロマに興味あって、詳しくないんですが、などと答えたと思います。自分の不器用さに情けなさが込み上げました。(いや、って何だろう

        兵庫県庁に多数の抗議電話がかかっているとの報道に一県民として思うこと

          道の側壁に仏像ほほえむー神戸市の福原京跡辺りをうろうろした話

          神戸市は今でこそ国際的な大都市だが、元は小さな農村・漁村と酒蔵群の集まりである。その名残か市内には多くの寺社がある。 休日の人波を見ると静かな寺社に行きたくなる。急いでバックパックを仕立てた。かつて平清盛による福原京があった兵庫区平野界隈に向かう。 5箇所ほど回った。うち2箇所をご紹介したい。 ○東福寺 山の麓に建つ東福寺は浄土宗のお寺で、阿弥陀仏を本尊とする。この日は本堂を開放しておられた。有り難い。本堂に入ると黄金に輝く阿弥陀如来像がこちらを向いている。 正対ししば

          道の側壁に仏像ほほえむー神戸市の福原京跡辺りをうろうろした話

          喪失感。2000年前の哲学者に学ぶひとつの考え方。

          21時、職場からの帰路。 薄暗い商店街を歩く家族連れ、カップル、飲み会帰りのグループを眺めながら考える。 「帰宅したら家に誰かがいるのはどんな気持ちだったかな」と。 ひとりの生活も1年半が過ぎたせいか、はっきり思い出せない。 苦い喪失感を覚える。 親密な人間関係を得たり続けたりするには、努力とセンスと運を要するようだ。私にはその全てか、そのどれかが欠けていた。 古代ギリシャにエピクテトスという哲学者がいた。彼は人間関係を含む身の回りの全て、果ては自己の身体も神からの預か

          喪失感。2000年前の哲学者に学ぶひとつの考え方。

          百貨店1階の香りで自宅を包めないかなと

          暑いこの季節、百貨店から歩道に流れてくる強い冷気って気持ちいいですよね。そして共にそよいで来る、あの品の良い香り。 私は、百貨店1階の香りが好きです。 今年の夏こそあれを自宅で実現したい。生活に彩りある変化が欲しいなと。 これまでもトライしてきました。 瓶に竹ひご状の棒を立てるフレグランス商品(専門用語を知りません)の売場があれば、どれがあの雰囲気の香りなのか調べ、これというのを家で試す。 今はニトリで買ったFall Orchardを1瓶置いています。深みがあって好きな

          百貨店1階の香りで自宅を包めないかなと

          猛暑日に神戸の山寺へ(摩耶山天上寺参拝記)

          2024年8月最初の土曜日。神戸の市街地も暑い。乾燥機が全機稼働しているコインランドリーみたいに暑い。 昼過ぎ、山寺に行きたいと思った。標高が高い自然の中はここより涼しいのではないか。 しかも山寺なら週末の街を歩く人々の幸せそうな姿を見ることもない。 ではどこを参拝するか。今日は日差しを避けてゆっくり居らせていただけると有り難いから、本堂を開放してくださるお寺がいい。 考えた末、摩耶山天上寺(神戸市灘区)に決めた。 六甲山系にある摩耶山(702m)の山頂近くに位置する天

          猛暑日に神戸の山寺へ(摩耶山天上寺参拝記)

          『夏女ソニア』(もんたよしのり&大橋純子)について

          1983年(昭和58年)夏、コーセー化粧品のCMソングとして発表された『夏女ソニア』。 タイトルの女性名ソニアは、同社が当時展開したブランド、ソニアシリーズに由来するものと思う。 歌うのは、もんたよしのりwith大橋純子。 途切れそうで途切れない、独特のハイトーンなハスキーボイスを振り絞るように歌うもんた。 レーザービームのように直線的に突き抜ける、声量豊かで瑞々しい声の大橋。 タイプの大きく異なる2人に共通する迫力が、この曲に、真夏に飛び交う欲望と生命を与えている。 わ

          『夏女ソニア』(もんたよしのり&大橋純子)について

          映画『温泉シャーク』(2024年7月公開)が気になる

          神戸の中華街から少し西、商店街の店舗に並んで元町映画館というミニシアターがある。 8月中旬に「サメ映画祭2024」と題し、サメにまつわる映画11本を上映するらしい。 そのラインナップに『温泉シャーク』というタイトルがあった。 温泉にサメが出る話かな。 とりあえず作品の公式サイトを覗いてみたところ、YouTubeのPVがいい意味で常軌を逸している。 ナレーションのサンシャイン池崎はほとんど絶叫しているだけである。 結局のところこの公式動画が発するメッセージは、 ①古代から蘇

          映画『温泉シャーク』(2024年7月公開)が気になる

          阿満利麿『歎異抄』を読む

          「ほっといてくれ」と呟いて、可笑しみがこみ上げる。 人間関係から離脱し、他人は失望して去り、今や私は人との縁を持たない世界に生きている。ほっといてくれは実現済みではないか。 人は孤独であり、人生はままならない。 これは仏教のキーコンセプトのひとつである。 一口に仏教といっても、その内部で編み上げられた方法論は13宗派56派といわれるほど多彩だ。 「歎異抄(たんにしょう)」は、浄土真宗の開祖である師・親鸞の教えが正伝されていないことを嘆いた唯円が、側近くで聞いた親鸞の言葉と

          阿満利麿『歎異抄』を読む

          Moon Riverと朝散歩

          朝、アパート前の通りをぶらぶら歩くことが習慣化した。 朝日を浴びると睡眠障害の回復に効果ありとの情報を信じて始めたが、その1時間後には朝日のもと出勤する。散歩自体の意味はないかもしれない。 集合住宅と商店がひしめき合うアパート界隈も、午前6時の人通りはまばらだ。人を見るのはしんどいので安心する。 夏のパワフルな朝日に背を向け、ビーチサンダル履きでぺたぺた西方向へ歩く。 そのとき大抵、頭の中でオーケストラのワルツと切ないハーモニカの旋律が流れる。 Moon River。 オ

          『ベンチプレス(上・下)』(東坂康司/著)を読む

          ベンチプレスという筋トレ種目がある。 台座(ベンチ)に仰向けに寝て、天井方向にバーベルを持ち上げる。ウェイトトレーニングと聞いて多くの人が想像する種目ではないだろうか。 本書は、実に362ページ(上下巻合計)にわたりベンチプレスのことだけを語る、稀有な本である。 上巻ではトレーニングメニューの組み方に紙幅を割いている他、フォームの作り方や身体の隅々の位置、力の加え方など丁寧に解説する。 何となくベンチやっているけど今後しっかり強くなりたいという方には上巻だけでも十分役立つ

          『ベンチプレス(上・下)』(東坂康司/著)を読む

          スーパーマリオブラザーズ・ワンダーのプロモーション動画観て泣いた話

          今年の冬から春は、酷い時期だった。 人間関係に悩んだ。仕事では現場で叩かれまくった。帰宅が深夜になる事も多かった。 無価値感や死に関する検索を頻繁に行っていた。 読書欲は予兆なく消滅し、将棋も差せなくなった。誰かのインスタをだらだら眺める日々が続いた。 そんなある夜、スマホに任天堂Switchの『スーパーマリオブラザーズ・ワンダー』(2023年10月発売開始)の情報が表示された。 私はテレビゲーム(という言い方が古いかも)に疎い。小学生だった時期に初代ファミコンが登場した

          スーパーマリオブラザーズ・ワンダーのプロモーション動画観て泣いた話

          とんびのいない空を見上げる

          山と田んぼのそばで育った自分にとって、とんびはごく日常的に見かける鳥だった。 とてつもない上空で、左右に細かなバランス取りながら、ナイフのような形の羽で風を捉える。それが彼らの生存に必要な行動なのか、能力の誇示なのか、娯楽の一種なのか、専門的なことは知らない。 地上から見上げてもその体長は測りかねるが、実際とんびの成鳥はとても大きい。水辺に休む姿を見たことがあるが、幼稚園児並みの堂々した体格だった。 ここ神戸の市街地でとんびを見かけることはほぼない。「とんびがいいひん(

          とんびのいない空を見上げる

          野球部3軍キャプテン背番号10の哀しみ

          小学生時代を過ごした昭和末期はJリーグ前夜の時期でもあり、スポーツといえば野球だった。類に漏れず野球にはまった私は、5年生から小学校の野球チームに入団した。 だがチームメイトは3年生や4年生から続けていた子が殆どで、私は自覚できるほどに明らかに劣っていた。 センスがなかったのもある。まず打てない。ゴロはよくトンネルする。フライもうまく捕球できない。監督に怒られながら後逸した球を花壇まで走って取りにいくのは実に惨めだった。 試合中に相手チームの監督が「あいつを狙え」とばか

          野球部3軍キャプテン背番号10の哀しみ