現実を受け止め、逞しく生きる人々
飛行機の移動前、まだまだ読める本は電子書籍がタブレット内にも沢山あるのに、どうしても空港内の本屋に立ち寄ってしまいます。
気になる作家の文庫化最新作を手に取って、後ろの解説を見てみると最近亡くなった信頼していた書評家が本来受け持つはずだった本書を、その書評家にずっと後押しされてきた作家が代打で推薦文を書いていました。
思えば、本書の作家を好きになったのももともとはこの書評家のレビューがあったからでした。
結局、そのまま購入してしまい機内へ。
作家ありきで購入したので、内容はと言えば南国チックなタイトル以外は分からずのまま。
日本に帰化した一族の連作短編。
ボートピープルとして南ベトナムから避難してきた一家。
物心ついた頃には日本だったので、辛い思い出はあまりないまま日本で結婚したものの、自分の出自を子供たちに伝えられないまま来てしまったお母さん。
自分の血筋を知ることとなって、ルーツに興味を持ち出す娘。
母と娘、それぞれの一人称を行ったり来たりしながら、ベトナムの歴史と共に一家の歴史を一緒に辿っていく物語。
淡々と語られていく様の中に現実の厳しさもあれば、長い年月が風化させてくれた人間の逞しさや優しさを垣間見せてくれるところがこの作者の真骨頂でしょうか。
スーッと読めて、なんだか分からないまま涙腺もスーッと緩めさせられる佳作です。
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