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言の葉の詩集🌿
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少年

少年

少年は波打ち際で
星屑を集めて
詩を書いていました

青い星で哀しい詩を
赤い星で情熱的な詩を

話しかけると
消えしまうのでは無いかと思うほど
聡明で涼しい目をした

貝殻と星屑はカラカラと紛れ
詩が波に拐われてしまっても

少年は
そこにいて

いつまでも
そこにいて

夏の夢

夏の夢

長かった夏の休暇が終わり
ほっとしている
日常が戻ってきた

夏は囁いた
「現実は夢だよ」

だから間違いなく
ほっとしている

ほんとうの孤独のはじまり
寂しくはない
だってこの世には
私しかいないのだ

ひりひりした光も
幻だったというわけだ

誰に気兼ねなく
私は私をみつめる 

夢は夢
現実も夢

風のない風景

風のない風景

静寂に

落下する一雫

落ちてきた記憶はない

逃げ水と知りながら

喉を掻き追う民

清貧の言葉は枯れ果て

空、見下ろせば

沸く雲ひたすらに

記憶の彼方よ

たおやかな水

たおやかな水

からからに
頑なに
なってゆくのは
皮膚ではなくて

潤いを失っていくのは
寧ろ 
心のほうだ

老いていくには水がいる
たっぷりと透き通った
たおやかな水が

いつもの一日

いつもの一日

空が白んだら
鳥が鳴いたら
トーストと珈琲

白い月を仰ぎ
花に水をやり
庭を掃き

太陽に月が消され
ペイジをめくりめくり

風の匂いが変わるころ
夕焼け窓に背を向け
ひっそりと月が佇む

星が存在を
輝かせるころ

瞼は深く閉じて

観覧車

観覧車

観覧車に乗る
窓の下に
小さくなっていく私

ゆっくり風に揺れ
過去がキラキラ
堕ちていく

いつも知らん顔をして
通り過ぎていく
喧騒たちは
ここにはいない

月にとどきそうな予感
優しい夜に

どうか切ない
サウンドトラックを聞かせて

明日も風は強いらしい

明日も風は強いらしい

商店街の角で
先ほどから
同じ会話を
何度も何度も繰り返している
二人の老婦人たち

自転車のハンドルを
握ったまんまの
立ち話し

アーケードの中を
枯れ葉が駆け抜けていく

夕日が
健康な老化を照らしていた

明日も風は強いらしい

夜に、それは冬の雨

夜に、それは冬の雨

お気に入りは
ドリトス

ワインは白
二杯でやめておく

Netflixで
ドラマを眺めながら

次にヨーグルト
手作りの林檎ジャムをのせて

〆はアレルギーの薬を二錠
 
外は冬の雨
瞼に聞こえる 

平凡な私の
平凡な一日が終わる

石蹴り

石蹴り

蹴った石について行く
思ったようには
進まない

自分で蹴った石なのに

足には足の思いが
あるのかないのか

石には石の思いが

あるのか
ないのか

どこをどう歩くかは
石と足しだい

ついてけばいつか
いつか辿りつくだろか

思い描いていた未来
はたまた見たこともない景色

だけど石
池に、ぽちゃん

攪拌

攪拌

静寂が地球を
攪拌させる
上澄みでは
雲が浮遊する

地上に沈殿している人々は
溶け合いたくてしかたがないのに
近づき過ぎて火傷して
離れ過ぎて凍えて
互いの熱量を測れずに

それでもあきらめきれなくて
与えてはすり減って
奪っては太り過ぎ
ついには燃え尽きて
上昇し

ようやく
上澄みに
溶ける

白髪

白髪

八人目の孫が産まれて
充分に、ばぁばになった
だから白髪を染めるのをやめた
おばあちゃんになる為に

孫たちは私をおばあちゃんとは呼ばない
ばぁばと呼ぶ

私には母たちがいて
そちらが
おばあちゃん
もしくは
大きいおばあちゃんだ

彼女たちは全てに綺麗に白髪で
素敵なおばあちゃん
もしくは
素敵な大きいおばあちゃん

私はグレイのばぁばから始めることにした

やがては尊くまっとうな白髪に
できう

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700万個

700万個

羊水に浮かぶ赤ちゃんの
お腹には700万個の卵母細胞

女の子なら

産まれでる前に
500万個は消滅して
残りの200万個を持って生まれる
そして減り続け20万個から30万個に

そんなお年頃には

飛びだした
イッコの卵子と彼氏のイッピキの精子が
受精卵になり羊水に浮かぶ

受精卵のお腹には
また700万個の卵母細胞
女の子なら

お腹の中の赤ちゃんと過ごしていたころ
赤ちゃんのお腹に世代の卵

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雨の日

雨の日

押しよせる言葉の波に
うんざりしたら

目をとじて

聞いて

一雫一雫
雨の話し声を

君も
黙って話しかけて
雨に

ささくれや
いがいがを

無機質だからこそ
雨の命に
言葉は口をつぐむ

だからこそ信じられる

雨の日は
雨に身を寄せて

壁

人間、この空虚な壁から突出した生きもの

ひとつ出来た
ふたつ出来た

真空の階段を少しづつ昇り
その肌のぬくもりもいつか忘れてしまうのに
笑顔を汲んで
いつも満たされたくて踠いている奥のおく

こんなにも嬉しかったことや
こんなにも悲しかったことが

忘れるという仕業の前に
もろもろと崩れて落ちて

フロントガラスの向こうに
積み重ねてきた日常を探すが
何処にも見あたらない

すべて壁が持ち去っ

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