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映画雑考

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映画レビューと言うよりは、観ている間と後に思ったことを書き留めたメモの様なものです。
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記事一覧

#094 「ゴーストワールド」

#094 「ゴーストワールド」

自分と世界との折り合いが付かなくて、周りはうまくやれている(様に見える)のに、どうして自分はこうなんだろう。みんなはこの世界を楽しめていて、自分ばかり問題を抱えていて、必要以上の孤独を感じる。

若い頃に、こういう気分から抜け出す、元い、薄めたり誤魔化したりする方法を見つけ、それを自分に許せる様になっていくまでに、すごく時間が掛かった気がする。とにかく苦しかった。多分、誰もが。
でも、その時期にし

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#093 「ウーマン・トーキング」

#093 「ウーマン・トーキング」

この時期、女性の権利や、女性が虐げられてきた歴史などについての映画が多かった気がする。様々な表現で、色々な角度から掬い上げられていた、女性たちの声の一本。

大きな、思い切った決断をする時に、信仰というのは力を発揮するのかなと思った。断腸の思いで。という程の状況は、日常的には起こらないけれど、勇気を持って団結して超えなくてはいけない場面で、彼女たちは聖書の一節や歌や、言葉で鼓舞されていく。女性が文

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#092 「ゾディアック」

#092 「ゾディアック」

マスコミ宛に暗号を送りつけてくる、実際にあった連続殺人事件のお話。
監督は、デヴィッド・フィンチャー(2007年)。
事件の真相に向かって一直線な映画はそもそも好きなので、どうせ好きだろうなと思って観たら、やっぱり好きだった。マーク・ラファロが出てくるとは思わなかった。

殺人シーンは薄目で観つつ、誰が犯人なんだろうと思って観てはいるんだけれど、だんだん事件を追いかける側の狂気みたいなところに踏み

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#091 「パーセプション 天才教授の推理ノート」

#091 「パーセプション 天才教授の推理ノート」

海外ドラマシリーズは、基本的には観ないことにしている。
沢山面白い作品があることは、良ーく知っているつもり。でも、長いから!
観始めたら、徹底的に観てしまうことは分かっているので、基本的には無いものとしています。
今までに観たことのあるドラマシリーズは、大好きな映画作家ブリット・マーリングの新作、「OA」と、映画の趣味がめちゃくちゃ合う人が熱烈に勧めてくれた、「MR. ROBOT」くらいかな。

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#090 「アメリカン・ユートピア」

#090 「アメリカン・ユートピア」

近年、最も見逃したと思っていた作品のひとつ。
劇場で観るべき作品なのは分かっていて、いつか劇場で。と思っていたら、こんなに時間が経ってしまった。無限のインスピレーションが積み重なって、自由だった。社会や政治がちゃんと含まれた世界を自由に生きるというのは、それこそ楽園の定義かも知れん。

配信になってしまったけれど、2022年の最後に観ることが出来て本当に良かったな。繰り返し観て年が暮れて、2023

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#089 「ファーザー」

#089 「ファーザー」

いつか、遠くない未来に、自分が介護中心の生活になることを、20代前半からずっと意識してきた。その時が来たら、住んでいる場所と暮らしを捨てて、介助が必要な状態の年老いた母と2人きりで、地元での生活が始まるのを想像してきた。若い頃、そのイメージは明確に悲観だったと思う。
それを自分が受け入れて生きていける確信が持てず、圧倒的な恐怖だった。

幸いにも。と言うべきか決定的な状況は未だ訪れておらず、私もそ

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#088  「トップガン マーヴェリック」

#088 「トップガン マーヴェリック」

1986年のトップガンとの関係によって、この映画がどう見えるかは、かなり違う気がする。私は80年代生まれなので、TVの映画枠で散々観た世代。
当時小学生だった私は、なんだか分からないけれどオープニングの恰好良さにハマり、好き過ぎてVHSで何度も繰り返し観た。
ラブシーンあってなんか微妙。とか思いつつ、めっちゃ友達に見せたりした。家に人を集めてトップガン干渉する小学生ってヤバいけど。

滑走路とか、

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#087 パリ・オペラ座バレエ・シネマ 「プレイ」

#087 パリ・オペラ座バレエ・シネマ 「プレイ」

コンテンポラリーダンスが好き。
「分からなさ」を浴びることでしか到達出来ない、取り出す前の純粋な思考の様なものがある様に思う。映画や演劇でも、そういう瞬間が訪れることがある。

本作は、2017年12月にパリ・オペラ座で上演された演目を映画館で観られる。というなんとも贅沢なプログラム。
ナショナル・シアター・ライブのバレエ版みたいな感じです。
上映館数も回数も凄く限られているのだけれど、本当に観に

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#086 「ダーク・ウォーターズ」

#086 「ダーク・ウォーターズ」

仕事のクライアントに映画好きな女性が居て、現場終わりの帰り際に「あれ観ました?」とか、「これ良かったですよ」とか話すことがあって楽しい。
私は「スポットライト #072 」が本当に大好きで、何回観たか分からない殿堂入り作品になっていて、そのことを覚えていてくれ、勧めてくれた。
お陰で久しぶりに劇場で映画を観ることが出来た。

マーク・ラファロ作品はとにかく実直で骨太。そこか最高に格好良いんだけど。け

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#085 「ノマドランド」

#085 「ノマドランド」

人生は滑らかに繋がって明確な区切りなんてそんなに無いのだけれど、時間は一定の速度で進むし、人は日毎に老いる。
この映画を見ている時に、私の人生のある時期は終わったんだな。と、はっきりと認めた瞬間があった。
最近、この感じは終わりで良いんじゃないかなと思うことが多くて、でも何が上手くいかないわけでもないし、昨日と今日の違いも特になくて良くわからない侭にぼんやり放置していた。
既に終わったのだ。という

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#084 「メランコリック」

#084 「メランコリック」

銭湯が好き。少なくとも月に5回くらいは行く。
お風呂が大きくて、熱くて、素っ裸で談笑しているおばちゃんとかの雰囲気も好きだし、風呂上がりに帰る夜道も、そのまま布団に滑り込んで眠れる感じも。
裸の人を見ていると、人間て色々な形をしているんだなーと思う。

でだ。そういう私の銭湯への気持ちは全く関係無く、舞台としての銭湯って凄く良いんじゃないか。と気付いた。
めちゃくちゃ身近で日常のものでもあるにも関

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#083 「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」

#083 「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」

とりあえず観てきたばっかりで何も考えずにPC開いているから、この文章は碌なことにならないんだけど、最高だった。とだけ言いたい。
スパイ映画について、どうせ私はまともで居られないのだからこのまま書くけど、最高だった(2回目)。

オープニングが何分くらいあったのかさっぱり分からないけれど、オープニング明けに、本当に心から「良い映画だったな。」と思ったし、オープニングクレジットが終わった時点で2時間観

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#082 「スリー・ビルボード」

#082 「スリー・ビルボード」

匿名の誰かに優しくしてもらった記憶って凄く大事で、それは世界が良いところであることの証明になる。任意の点Pという考え方はいつも頭のどこかにある。
世界の全てを見渡すことは出来ないから、自分の視界で判断していってしまうんだけど、選んだり選ばされたりした環境自体もランダムだから、本当は救いが無い。

世の中には本当に色々な境遇があって、多かれ少なかれ、世界を恨むような気持ちで生きることもある。そういう

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#081 「ヤクザと家族 The Family」

#081 「ヤクザと家族 The Family」

こんな風に作品の世界にどっぷり浸かるみたいなことになったのは久しぶりで、Netflixで配信される様になってから何度観たか分からない。

一番最初に興味を持ったのは、millennium paradeのMVを観た時。
ヤクザ映画なのは知っていたけれど、映像がべらぼうに格好良かった。
その中に水面を船が渡るシーンがあるんだけど、Youtubeのコメント欄に「高瀬舟ですね」っていう秀逸なコメントがあっ

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