【詩】上書き
見えた波も、すぐに揮発してしまうから、僕は、どこまでも僕のまま。大きく口を開けて、いとも簡単に僕たちを呑み込んでしまうような、そんな荒波に見えるけれども、本当は、大海を魅せるだけの蜃気楼なんだ、物語なんて。マッチ一本で、赤い炎に生まれ変わって、しばらくすると白い灰に生まれ変わってめまぐるしいのに、僕は、すこしも情報を書き換えられない。変わらないままの僕は、言葉だけが吐き出せなかった。海水が肺を満たしていくように言葉は、少しずつ僕を蝕んでゆき、燃え盛る赤い炎にだってなれないまま、虚ろな物語に埋没したと錯覚するみたいにのめりこんで、そうして、ほとんど変更点のない上書き保存をし続けて、僕は、僕は、きっと僕ではない誰かになろうとしているのだ。
浄化されたみたいに、深海に沈んでいきたいね。
風景、四季、錯乱したように、ずっと目が回り続けていました。