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【リファレンス1】イキウメ『奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話』。原典のあれこれ。

  観劇をきっかけに、読書の幅を広げるのは楽しいですね。

 イキウメの『奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話』は、八雲の小説を原作としています。

 劇場で当日渡される無料のパンフレットには、登場順に「常識」「破られた約束」「茶碗の中」「お貞の話」「宿世の恋」の五編と書かれています。
 観劇して、原作に興味を持った方には、上田和夫訳『小泉八雲集』(新潮文庫 昭和五〇年)をお薦めします。近年には、平川祐弘の訳で、河出書房新社から個人完訳が出ています。『骨董・怪談』(二〇一四年)でほぼ、カヴァーできますが、「破られた約束」は、『日本雑記』所収です。

 また、「宿世の恋」は、歌舞伎の『怪談牡丹灯籠』を八雲が小説化した作品です。こちらは、『霊の日本にて』に「悪因縁」として収められています。
 歌舞伎での上演は、近年、玉三郎が頻繁に手がけていますが、舞台で焦点が当たるのは、伴蔵女房お峰です。私が観たなかでは、お峰を玉三郎が、伴蔵を中車が演じた二○一五年七月歌舞伎座での通し上演が記憶に残っています。物語全体の語り部に、三遊亭円朝を出し、しかも四代目猿之助がケレン味たっぷりに演じました。

 歌舞伎の『怪談牡丹灯籠』は、名人円朝が創演した『牡丹灯籠』をもとにしています。速記は落語や講談の実演を、文字に書き起こすところから、急速に発達したといわれていますから、私たちは円朝の高座をしのぶことができます。二○○二年に岩波文庫から改版が出ていますので、こちらも入手は容易かと思います。

 お盆休みを物の怪とともに過ごしてみてはいかがでしょうか。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。