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風何(ふうか)
2023年5月16日 12:47
見えた波も、すぐに揮発してしまうから、僕は、どこまでも僕のまま。大きく口を開けて、いとも簡単に僕たちを呑み込んでしまうような、そんな荒波に見えるけれども、本当は、大海を魅せるだけの蜃気楼なんだ、物語なんて。マッチ一本で、赤い炎に生まれ変わって、しばらくすると白い灰に生まれ変わってめまぐるしいのに、僕は、すこしも情報を書き換えられない。変わらないままの僕は、言葉だけが吐き出せなかった。海水が肺を満た
2023年5月13日 16:39
生まれたときから、なにも、与えるものを持たない。ルビーもサファイアも、ただ遠くから眺めるだけのもので、きっとこの瞬間、誰かの指輪の上で光っているから、ずっと星みたいだなと思っていた。何にも触れられない。みんなみんな、僕のほうなんて一度も向かずに、決められたどこかへと去っていって、言葉ばかりが周りに溢れていて、ただ僕の眼が、鋭い剣に、貫かれればよかったのに。濡れた瞼を拭いている。いつだって燕は遥か