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おすすめ本紹介シリーズ

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約週1回ほどのペースで投稿しているおすすめ本紹介をまとめたものです。どれも他の人に読んでほしいお気に入りの作品なので、少しでも興味を持ってくれれば幸いです。
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記事一覧

汗と"笑い"の青春劇 ~新田 漣『君と笑顔が見たいだけ』を読んで~

 青春をジャンルに掲げる作品の中には「何か」に熱中する少年少女が描かれるケースが少なくない。王道で行けばスポーツの類だったり。だがこの「何か」には様々なものが当てはまる可能性がある。  そんな中で私の目を惹いたのが『君と笑顔が見たいだけ』だ。実はこの作品、主人公達が漫才コンビを結成する話だという。漫才をはじめ、お笑い系の番組や大会の規模と注目度はさることながら、実は私も一時期お笑い系のテレビ番組をよく見てた時期があった。そういう事もあってこの作品を知った時、珍しさと同時に懐

最高の展開を30ページに刻め ~秋傘 水稀『30ページでループする。そして君を死の運命から救う。』を読んで~

 世の中には色んな本が出てる。その分タイトルのアプローチ方法も多数存在する。あらすじのようなタイトルでどのような内容なのかを瞬時に理解させることもあれば、逆に意味深にしてどういった物語なのか興味を湧かせることも珍しくない。両極端であれど無数の中から読ませようとしていることには変わりはないだろう。  そんな中で個人的に棚を眺めて矢鱈印象に残ったライトノベルがあった。それこそが今回紹介する『30ページでループする。そして君を死の運命から救う。』である。先頭に算用数字が並ぶのも目

これもまた1つの愛⁈ ~望 公太『小鳥遊ちゃんは打ち切り漫画を愛しすぎている』を読んで~

 普段ライトノベルをメインに読書をしている方って漫画はどの程度読んでいるのだろうか? ふと頭に浮かんでしまった。私は漫画も時々読む。ちなみに、漫画の話をすると「お前漫画読むのか⁈」と驚かれたことがある。マジで私の事をなんだと思っているのだろうか。ラノベに比べるとミーハー気味だが。  今さっきもX(旧Twitter)で"打ち切り"がおすすめトレンド入りしていてかなり焦ってしまった。某誌には私が興味を持っている作品もいくつかあるので。結局何故打ち切りがトレンド入りしていたのかハ

濃縮アオハルを撃ち込め! ~逢縁 奇演『こちら、終末停滞委員会。』を読んで~

 個人的な話になるが、作品そのものを好きになる理由として好みキャラクターの有無よりも世界観や雰囲気も大きな要因なような気がする。実は私は「(作品名)知ってるの? 推し誰?」とノンストップで聞かれてもキャラを1人だけ断言できることはかなり稀だったりする。大体話が進行するにつれて好きなキャラが増えていくタイプなので。はいそこ浮気性とか言わないで。好みの作品を振り返ってみてもやっぱりその理由には作品の世界観やコンセプトが真っ先に挙がってきてしまう。  世界観の詰め具合を楽しみにし

ショックなエロスとカッコよさの浪漫 ~読図 健人『ゴエティア・ショック』を読んで~

 ライトノベルは年月・巻数共に積み重なったシリーズが多く、またそれらの認知度も高い傾向にある。だからこそ私は10巻以上のナンバリングがある本を見るとそれがどんな話であれ敬意を表している。  かといって1巻完結の物語が蔑ろにしているつもりもない。1冊の中に込められた世界観や熱意はページを進めるごとに深みが増していくし、どの作品も熱量の密度が凄い。ここについては語ると凄く長くなってしまうためここまでにしておこう。  これらを総合して考えると、ライトノベルは1冊で纏まるか人気が

カメラの中に情熱を! ~三船 いずれ『青を欺く』を読んで~

 私は普段映画館に足繫く通う人間ではない。最後に行ったのも数年以上前の話だ。それでも近年の映画の盛り上がりの熱気は頻繁に伝わってくる。興行収入の数値がとんでもないことになってるよ。それに加えて、映画というのは決して映画館で見るとは限らないというのもまた事実。DVD・ブルーレイや地上波での放送は昔からなじみ深く、最近では配信サイトでも見れるという。映画って意外と柔軟性が高いのではないか? なんて思ってしまう。  今回紹介する『青を欺く』も、映画が中心となる物語である。しかし、

これが最後の夏休み ~野宮 有『どうせ、この夏は終わる』を読んで~

 8月に入り子供たちはすっかりと夏休み。ラジオ体操や夏祭りといった夏特有のイベントもそろそろ顔を出してきた。夏休みは創作作品においても重要なイベントであろう。長い間授業の無い自由な時間、夏祭りでのデート、次元は違えど楽しみがやまないのは確かだ。  中には夏を通過点にせずにこの季節の中で完結してしまう物語もある。今回紹介する『どうせ、この夏は終わる』もタイトルの通り、夏の間のお話となっている。実はこの作品、刊行は2023年の12月(捕捉:書き下ろしではなく電撃ノベコミ+の掲載

どこまでも突き進むは悪の道 ~牧瀬 竜久『悪ノ黙示録』を読んで~

 異世界転生がジャンルとして浸透して幾年か。今では異世界ファンタジーも巨大ジャンルとなって細分化もされてきた。変化球タイプの作品も少なくない。一方で、私個人としては異世界転生ものは本よりもアニメで知っているイメージが強い。そんなレベルで異世界転生を読んでなかったりする。  先日X(旧Twitter)にてオススメいただいた『悪ノ黙示録』もジャンルでいえば異世界転生になる。しかし王道のものかといわれると少し違うような気もしなくもない。特殊なスタートから着実に積み重ねていく独自性

無限の可能性が今、1つに⁈ ~眞田 天佑『多元宇宙的青春の破れ、唯一の君がいる扉』を読んで~

 もしもここでこの選択をしていたら……という想像をしたことは誰かしらある事だろう。それは決して3次元に住む我々だけの特権ではない。門が足りの中には、IFをテーマにした作品がある事だろう。  そうしたジャンルの1つ、並行世界というのを新たな観点で書かれた作品が今回紹介する『多元宇宙的青春の破れ、唯一の君がいる扉』となる。実はこの作品、発売直後に買うかどうか悩んで結局買わなかったのだが、SNSのフォロワーの方にオススメいただいき、つい最近購入したのだ。マジで発売日に買っておけば

いらっしゃいませ、殺し屋の街に ~木崎 ちあき『博多豚骨ラーメンズ』を読んで~

 本を読む人ならばライトノベルに限らず人より、他の作品よりも思い入れが強いシリーズの1つや2つある事だろう。『博多豚骨ラーメンズ』は私にとってその分類に入る。まだライトノベルとライト文芸の違いも分かっていなかった頃、ライトノベルを読んでみたいと思って面白そうな作品を調べて回っていた時期があった。その時期にこの作品が丁度アニメ化でプッシュされていた。それがきっかけで最初に読み始めたシリーズの1つとなった。  ゆっくりと時間を掛けて既刊を揃え、いつしか最新刊を待つようになり、そ

ここが愛の最前線! ~土岐丘 しゅろ『推しの敵になってので』を読んで~

 突然ですが、皆さん推し活ってしてますか⁈ ライトノベル界隈だと自分or周囲の誰かしらは好きな作品或いはキャラのグッズ買い集めてる人ってそれなりにいらっしゃるイメージがある。X(旧Twitter)なんかを見てるとぬいぐるみとお出かけしたり可愛い写真がまわってきて癒されたりする。中にはぬいぐるみを自作する猛者なんて方もいらっしゃるとか。  え、私? グッズ系はお財布事情&収納スペースの問題であまり触れてない感じですね。強いて言うなら最近は特定の歴史上の方にまつわる書籍をフィク

いざ、壮大な歴史の先へ ~不破 有紀『はじめてのゾンビ生活』を読んで~

 最近、ある人と喋っていた時に出てきた「SNSやショート動画の影響で長いコンテンツに対する集中力が無くなってきている」という話題が深々と胸に刺さった。私も最近は種類によっては10分ほどの動画を倍速にしたり、SNSを横目にテレビ番組を見てたり。ぶっちゃけテレビ付けてる意味なくない? と思わなくもないのでこの癖はできる限り辞めるようにしないとと常々思っております。  それでも読書は、たとえ長編でもまだ集中して読めている方なのかなとふと考えた。読書はどうしても"ながら"ができない

愛する心は壁を越えて ~柳之助『バケモノのきみに告ぐ、』を読んで~

 最近の作品のタイトルには最後に句点「。」が付いていることが多い。普段からSNSでの読了報告や今のような本紹介といったものを書いている身からするとミスをなくすためにもかなり神経を張って確認している。そういうことを思うと『バケモノのきみに告ぐ、』のように最後が読点「、」で終わっていることはかなり珍しく感じる。中途半端のような印象も持つがその直前の「告ぐ」という動詞や追想録という特徴を踏まえるとこれから証言をするといった解釈にも取れてしまう。そういう意味では「。」よりも「、」の方

気が付けますか? 些細な違和感 ~雨穴『変な家』(文庫版)を読んで~

 『変な家』という本が人気らしい、という噂はかなり前から知っていた。だが、読もうとしたのはつい最近の事だった。理由は2つ。丁度文庫版が出版されたことと、知り合いに強く勧められたからだった。いつもの知り合いにしては強く勧めてくるのが珍しく既に組んでいた本を読む順番を崩しての読書だった。  確かに勧める人も出てくるのも納得の面白さだった。それは物語としての筋立ての面白さは勿論、恐らくフィクションであるにも関わらず現実にあったかもしれないというリアリティーを突き詰めた表現が読みや