河合祥一郎訳の『新訳 ドリアン・グレイの肖像』は、クリアな世界を構築する。
すっかり忘れていたのだけれども、オスカー・ワイルドは、中学生時代に愛読した。今、思えば、ワイルドが好きな中学生などというものは、鼻持ちならないどころか、うさんくさく思える。私が読んだのは、新潮文庫版、福田恆存訳だった。
その後、二○一二年には、光文社の古典新訳文庫から、作家の平野啓一郎訳が出ているが、私はこの訳を読んでいない。
今回、角川文庫から出た『新訳 ドリアン・グレイの肖像』は、シェイクスピア学者として知られた河合祥一郎の訳である。一読して、その訳文は実に平易で