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『あのこたちは、どこに』

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#連載小説

『あのこたちは、どこに』最終話

『あのこたちは、どこに』最終話

 カフェの入り口の扉から入って来て、その男性だとすぐに分かった。
 白いシャツに黒のスラックのズボンに黒い革靴の姿で現れた男性は、細身で長身、頬が少し痩けているせいか目の輪郭がはっきりしていて鼻筋も通っている。黒髪は、少し長めの七三分けで整えられていた。歳は27歳とすでに訊いている。
 その男性は、藤田風海を見つけると、軽く会釈をして風海のテーブル席に近付いて来た。
 お互い挨拶を済ませると、風海

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『あのこたちは、どこに』(小説) 16

『あのこたちは、どこに』(小説) 16

 ぼん、ぼん。
 生温かい空気。暗闇の空。
割れるように音が身体の奥まで鳴り響く。
 白い浴衣や紺のの浴衣、髪をくるっと巻いて髪留めをしている女性たちが、その音から離れて行く。小学生の子供が出店で買ったリンゴ飴を舐めながら母親と少し厳つい父親と一緒に歩いて帰るようだ。
 自転車で来た高校生の男子たちは、女子の話でもしているのだろうか両足を地面につけながら自転車をこいでいる。
 浴衣を着たカップルは

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『あのこたちは、どこに』   (小説)15

『あのこたちは、どこに』   (小説)15

 店を出ると、夜の街は少し肌寒かった。大学が近いせいもあって、学生のグループが変に酔って少しふざけて声を荒げている。それを横目にサラリーマンたちが通り過ぎ、駅の改札口の方へと歩いている。
 藤田風海は、腕時計を見ると、8時を過ぎたところだった。まだ飲みたらない思いで清水に、
「もう少し飲みませんか?」と訊いてみた。
「そうですね」と、清水は全く酔った顔もせず、
「この辺で、よく行く店を知ってるんで

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『あのこたちは、どこに』*️⃣14(小説)

『あのこたちは、どこに』*️⃣14(小説)

 梅雨の中休みで、久しぶりの青空には白い雲が浮かんでいる。春の匂いがする優しい風は木々や草花を通り抜ける。
 藤田風海は、一級建築士の清水洋平にリノベーションを依頼していた。
 風海の事務所で、納期リスト確認しているとスマートホンが振動した。風海がスマートホンの画面を見ると清水からの電話だ。
「はい、藤田です。お世話になっております」
「こちらこそ、お世話になっております。間取りの最終確認をお願い

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『あのこたちは、どこに』*️⃣13

『あのこたちは、どこに』*️⃣13

 新緑の葉が風で揺れている。優しい春の陽が新緑の葉に反射して眩ゆいくらいだ。鳥たちは、花や虫など食べれるものが、この季節になると多くあって、さえずる声もよく響く。
 藤田風海は、一緒に仕事をしている勝間から、近くの空き家を買って、住居兼事務所兼貸しスペース兼賃貸部屋にリノベーションしてはどうかという案に賛成して、色々調べてある一級建築士にお願いすることにした。
 連絡すると、

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『あのこたちは、どこに』*️⃣12(小説)

『あのこたちは、どこに』*️⃣12(小説)

 イチョウの葉が黄色く色付き、道路脇の楓の枯葉が時折り風で飛ばされては、車が通りすぎてコロコロと舞っている。
 藤田風海のアクセサリーは、「ファンリー」というブランドを立ち上げてsnsで紹介したり、デパートで展示してもらえたこともあって、右肩上がりに向かっている。

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『あのこたちは、どこに』11(小説)

『あのこたちは、どこに』11(小説)

 澄んだ、どこまでも青い空の下に雲を思わせるほどの真っ白いサツキが、葉の間からところ狭しと咲いている。
 藤田風海は、マンションの2LDKの一室を借りて、「水仙」という名の団体から長身の高校卒業したばかりの女性の島川さんと無口な影の薄い大工だった花吉さんがここで働いてくれている。二人ともやや仕事の進み具合が遅いのには、風海も少し困っている。丁寧にはやってくれているので、風海は二人に対して「もっと早

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『あのこたちは、どこに』🔟

『あのこたちは、どこに』🔟

 「前進しないものは 後退していく」ドイツの詩人ゲーテの言葉だ。
 藤田風海は、SNSで手先が器用な人、営業のできる人、デザイナー、企画事業関係の人に呼びかけた。が、一向にメールもダイレクトメールもなかった。
 相変わらず手作りアクセサリーの教室は続けている。教室だけでは、生活していくにはかなり厳しい。そんな時、風海のもとにあるメールが届いた。ある団体が、単純な仕事であれば手伝わせてほしいというこ

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