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    エンジニアとライターが始めた共同執筆プロジェクトです。エッセイを軸に、自分の感じたこと、考えたことを発信したり、同じテーマで互いに呼応したりする作品を作っています。

最近の記事

#012 KPIの達成率1500%(エッセイ)

部長の言葉。 KPIの進捗を見ながら、期末まで1カ月半もあるのに「もうムリでーす。あきらめまーす」と話していた。 わたしは、粘り強さというものを持ち合わせていない。 部長曰く、草の根活動が限界なら他の手段を使うまでだ、とのこと。いくつかのサービスを紹介してくれた。 成果指標と行動指標を組み合わせたKPIのうち、行動指標の方はたぶん一発で達成できますよ、と。 ビハインドの数値に対して20倍、KPIにすると1500%達成の数値が見込めるらしい。 部長はさわやかでマイルドで

    • #011 ギャグって何?(エッセイ)

      次女、寝る前の一言。 もう布団に入って真っ暗な部屋で母に問う。 明日着る服を準備していた長女が「おもしろい一言っ!」と、遠くの方でごく正解なことを叫んでいる。 「へーっ」と、自分で訊いといて1mmも興味ないですとでも言うようなそっけない返事をして、次女は寝ることにした。 ギャグって何ってストレートに問われると、答えるのむずかしい。 ギャグセンスという言葉を使うし、何かしらのシチュエーションに対して「ギャグみたいやな」と使うこともあるが、その意味をすぱっと説明できなかった。

      • #010 もうちょっと寝転んでて(エッセイ)

        夫の言葉。 風邪をひいてしまった。 熱はないがとにかく鼻がぐずぐずしている。 日曜の朝、子どもは昨日買った新しいおもちゃに夢中でとてもおとなしい。 とはいえ(ごろごろしてばかりもいられん…)と思い、洗濯をしようとしたら夫に言われた。 体調を労わってくれているのかと思ったら「俺、これから洗面台使うから」と、付け加わった。 要するに「そこどいて」をマイルドに言っただけ。 なんかムカついたので、グーで夫をどついてから布団に戻り、思う存分ゴロついた。

        • #009 まだバイバイも言ってないのに(エッセイ)

          保育園の帰り道、次女の言葉。 散歩の時に拾った松ぼっくりを持ち帰ろうとしていたので、どうにか道中で手放させたかった。 手をつないで歩きつつ、リュックのポケットから大事そうに出してきた。 それを誰と見つけたか、いかにその小さい松ぼっくりがかわいいのか、次女は熱弁していた。 しかし、家に持ち込むのは避けたい。 結局「松ぼっくりさんは外で育ったんだから外の方がいいよ」とか「家に入ったら、しなしなになるで」とか適当なことで言いくるめ、最終的に次女は松ぼっくりを置いた。 道のど

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        記事

          #008 お別れ次女ちゃんの4歳(エッセイ)

          明日、次女は5歳になる。 4歳の次女とはもう2度と会えないので、抱っこしながら1年をたくさん振り返った。 文字を読めるようになった。名前を書けるようになった。背がぎゅーんと伸びた。リモコンを自力で操作してテレビを観られるようになった。たくさん歌を覚えた。 すさまじい成長を遂げている。 私は、4歳の次女が大好きだった。毎日怒って怒って怒ってばかりだけど。 彼女は尋常ならざるおしゃべりさんだが、独特な語順で話す癖がある。ひっくり返りやすいのだ。 色鉛筆ピンク(ピンクの色鉛

          #008 お別れ次女ちゃんの4歳(エッセイ)

          #007 散歩(エッセイ)

          The new habit I enjoy recently is walking around my home as a refreshing time. In many cases, I go out my home from 1.p.m to 2 p.m. Of course, I sometimes go to the supermarket to buy the snacks for my daughters or ingredients for our dinn

          #007 散歩(エッセイ)

          #006 人が話しとんがに、切ってしもた(エッセイ)

          高齢で難病を患っている母は、薬の影響もあり、いろんなことがうまくできなくなりつつある。特に、スマホの操作は難しいようだ。LINEの誤送などは当たり前で、もはや家族の誰も特に反応しない。 電話もおぼつかない。さっき、母と話していたのだが「お母さん風呂に入ってくる」と言ったので、わたしは次の言葉か、電話が切れるのをしばらく無言で待っていた。 すると、母がタイトルの言葉をつぶやいた。横にいる姉に向けられた言葉だったが、電話はしっかりつながっていたので、わたしはその言葉をしっかり

          #006 人が話しとんがに、切ってしもた(エッセイ)

          #005 ときめくのって難しい(エッセイ)

          絵を探している友人の言葉。 曰く、家に合う絵が欲しいわけではなくて、心がときめいて未来に投資したくなる絵と出会いたいのだとか。 でも、なかなか見つからないらしい。 その彼にも言ったが、それは恋人や配偶者ではなく「好きな人」を探すようなもので、難易度は非常に高いと思う。 前者なら、適切な手段と意志によって見つけられる可能性があるが、後者は思いがけず琴線に触れないといけないのだから、予測できない。 (こんなはずじゃなかったのに…)と、時に自分自身をも裏切りあざむくことさえある

          #005 ときめくのって難しい(エッセイ)

          #004 行き先はお姉ちゃん(エッセイ)

          ドラえもん屋さんに、巨大などこでもドアがあった。 横のタブレットに行き先を伝えてどこでもドアを開くと、Google Earthと連動したディスプレイに目的地が映し出される仕組み。 次女の順番になり、勢いよくタブレットに向かう。 そして「お姉ちゃん!」と言った。 焦ったチャットボットが「本当に…?」と確認してきたが、もちろん次女は「はい!」と答えた。 行き先見つけられなくてごめん、とチャットボットは謝ってきたが(こちらこそごめん…)と思いながら次の子に順番を譲った。 通常

          #004 行き先はお姉ちゃん(エッセイ)

          #003 娘パンのおかんサンド(エッセイ)

          洗面台の前に立って次女を抱っこしていたら、長女が背中に抱きついてきた。 長女曰く「娘パンのおかんサンドだよ」 わたしは一般的に言って背が高い方なので「具がデカいな」とのこと。 ライ麦パンのハムチーズサンド。 娘パンのおかんサンド。 たっぷりキャベツのカツサンド。 ツナサンド、ジャムサンド、フルーツサンド。 娘パンのおかんサンド。 (美味しそうではないが、語呂はいい) 「お母さんサンド」でも「母サンド」でもなく「おかんサンド」なのが、長女のユーモアセンスなんだろうな。 絶

          #003 娘パンのおかんサンド(エッセイ)

          #002 酒飲んで寝てしまえ(エッセイ)

          風邪をひいた夫に対し、わたしの父の第一声。 別に、風邪に限らず夫に限らず、父はいつでも誰にでもよく言っている。娘の就職先がうまく決まらなかった時も、残業続きでヘロヘロになっている時にも。 つまり、適当な決まり文句なのだ。 この言葉に具体性はない。信憑性もない。そんなものは最初から存在してなくて、発せられた時点でこの言葉はもう終わっている。 時にそれは「とりあえず休め」であり「落ち込むな」であり「早く忘れろ」にもなりうる。シチュエーションと聞き手の受け取りによって自在に姿

          #002 酒飲んで寝てしまえ(エッセイ)

          #001 バカも好き。マヌケも大好き。(エッセイ)

          大阪のなんば駅で見かけた言葉。 ガチャブランド「パンダの穴」のキャッチコピーだった。わたしはガチャが好きじゃないので知らなかったが、とても有名らしい。 バカもマヌケもネガティブワードだが、どっちも好き(片方なんて大好き)と受け入れられたら、人生が楽しくなったり世界が明るく見えたりするんだろうか。 幸か不幸か、どちらのワードも、言ったことも言われたこともほとんどない。つまり縁がない。 なのに、通りすがりの一瞬で目にばっちーんと飛び込んできて、頭に残り、新幹線に乗ってから検

          #001 バカも好き。マヌケも大好き。(エッセイ)

          使ってもないのにいたんでいるお薬手帳

          魔窟みたいに物が詰まっているキャビネットから、すすすっとお薬手帳が転がり落ちてきた。 何気なくペラペラ見ていて気づく。 この2年、風邪をひいて耳鼻科に行っていない。 厳密には、新型コロナの感染拡大が深刻さを急加速させていた2020年3月に、まさかのインフルエンザに罹患して1度内科を受診していた。 もう春になったぞという時期になってからの、あえてのインフルエンザ… 例年、季節の変わり目はいつも鼻風邪をひき、うまいこと市販薬で治せないと喉にいって、最終的に耳鼻科を受診してい

          使ってもないのにいたんでいるお薬手帳

          11月が好きな理由

          実家から車で30分ほど走ったところに、世界で一番美しいスターバックス、というスタバがある。 今もそのポジションなのかは知らないが、少なくともかつてはそう言われていた。 11月のとても穏やかな天気の日、そのスタバがある公園は、それはそれは気持ち良い空気に満ちていた。 平日の午後、買ってきたコーヒーを父と母に渡すと、時間は止まってるのに風は吹いているような不思議な空気のなか、わたしは無言で公園内を歩いた。 散歩というにはかなり激しい歩き方だったが、わたしはぐいぐい歩きまわり、展

          11月が好きな理由

          おかんをちょっと黙らせて

          長女も次女もすさまじくおしゃべりなので、休日の朝は「何でもいいから遠くにおって(おかんは眠い)」が第一声。 夜も「口閉じて、もう寝る時間!」と3回くらい言わないといけない。 疲れる。 たいがい夕方くらいには限界が来て「おかん、ちょっとお返事休むね」とことわってから、しばらく何を言われても返事しない時間がある。 「わかった!」と言いつつ、それでもかまわず話し続ける彼女たちのメンタル強すぎ。 こんなにも親に真剣に向き合ってくれる時間なんてあっという間に過ぎる。今だけの時間を

          おかんをちょっと黙らせて

          「やろう」だけじゃ信頼できない

          ディズニーランドに行きたいね。鬼滅の刃のおもちゃ買おうね。お揃いのコート着ようね。 子どもとの会話には希望がたくさんある。要望も含め、そればっかりと言っても過言ではない。 やりたいことの意志表示は、全然悪いことじゃない。いつかできたらいいなと思う気持ちと、実現可能性は、必ずしもいつも同じ天秤には乗っけていないし。親は「やりたいね、やろうね」と相槌を打ちまくる。 だけど、子どもは手厳しい。 「やりたいねーばっかりで、お母さん全然やってくれないじゃん」 普段のおぼつかな

          「やろう」だけじゃ信頼できない