個性だなんて
「あんまり個性を出し過ぎないように」
貼り付けたような笑顔と当たり前のような口ぶり
が今も脳裏を焼きついて離れない。
第一志望だったブランドのOB訪問。
“ポートフォリオを作成する上で注意すること”を
尋ねると「個性を出し過ぎないこと」だと言われた。
あまりにも普通のことみたいに言うから、この
違和感に気付くまで、1ヶ月もかかってしまった。
これほど大好きなブランドなのだから、きっと、
個性云々に限らず、会社に共感して楽しくやっていけるはずだ。
社長の言葉や、彼らの織りなすデザインや縫製は
どれもため息が出るほど美しいし、凄く憧れる。
けれど、どうしても【個性を出し過ぎない】という言葉が引っかかってしまう。
それは、今まで言われてきたことと真逆だから。
小さな頃から母に言われてきたオリジナル標語は
今の私の信条になっている。
制服は、怒られない程度にアレンジを加えて、
みんなと被らない服装や髪型ばかり選んできた。
誰かに指図されることが物凄く嫌いで、私の個性を丸ごと受け止めてくれるみんなが大好きだ。
ショーの準備を進める中で、特に思う。
私は、自分の個性や思想が煌めいて、それらが、
自分の手の中から生まれていく瞬間が、何よりも生きているのだと感じられる。
こういう仕事を一生続けていきたいし、なんなら三徹だって出来てしまう自信がある。
好きなことを、仕事にするか、趣味にするのか。
個性を突き通せる会社か、殺し合わせる会社か。
何を選んでも納得できる気もするし、何を選んでも文句を言ってしまいそうな自分に腹が立つ。
やっていけるのだろうか。こんな人間が。
やるしか、ないのだ。やるしか。そうだろ。