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【読書】コンドームを購入していた私へ『射精責任/ガブリエル・ブレア著』 

少し前に、SNSで話題になって、気になっていたこの本を図書館で発見することができたので、読んでみた。

たしか、私が見たSNSでは、「全男性に読んでほしい一冊」みたいなコメントがついていた記憶があるのだけれど、読み終わって、まさに、その通りだなと思った。と同時に、この著者が主張している28の提言を理解し、十分に踏まえた上で、セックスをする前に事前に相談をしてくれる男性がこの日本で存在するとするのなら、その人は数限られた、相当素敵な紳士だと思ってしまって、その提言が、あたりまえじゃない日本の現実になんだか悲しくなった。

本書を読みながら、著者の力強い主張に、いろいろな感情が溢れた。
上記に書いたような悲しみの感情とか、目からウロコの驚きの感情とか、変わらない理不尽な女性の立場への憤りの感情とか、、、、。けど、一番大きく感じたのは、恐怖の感情だったので、今日は私が本書を読みながら感じた、「怖い」と思ってしまった感情を忘れないように綴っておこうと思う。

避妊はコンドームだけじゃない

本書の提言をしっかりと理解するより先に、本を読みながら私が真っ先に思ったことは、「あれ、避妊方法って、コンドーム以外にもこんなにあるんだ。」ということである。
もちろん、ピルとか、アフターピルがあることくらいは私も知っていたし、むしろピルは飲んだことあるけど身体に合わなくて、アフターピルは、一度飲んだことあるけど、もう絶対に飲みたくない代物で(金銭的にも精神的にもえぐられる。)だから結局のところ、私にとって主要の避妊方法って、コンドームだけだった。

え、まって。

ピル以外にも女性の避妊方法ってあるんだ。
てか、男性にも避妊方法があるとか、聞いてない。
無知すぎるけれど、精管結紮術(パイプカット)についてもはじめて知ったし、それがパートナーが妊娠を希望をしたときに、復元可能だなんてこともはじめて知った。

無知すぎて、怖くなった。けど、意外とこういう私みたいな人って多いのではと思って、さらに怖くなった。
日本で育った私が学校の性教育で教わった避妊方法ってコンドームの存在だけだった。
存在だけで、使い方なんて、説明されてない。
それに、ピルとかアフターピルとかのことって、大人になってから友だちとかに聞いて知ったことだった。
女性一人の人生に、一生に、命に関わる大切なことなのに、知られていない。その日本の現実に改めて恐怖を覚えた。

コンドームをつけない男性って、結構あたりまえに存在する

「男性はコンドームが嫌いだというのは思い込みにすぎない」
アメリカ文化には大前提として、男性はコンドームなしのセックスを好むというイメージが蔓延しています。これに異論を唱える人はいないでしょう。
なぜそのようなことになるのでしょうか?なぜなら、私たちは(本のなかで、映画のなかで、ミームのなかで)コンドームなしのセックスのほうが、ありのセックスより気持ちがいいと教えられ続けているからです。
・・・
コンドームなしのセックスのほうが快感を得られると男性が考えているのだとしたら、女性のほうが「なにがなんでもコンドームを着用して!」と主張する場合か、または男性が彼女を説得できない場合にのみ、男性はコンドームを着用することになります。

「射精責任」より引用

この通説は、アメリカ文化だけじゃなくて、日本にも蔓延している話だと思う。だけど、自分自身に性の体験がなかった頃は、本当に着用しない男性がいるのだとしたら、最低だし、常識的にありえない。そう思っていた。

だって、普通に考えて「コンドームを着用するかしないか。」という選択が
男性にとっては、単に「快楽をより強く感じられるか、そうでないか。」の選択であったとしても、女性にとっては、「子どもを持つか持たないか。」というその後の人生を左右する大きな選択に関わってくることだから。

だからこそ、お互いに「子どもを産み育てる」という部分を共有した上でのセックスでない限りは、コンドームを着用することはあたりまえで、男女問わず、それを理解して性生活を営んでいると思っていたし、それに、まさか、女性の一生を左右する選択よりも、男性の一時の快楽が優先されるなんてことありえない。そう思っていたのだけれど、、、。

大人になるにつれて、性経験を積んでいく中で、全員の男性がそうであるとは言えないけれど、普通に女性側が「つけて。」と言わない限り、ほとんどの男性はコンドームを着用しようとしない。ということを目の当たりにした。
着用を促して、つけてくれるならまだましだと思う。
「今日、コンドーム持ってない。忘れてきた。」とか「今日安全日じゃないの?」とか「一日くらい大丈夫でしょ。」とか普通に何の悪気もなく言ってくるケースも多々あるので、本当に驚いてしまう。

そして、本当に拍子抜けしてしまうのは、彼らが着用しないという選択をしようとしているとき、頭の中は、快楽のことでいっぱいで、快楽という文字を引いてしまえば、もう何も残らないんじゃないかというくらいに、快楽のことしか考えていない。と勝手に私は解釈しているのだが、重要なのは、快楽のことしか考えていないという話ではなくって、先に述べたような着用するか否かの話が、女性の今後の人生を左右する大切な選択になりうるという事柄が、まったくもって彼らの頭の中から排除されているということである。

そして、悲しいことに、女性側は、自分のことなんて頭の中から排除されているにも関わらず、そのことに気づかない。普通にありえないと思っていたとしても、あまりにも自然に、あまりにも悪気なく、まるで着用しないことがあたりまえのことかのように、発言されると、流れに身をまかせたりしてしまうし、最悪のケースは、まだきちんと話し合ってもいないのに「今後について覚悟してくれているんだ。」と誤解したまま、流されてしまうことである。

それが現実。
それなりに多いケースの話だと思う。

そういうのって、改めて「怖い」と本を読みながら思ったのだけれど
一番「怖い」のは、もはや、そうやって、女性のことを何も考えずに男性がコンドームを着用しないという選択をしていることは、もはや普通のことだと思って、私を含め、みんながみんな問題として取り上げないことなのかもしれない。

コンドームを購入していた私へ

私には、一時期、自分自身でコンドームを購入して、セックスの可能性がある日はいつだってバッグに潜ませていたときがある。

もし、自分がその場に流されてしまって、望んでもいないのに、万が一妊娠をしてしまったときのことを考えたら怖かったから。

万が一が起きてしまったとき
結局全部を自分自身で考えなければならない
そう思ったとき
怖くてしかたがなかったから。

産むか産まないかも
仕事を休むか休まないかも
育てるか育てないかも
相手がそっぽを向いた瞬間、最悪のケース、全部私に降りかかる。
それが怖くて、怖くて

私はそれを、相手男性にゆだねてしまうことが恐ろしくて
自分自身を守るために、コンドームを購入していた。

一番協調したかったのは、妊娠中絶の99%が望まない妊娠が原因であり、その望まない妊娠のすべての原因が男性にあるということです。
これまで妊娠中絶に関わる議論は、すべて女性を中心として展開されてきました。
・・・
妊娠中絶を考えるとき、女性にだけ焦点を当てるのは時間の無駄です。
・・・
セックスをするから望まない妊娠をするのではありません。望まない妊娠は、男性が無責任に射精をした場合にのみ起きるのです。

「射精責任」より引用

「そうやって、全部が全部、女性側に降りかかっているのっておかしくない?」

そう力強く、提言してくれた彼女の言葉たちは、その当時の私を救ってくれたと心から思う。
もちろん、一番は、男性に読んでほしい一冊であるのかもしれないけれど、
私はぜひ、私と同じように自分の性生活に違和感を抱えながら悩んでいる経験のある女性たちも読むとすごく救われる一冊だと思ったので、男性にも女性にも、もっと読者が増えて、性に対するよい理解が深まっていくといいなと思った一冊。

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