マガジンのカバー画像

【短編小説】へんなともだち

12
眠れない夜に想い出したい私が出会ったへんなともだちのへんな話。きっと、クスッと笑ってほっこりする。どこまでが実話なのかは、読んでくれているあなたの想像次第のショートショート。
運営しているクリエイター

2024年7月の記事一覧

【短編小説】へんなともだち 〜単位がない亮さん〜

【短編小説】へんなともだち 〜単位がない亮さん〜

「今日1日ずっとバイト入っててさ、ごめん、会えないわ。」

梨花からそう返信がきた。

「明日レポート提出でさ、これ落としたらまじで単位やばいから、また今度連絡する。」

加奈からもそう返信がきた。

「そっか。急に連絡してごめんね。ありがとう。またね。」

そんなLINEの文面をコピペして貼り付けて返信する。あぁ、何人目だろう。みんな今日という今日に限って忙しい。新着通知をお知らせしてくれないL

もっとみる
【短編小説】へんなともだち 〜社会に出たくなかった藤井さん〜

【短編小説】へんなともだち 〜社会に出たくなかった藤井さん〜

大学3年生の冬、私は例にも漏れず、周りのみんなと同じように就職活動をはじめた。

茶色だった髪の毛を真っ黒に染めて、真っ黒なリクルートスーツを着て、テンプレの同じような自己紹介を繰り返し、思ってもいないような嘘の志望動機をつらつらと並べる毎日。

すぐに嫌になった。逃げ出したくなった。社会に出たくなくなった。そして思い出した。

「まだ、僕社会に出たくないんだよね。だからできる限り遅らせてるの。2

もっとみる
【短編小説】へんなともだち 〜チャラ男の渡辺くん〜

【短編小説】へんなともだち 〜チャラ男の渡辺くん〜

残業終わりの仕事の帰り道、今日はやけに明るい気がして空を見上げると、そこには煌々と暗闇を照らす満月が君臨していた。

満月をみて頭に浮かぶのは、お団子とススキと、それからマックの月見バーガーと、そして、チャラ男の渡辺くんだ。

渡辺くんは、新卒で入社した会社の同期で、私の斜め前の席に座っていた。
ある日彼は、煌々と蛍光灯が光るオフィスの中から窓の外に浮かんでいる満月を指さして私に言った。

「はる

もっとみる