【詩】燕
生まれたときから、なにも、与えるものを持たない。ルビーもサファイアも、ただ遠くから眺めるだけのもので、きっとこの瞬間、誰かの指輪の上で光っているから、ずっと星みたいだなと思っていた。何にも触れられない。みんなみんな、僕のほうなんて一度も向かずに、決められたどこかへと去っていって、言葉ばかりが周りに溢れていて、ただ僕の眼が、鋭い剣に、貫かれればよかったのに。
濡れた瞼を拭いている。いつだって燕は遥か頭上を飛び去っていくから、僕は、高い高い空ばかり見ていた。誰でもない誰かが、「溺れてるみたいだね」とか言ってくれれば、友達になれるかもしれないのに、と、僕は、そっと想いながら死んでゆくんだろう。