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白鳩語り

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「自分の気持ち」をテーマとした、フィクション小説シリーズの総称です。その時、自分が何を思ったのか、何を感じたのか。そんな心に渦巻く思い出を言葉にしていきます。(利用画像:写真ac)
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#小説

[小説]『しまいこんだ初恋のこと』

[小説]『しまいこんだ初恋のこと』

私の初恋は、いつのことだったでしょう。

それはきっと、遥か昔。

確か、小学校の頃でした。

その方のお名前は、仮にMさんと呼称します。

その頃の私は、支援学級と呼ばれるクラスに所属していた、いたって普通の変わり者でした。

いつからだったでしょう。

私とMさんはいつも一緒でした。

クラスでも。

学童でも。

Mさんとの出会いは、いつだったでしょう。

Mさんとは、どんな会話を交わしたで

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[小説]『リストカット』

[小説]『リストカット』

遥か昔のこと。

私は、苦しみの中にいる女性に出会ったことがある。

彼女の名前なんてどうでもいいだろう。

きっと、どこにだって存在している。

今日みたいな秋の日のこと。

その日の夕焼けは、酷く赤く見えた。

彼女は、季節感を省みることもなく、よく長袖に腕を通していたことを覚えている。

私はその疑問を口にする事はなかったが、何故か彼女の方から私に伝えてくれたことがあった。

駅のホームで、

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小説『失恋を経て』

小説『失恋を経て』

それはそれは。

遠い昔のこと。

私にとって「恋」というものが、とても大切なものだったことを覚えています。

なぜなら。

今の私が生きているのは、「恋」という衝撃が心を壊したからなのです。

分かりやすく言うと、失恋したからです。

おかしな考えかもしれませんが、私は「恋」というものを「一人の人間が成長するために経験するもの」だと考えています。

けして、恋を成就させるだとか、肉体関係を持つこ

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小説『鳥になりたい。』

小説『鳥になりたい。』

帰りがけのバスで、窓の外の青空を見つめる。

連なる田畑と家の数々。

その遥か上空で、鳥が飛び立っていく。

(……私も、鳥になれたらな。)

そんなことを思ってしまう。

昔はあんなに鳥が嫌いだったのに。

駅前の鳩に、ビビり散らかしてたこともあったっけ。

保育園のみんなで動物園に行った時は、孔雀なんかが怖くて、先生の後ろに隠れていたっけ。

なんでだろうな。

ただ。

その嘴が怖かった。

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