【詩】星
血を出すように怒るしかないのです、世界がひとつだと。何も定義したくないのに、何も裁きたくないのに、怒りはひとりでに湧いてきて、けれどもその怒りはどこにも昇華されないから、だから血は赤色じゃないみたいで、それで、血は出ているはずなのに血じゃないみたいで、誰かが、すべてのものは綺麗だと言ったとき、溢れた血液も傷口も名残ひとつなく消えている、それは癒えるのとは違って、ただただ消えたのです。血液が赤色じゃないから、自身の傷口だけがぼくの存在証明だったのに、苦しんでいたことだけがぼくのことを確かに顕していたのに、きみたちはそれでもぼくのことを綺麗だと言って、ねえ、綺麗だと言ったものの数だけ、その苦しみが無視されているなんてそんな単純なこと、どうして分からないのですか?
ぼくは、ぼくのことを綺麗だと言うすべてのものに対して死ねと言いたくて、きみたちに綺麗だと言った。綺麗と言うと、人は綺麗に死のうとするのですよ、けれども、そんなぼくの意図がきみたちに伝わることはもちろんなくて、綺麗という言葉が死刑宣告なんだって誰も気づかないまま、きみたちはぼくのことを眺めている。ねえ、そんな愛おしそうに眺めないで。満天の星空の下は今日も数多の死ねで溢れて返っているから。