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『あのこたちは、どこに』*️⃣14(小説)

 梅雨の中休みで、久しぶりの青空には白い雲が浮かんでいる。春の匂いがする優しい風は木々や草花を通り抜ける。
 藤田風海は、一級建築士の清水洋平にリノベーションを依頼していた。
 風海の事務所で、納期リスト確認しているとスマートホンが振動した。風海がスマートホンの画面を見ると清水からの電話だ。
「はい、藤田です。お世話になっております」
「こちらこそ、お世話になっております。間取りの最終確認をお願いしたいのですが、お会いできませんか」
「明日、仕事が終わってからになりますが、いいですか?」と風海が訊くと、
「大丈夫です。それなら食事しながらはどうでしょう?」
「いいですね」
「なら、調べてからメッセージで送りますね」と、清水が言った。
風海は返事をして、電話を切った。
 翌日の午前中には清水からメッセージが届いていた。
店のホームページを開いてみると、落ち着いた居酒屋で、個室になっている。車からだと三十分で行けそうだ。
 花吉さんが、これでよろしいでしょうかと、出来上がったアクセサリーを持って風海の前に現れた。それを風海が受けとりじっくり見てみる。納期の用紙に添えられた金具の数やパーツの数、デザインの形の確認。そんな時、
「時間なので、休憩とらせていただきます。花吉さん、島川さん、行きましょう」と、声のよく通る少し威圧のあるトーンで女性の名取が言った。
 風海は、どうぞという意味で軽く会釈をして名取という女性を見る。仕事に対しての自信なのか藤田さんより花吉さんから好まれているという自信なのか、堂々として見えた。

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