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マーケットインを超えた"ユーザーイン"と、サントリーの"やってみなはれ"精神で生まれたヒット|週刊小売業界ニュース|2024/6/3週
2024年6月3日~6月9日の日本の最新ニュースから、
最近の小売り業界について紐解いていきましょう。
今週のおさらいに、ぜひどうぞ!
【新】サントリーが中高年男性を攻略した「意外なルート」
<記事の要約>
サントリーの男性用スキンケアブランド「VARON」。中高年男性向けに特化し、発売から2年で40億円を売り上げた。その成功の裏には、試してもらうことに重点を置いたマーケティング戦略がある。試供品の配布や、シンプルで使いやすい商品設計が特徴で、顧客の自己肯定感を高めることに焦点を当てている。
サントリーウエルネスから2022年に発売されたVaronは、
メンズケア市場において後発にも関わらず、絶好調です。
サントリーウエルネスが
Varon開発の元となる顧客ニーズを発見したのは、
他事業でインタビューをした時のことだそうです。
健康食品事業のインタビューにおいて、
ミドル・シニア世代の男性が外見についての
悩みを抱えていることが多いと気付いたのだそう。
普通の企業ではこのインサイトを得てウキウキし、
すぐに商品開発に飛びついてしまいそうなものですが、
サントリーウエルネスは一味違いました。
外部のモニター約150人に1時間以上のデプスインタビューを実施。
徹底的に使用者のリアルな課題や生活環境をヒヤリングしたそうです。
同社スキンケア事業部でVaron開発者の西山氏は、
「サントリーウエルネスの社長・沖中からの
『調査にはどんなに時間と労力をかけてでも徹底的にやりなさい』
という言葉があったから」
150人分ものデプスインタビューを実現できたと語っています。
また発売後の販促でもユーザーとの対話を怠りません。
同社役員のうちVaronで美容効果を体感したとする役員を
アンバサダーに任命し自らサンプルを配ってもらったほか、
サントリーの得意先である高級クラブにも赴き、
ママが顧客に渡す手土産としてギフトボックスを提案。
その他にも、サンプルをゴルフ場や温泉、ホテルで配布し、
ギフトボックス型で4万箱、
パウチ型で100万セットを試供しています。
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(出所:『サントリー「VARON」 が30億円を突破 中高年男性になぜ選ばれるのか』)
さらに、ヒットを飛ばし好調であっても
ユーザーへのサポートを怠りません。
サントリーウエルネスは、シニア世代でも労の少ない
電話でのコミュニケーションを取り続けています。
これまでには「無香料を出してほしい」との要望をうけ
無香性の「アンセンテッド」を開発しました。
このようなサントリーウエルネスの姿勢は
「ユーザーイン」と言えます。
マーケティングにおいては
「マーケットイン」
「プロダクトアウト」
という言葉があります。
作れば売れた時代は、
売り手ニーズ=プロダクトアウト
で商品を作ればよかったのですが、
物があふれた現代においては
消費者ニーズ=マーケットイン
をいかに反映できるかが鍵にとなります。
しかし一橋ビジネススクール特任教授の楠木建氏は
「マーケットイン」では不十分であり、
具体的なユーザーまで解像度を高める
「ユーザーイン」の姿勢で、
商品開発をする必要があると指摘します。
「マーケット」はユーザーではありません。特定の基準や範囲でのユーザーの集計値に過ぎません。「マーケティング」は文字通りマーケットを相手にしたものです。マーケティングの名のもとにしばしば行われる消費者アンケートからは、マーケット全体の平均値や傾向しか分かりません。誰もが注目する儲かりそうな市場に目を向けることになります。参入企業が相次ぎ、同質的な競争になり、結局のところ儲かりにくくなります。マーケットインでは独自性は生み出せません。
(中略)
メーカーの営業社員はその本能からしてマーケットインの姿勢になります。直接の顧客は問屋や小売店ですから、営業が流通業者のニーズに反応するのは必然です。しかし、流通(=マーケット)のニーズは必ずしもユーザーのニーズではありません。ここにマーケットインの盲点があります。
(日経ビジネス)
Varonの売れ行きが好調である大きな要因として、
サントリーウエルネスはメーカーでありながらも
エンドユーザーを顧客として常に対話をしながら、
前述の「ユーザーイン」の姿勢で
商品開発を行ったことが挙げられます。
しかし、これアプローチも
他社が模倣可能かと言えばそうではなく、
サントリーの「やってみなはれ」精神が
土台となって実現できたものだと言え、
企業文化が模倣困難性を創出しています。
<担当者からの一言>
自社の役員、飲料の営業部隊による、会食の際に配ってもらうというマーケ。高価格帯の商品に必要な「高品質感」や「かっこよさ」を保ちつつ、「親しみやすさ」をバランスよく配合したクリエイティブ。とにかく体験してもらう場を作る」ことに注力し、使えばわかってもらえる本質を追求した事例だと感じました。頭ではわかっている手法も、実際やり切るのは難しい。
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