濃縮アオハルを撃ち込め! ~逢縁 奇演『こちら、終末停滞委員会。』を読んで~
個人的な話になるが、作品そのものを好きになる理由として好みキャラクターの有無よりも世界観や雰囲気も大きな要因なような気がする。実は私は「(作品名)知ってるの? 推し誰?」とノンストップで聞かれてもキャラを1人だけ断言できることはかなり稀だったりする。大体話が進行するにつれて好きなキャラが増えていくタイプなので。はいそこ浮気性とか言わないで。好みの作品を振り返ってみてもやっぱりその理由には作品の世界観やコンセプトが真っ先に挙がってきてしまう。
世界観の詰め具合を楽しみにしている私に情報量の権化のようなライトノベルの情報が耳に入った。その名も『こちら、終末停滞委員会。』。最初は予定に無かったが公式のPRを見て急遽購入したこの作品。とにかく情報量が凄い、そして面白い。1巻時点でなんかもう魅力の洪水或いは詰め合わせのような作品だった。今回は『こちまつ』について個人的に整理をしながら紹介していきたい。
あらすじ
"終末"と呼ばれる事象の数々。それらは成長すると最後には宇宙を滅ぼしてしまうらしい。そして世界の裏ではそんな終末と闘う少年少女達、或いは終末を長引かせる組織『終末停滞委員会』が存在していた。
心を読む終末『囁き屋』を持つ少年言万心葉はその力故マフィアに拉致そして監禁され続け、今や彼方にある青春に憧れるようになっていた。そんな中彼は終末に纏わる事件に巻き込まれ裏の世界と接触する。そこで出会ったのはLunaという名前のおねーさんと委員会『蒼の学園』のメンバー達。その後心葉は故あって彼女たちと共に行動することに⁈
詳細と注目ポイント
知れば知るほど底なし沼⁈
まず初めに一言、今回もあらすじは大分端折り気味です。序盤から結構色々詰め込まれ、展開も目まぐるしいものとなっているので読んでからのお楽しみにしていただきたい。私が読んだ時もここだけでもかなり楽しめたので。ということで今回は本当に骨子の部分のみをピックアップすることにした。
あらすじを纏めていてふと気が付いたのだが、コンセプト自体はとてもシンプルだ。その上で更に細かく設定を詰めていってる。この作品では登場する終末などはそれと同時に数行の解説パートが入る。分類などちょっと図鑑風になっていて、世界観の一端を知ることができて楽しい。簡潔で進行の邪魔にならないし、会話の間から得る情報とは違った味わいもある。それとは別に1ページ丸々解説パートがあったりと世界観の深掘りに事足りない。大まかなルールはシンプルな分、細かい所は何でもありな世界観とそれを支える説明のお陰で、一層のめり込んでしまう。
個性派アクション×青春
そんな設定を読んでいくと終末にも特殊な人間から謎の生物・機械、未来的なものもあればノスタルジックなものもあったりとかなり幅があって最早世界終わってない方が凄いのでは? と個人的に思わなくもない。というか委員会側も常日頃頑張ってますしね。という訳でメインとなる学園側にもスポット当てていきます。
メインとしては終末を倒すことが多くなるけど、組織のベースに"学園"とつくだけあって研究や勉強などの描写も多くある。時には他の学園の生徒と交流したり、バトルシーンも豊富なため、共闘したり対決したりと盛りだくさん。
そ・し・て、この手のアクションのお決まり(かもしれない)の1人1人が個別に持つオンリーワンの能力! この作品では特殊な能力を持つ武器という形になっていて、所属する学園ごとに大枠となる形が違う。例えばあらすじにて登場した『蒼の学園』の生徒達は銃がベースとなっている。能力は勿論、固有の武器というだけでも内に秘めた少年心が燻られる。しかし、本作では能力や見た目だけに留まらず、名前のセンスも突き抜けているので、是非そちらにもご注目を。毎回新しいのが出てくるたびにネーミングセンスに驚かされてしまう。
キャラの個性もつよつよです!
世界観やアクションの設定が詰め込まれてることは上記の通りなのだが、この作品の魅力はそれだけにはとどまらない。物語を動かすキャラクター達の個性にもその詰め込み具合が発揮されている。
心葉という主人公がいて、彼を中心に話が進む。彼の能力や会話で各キャラの魅力が引き出されるのは当然として、別のキャラの視点になるパートも多い。本作は一人称視点で話が進むため、内と外からキャラクターの魅力が引き出されているのかもしれない。
さいごに
各キャラクターの内面もだし、アクションシーンでそれぞれが全力を出して相手に挑む姿もカッコよく、設定の詰め具合以外でもとにかく魅力的な作品である。2巻目では大きな動きが見え始めたりともっと先を見据えた描写や謎もありより今後が楽しみだ。本編もまだまだ続いていきそうだし、世界観的にもメディアミックスが楽しみな作品だ。新シリーズではあるが少ない巻数でも存分に楽しめるので、機会があれば是非とも手に取っていただきたい。
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