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#081 「ヤクザと家族 The Family」

こんな風に作品の世界にどっぷり浸かるみたいなことになったのは久しぶりで、Netflixで配信される様になってから何度観たか分からない。

一番最初に興味を持ったのは、millennium paradeのMVを観た時。
ヤクザ映画なのは知っていたけれど、映像がべらぼうに格好良かった。
その中に水面を船が渡るシーンがあるんだけど、Youtubeのコメント欄に「高瀬舟ですね」っていう秀逸なコメントがあって、私は突然ここで撃ち抜かれた訳です。
で、何故か映画を観に行かず、すぐに近所の書店に行って、岩波文庫の高瀬舟を買って読んだ。物凄く削り込まれた美しい言葉で情景を描く。鴎外って凄い(なんの話)。
しばらくの間、音楽と映像と高瀬舟の世界観が私の中で抽象的に混ざった状態のまま過ごした。とても不思議な認識の仕方で、その後実際に映画を観た時に、それがそこにあった。と思った。

映画本編は本当に素晴らしくて、好きなシーンだらけで、もう何も言いたくないけれど、とりあえず、盃のシーンからタイトルが出るまでのヤクザ映画フォーマットと質感。監修に入られている沖田臥竜氏の存在感。カメラワークとクレジットのフォント・サイズ、入り方が最高。このシーンがとにかく格好いい。
ヤクザになった瞬間の目が、直前までの親父を見る目と全然違って、凄かった。役者って本当に凄い。
ヤクザだから、眉一つ動かさないみたいな雰囲気なんだけれど、なんかちょっとした気まずさとか、あー、そっか。。。とか、なんか面白かったな。みたいな心情が、僅かに顔に出る。の、演出・演技・映像表現が、めちゃくちゃ良かった。
とにかく、こういう密度で作品作りをしている世界があること自体に感動する。

人は本当に哀しいし、取り戻せないものは沢山ある。私は、別にもう何か欲しい訳じゃないし、本当は誰かが何かを取り戻すのを手伝いたいのかも。とか思った。誰かだけが勝ったり負けたりしない世界が良いよ。