「竜とそばかすの姫」感想(ほぼネタバレなし)
今日は、映画「竜とそばかすの姫」の感想を書いていこうと思う。
・映像、音質の素晴らしさ
・リアルの世界とバーチャルの世界の境界とは
・本当の自分らしさが出せる場所とは
・本当の正義とは
・人を避けるのは傷つきたくないから
以上の5点について感じたことを率直に書いていきたい。なお、なるべくネタバレしないように留意するが少し内容に触れることになると思う。これを読んで「やっぱり映画館で観てみたい」と思ってもらえたらとても嬉しい。前述しておくと、この映画は映画館で観ることを心からオススメする。ただし、少し長めの映画なので、事前にお手洗いに行くことを忘れずに。映画の後半に席を立つと、せっかくのシーンを逃してしまうので。
ちなみに私は始まる直前に席を立ったので、最初のわくわくするシーンを少し見逃した(^^)
さて、映画館まで出向く、1000円超のお金を払う。そんな労力を払ってまで観たいものはどんな映画だろうか。私が映画館で観るか、DVDになるまで我慢するかを決めるのに用いる基準は「映像美」と「音楽」、「物語が壮大であるか」の3つである。どんな映画も映画館で観た方が迫力はあるだろうが、そんなに足繁く通えないのでこの基準で決めている。お金と時間に余裕がある方は是非映画館にたくさん足を運んでいただきたい(^^)
さあ、さっそく内容に入ろう。
・音質の良さ
さて、今回観た「竜とそばかすの姫」だが映像の美しさ、音楽の素晴らしさには目を見張るものがあった。実際、TVでは何度もCMを視聴していたし、その時点で心が沸き立つような感動を覚え、その度に映画館で観たいという気持ちが喚起されてはいた。だが、それとは比べものにならないくらいの衝撃を映画館では味わうことができた。壁際の席だったということも1つ要因かもしれないが、音が壁から溢れ出し、鼓膜を震わせる度に「Belle」の息づかいや歌声の響きに感嘆させられた。突き抜けるような声の透明感は映画館さながらであり、そこでようやく「Belle」の歌声は生かされ、響きが引き出され、完成しているように思う。
聴覚からの刺激だけでなく、歌声と連動してめまぐるしく変化していく「Belle」の表情には釘付けにされた。眼力とでもいうべきだろうか。大きな瞳には間違いなく感情が宿っていた。また、Uの世界における緻密な表現は、圧倒的な画力と信念によって成り立っているように思わされた。美しさの根源に立ち返り、そこから表現としての美がいくつも編み出され、Uの世界に結集していたように思われた。
映画館にいながら映画の中に意識だけもっていかれたかのような錯覚を受けてしまい、映画が終わった後もしばらく放心状態が続き、頭の中にはあの歌声が流れていた。
・リアルの世界とバーチャルの世界の境界について
リアルとバーチャル、2つはかつて別々のものであった。そして以前までバーチャルの世界は、リアルを補ったり、リアルでのつまらなさを解消する程度の役割しか持っていなかったはずだ。しかし、技術革新によって、バーチャルとリアルの境界はどんどん曖昧な物に変化していく。そのうち、リアルとバーチャルが並列するような未来が起きることは決して夢物語ではないだろう。リアルでの生きづらさがバーチャルで解消できる。バーチャルでこそ自分らしく生きられる。バーチャルはもう、リアルの副産物やオマケではない。そんな世界を細田守氏は描こうとしているように思われた。
・本当の自分らしさが出せる場所とは
主人公は最初、現実を充実させられず過去のトラウマに縛られた女子高校生として描かれる。友人にも少し卑屈なところが見受けられ、2人は明らかに日常に対し辟易しているような向きがあった。だからこそ彼女らは、バーチャルな世界に魅力を感じ、自らが新しい自分として輝ける居場所に選んだのであろう。ネットの中では、自分の身体的特徴が不可視化されており、だからこそ理想の自分として生きることが可能になる。これは、身体が生み出すある意味でマイナスな点(周囲に視覚的情報を与えすぎる、1人1人身体的特徴は個人差があり、時にそれは自分にとってハンディキャップにもなりうる)をバーチャルな世界なら解消できるということを示唆しているように思われた。けれど、細田氏がそばかすだけは「すず」のAsに反映させた理由には疑問が残った。
Uの世界での身体動作は現実世界の行動を反映した物になる。それは、反対に言えば、バーチャルな世界の自分らしさが現実の自分にも少しずつ影響を与えていくということにもなるのだと思う。現に、Uの世界で歌い始めた主人公は現実世界での明るさもとり戻していったように感じた。見た目、声は異なるが2つの世界に置かれた本質は互いに影響を与え合っていくという点は興味深かった。
・本当の正義とは
この物語では、「人びとが掲げる正義はそれぞれ異なる」こと、「あからさまな正義が正義とは限らないということ」、「正義は自分がもっている基準や情報によって左右される」ことなどを訴えかけているように思われた。ネットの世界においても私刑やネットリンチなどが度々行われるが、そこには各々自分が信じる信念のようなものが核にあるのかも知れない。しかし、その正義は果たして本当の正義なのかという視点をネットに携わる誰もがもつべき時代になっているように感じた。つまり、正義と悪で人間は単純に分けられず、多くの人間はその間を行ったり来たりしながら生きているはずで、そこを理解するにはやはり自分を内省することが必要だと思うのだ。
・人を避けるのは傷つきたくないから
主人公の「すず」は、父親や同級生に正直な自分の気持ちを伝えることができなかった。どうせ伝わらないと静観したようなところもあり、自分の気持ちの核心には触れず、一番表面的な言葉で他者との交流をやり過ごす。また、自己評価を下げきることによって、恋愛もハナから諦めるような態度であった。これは、おそらく「近づきすぎて傷つくのが怖いから」「相手を必要とするようになった時に離れられるのが怖いから」という感情が根底にあるからなのではないかと思った。
まとめ
以上、映画「竜とそばかすの姫」の感想を書き連ねたが、ここまで読んでくれた人に感謝の気持ちを伝えたい。ありがとう。私は1度でストーリーを掴みきれなかったため、夏休みのうちにもう一度観たいと思っている。また、なによりこの素晴らしい歌声をみなさんにも映画館で聴いて欲しいと強く思う。こんなご時世なので大変なことも多いけれど、自分と向き合う時間を是非設けて欲しい。どこか心が浄化される、そんな2時間になるはずだ。さあ劇場へ!!(^-^)
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