【感想】「STEINS;GATE」初見の感想を言うよ
今回は人気アニメランキングで6600を超える作品の中で見事第10位にランクインしている「STEINS;GATE」の初見の感想を手短に述べたい(筆者は原作未読、劇場版・ゼロ未視聴勢)。「STEINS;GATE」の内容ネタバレはないので未視聴の方はご安心を。
1.忙しすぎる人には序が冗長気味な可能性が微レ存
例えるなら、ジェットコースター🎢の最初の登り部分が長すぎて「もうえぇわ」と気持ちが一回切れるような感覚を味わった。本格的に興が乗り始めるのが7話辺りで、それまではアバンとラスト1,2分だけ見ていればいいような状態がじれったく続いた。ここいらは人物紹介とか電話レンジ(仮)をまったりとSFの世界観に慣らしていくパートと言ったところか。
それでも、序は少しシリアスと中二病的なギャグが混在していたので、どういう目線で見れば良いのか分からなくてマジで混乱していた。7話辺り以降は主人公・岡部らが繰り出す日常的な茶番が「今までのは何やったんや……」と思うくらいに鳴りを潜め、シリアスが気持ちいいほど一気に加速していった。振り返ってみれば1.5クールの内容を2クールで見たような印象が残っている。
2.時間航行に抵抗が無ければOKだが……
「涼宮ハルヒの憂鬱」(2006~2007)、「魔法少女まどか☆マギカ」(2011)、「Charlotte」(2015)など、誰かを助けるためにキャラクターが時間航行する作品は少ないながら何作か見ていた。タイムマシンやらタイムリープに対する抵抗とか真新しさは無かったものの「STEINS;GATE」(2011)はある意味世界を騙すという他作品にはない独自性があり、関係性の描写がベタながら丁寧になされていると感じた。
そういえば「Re:ゼロから始める異世界生活」(2016)の時間航行のアイデアは少し形を変えて「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」(2020)に落とし込まれているように感じる。これに関しては何とも思わないが、リゼロは主人公を立てるためにヒロインらの気持ちを蔑ろにする描写が何度もあったので、段々と心がしんどくなっていった。これは好みの問題なのだけれども、自分は主人公を立てるために用意された都合の良いキャラがいると感じた作品は余程のことがない限り好きにならない。生み出されたキャラはすべて何かしらカッコいい場面を用意してあげて欲しいし、また主人公と相補的な関係性がある方がより魅力的に見えると考えるからだ。
とりわけ、2クールを活かした世界線を行き来する描写が何度もあり、その複雑性ゆえに途中で話についていけなくなることが度々あった。初見殺しが過ぎる。とはいえ、序の方で言及されていたバタフライ効果も、視聴負荷軽減のためか大幅な世界線の改変は言うほど行われていない模様。最終的には運命が悪役となり、それに抗い、戦う方へと話を収束させていったのは好印象だった。作業中に流し見するような作品でないことは確かだ。
3.時代を感じる2ちゃん用語と秋葉原の風景
2ちゃん用語と秋葉原は2000年~2010年頃のものだろうか。あの言葉遣いが無理な人は早々と切る”ふるい”になっている。2021年現在を基準にすれば、ネットの古典を聴いている感じすら受ける。
キャラクターに台詞としてその2ちゃん用語を喋らせるのは、知らない世代には訳の分からない日本語に聴こえるし、たとえ知っていたとしてもイタイ。いずれにせよ地獄なので、心して視聴しなければならない。当時を知る人が初めて見たとしたら、それこそタイムリープした感覚を味わうことになるだろう。
【個人的短評】とりま7話辺りまで切らずに耐えろ
7話辺りまでの序が冗長気味ではあるものの、それを補って余りある程の以降の加速っぷりが気持ち良い。まるで、ジェットコースターのように最後まで運命に抗い続ける様子がぶっ通しで見られる。1.5クール程度の話数でまとめてあったら最初から集中力が切れずに見られる作品だったかもしれない。人気の高さを象徴するような内容ではあったものの、涙を零すほどの感動は無かったので”神作”とまでは言い難い。それでも、何の思い入れもない初見で好作と思えたので、見ておいて損はない作品だと言えると思う。
【P.S.】 リアルの方の科学も面白いよ
作中に出てきた言葉のうち科学的に引っかかったことを言っていこう。”フントの規則”は物理や化学でははじめの方で出てくる知識なので理系相手にはイキれるレベルの言葉ではない(放電現象うんぬんとは何の関係もない)。
あと、素粒子物理学の中枢とも言える欧州原子核研究機構CERN(作中ではSERN)がなぜか闇組織風に描かれていて草。大型ハドロン衝突型加速器LHCを使って質量の源となる素粒子"ヒッグス粒子"を2012年に発見し、2013年にノーベル物理学賞をスピード受賞したのを知っている人は多いだろう(ヒッグス粒子の存在自体は1960年代に予想されていた)。放送当時は2011年だったけれど、原作に取り入れようとしたらもう少し時間が必要だったか。CERN とは関係ないが、ここ最近のビッグニュースと言えば2019年のブラックホールの撮影の成功だろう。こういうネタもそのうちSF界隈に取り入れられるはずだ。
素粒子物理学は「宇宙はなぜ始まったのか?」とか「この世を支配する物理法則を統一する神の数式は存在するのか?」とか「暗黒物質とは何だ?」といった知的好奇心(中二心?)をかきたてる面白さと難解さに満ち溢れている。時間をテーマにした物理現象なら時間結晶がSFのアイデアに活かせるかもしれない。下記サイトにはそれが比較的簡単にまとめられているので興味があればどうぞ。