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「金融教育」は、学校と家庭との両輪でありたい ── 『大人のためのお金学』書評
近年、高校生向けの金融教育が始まりましたね。
2022年4月から、家庭科の授業で取り扱っています。
これまでの子どもたちが、義務教育の段階でお金についてほとんど学ばないまま社会に出ていたことが、ようやく問題視されたことで導入されたものです。
私自身、この取り組みには大賛成でした。
自分がお金でえらく苦労したこともあり、せめて今を生きる子どもたちには、みんなが自衛の力を身に付けてから社会に出てほしいと感じていたためです。
しかし今回、『大人のためのお金学』という本を読んで、ひとつ、大切なことに気がつくことができました。
それは、「金融教育は、学校と家庭との両輪で取り組むべきだ」ということ。
言い換えれば、高校で取り扱う内容には大きな穴があって、それを埋められるのは家庭である、という話です。
それでは最後までよろしくお願いします。
「高校生のための金融リテラシー講座」
まずはじめに、実際にどのようなことが教えられているのかを簡単に見てみます。以下は金融庁が公表している教育指導教材です。
このサイトにある「高校生のための金融リテラシー講座」というPDFファイルが、実際に授業で使用することが推奨されている指導教材のようです。
ひと通り目を通してみました。
皆さんはとりあえず下記の「本講座の目的」だけ、読んでみて下さい。
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うん。大事ですね。
自分が将来、どんな人生を歩みたくて、そのためにはどの局面でどれだけのお金が必要なのか。
そのお金はどうやって工面すべきなのか。
貯めたお金をどのように守るのか。
いずれも言うまでもなく重要なテーマで、これを義務教育で取り扱ってくれることには、親として心強さを覚えます。
しかし一方で本書の著者である中山智香子氏は、「この金融教育には圧倒的に足りないものがある」と主張します。
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義務教育から抜け落ちているもの
著者が語る「義務教育から抜け落ちているもの」とは、
「そもそも "お金を使う" ということは、何なのか」が語られていない、ということです。
上で紹介した画像を改めて見てみます。
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これを一言でいえば、
「自分が将来困らないように、効率的にお金を蓄え、増やす方法を学ぶ」
ということです。
しかし著者は、ここに疑問を呈します。
私たちにとっておカネとは、単に増やせばいいだけのものなのでしょうか。
これは、各自が「自分の人生の最適化」だけを考えて動いてしまうことで、他人のことは二の次、誰かが苦しんでも自己責任、という現代社会の悪いところが反映されちゃいないか、という指摘です。
「貯める」「増やす」に偏るのではなく、もっと「使う喜び」にフォーカスしてほしい、という著者の思いが、本書の端々から見られました。
誰かを応援すること
「お金を使うこと」とは、「誰かを応援すること」です。
たとえば私が、インターネットで買えばポイントが付く新刊を、わざわざ近所の本屋さんで買うのには理由があります。
それは言葉を選ばずに言えば、「買わなかったら、ここ、潰れるかもな…」と思うからです。
私が一冊買ったところであまり意味はないだろうけれど、皆がそう考えてこの書店に足を運ばなかったら、本当に潰れるよな、と感じるからです。
自分が本屋さんでお金を使えば、この本屋さんの寿命が少し延びるかもしれない。
スタジアムでお金を使えば、また今後も熱い試合が見られるかもしれない。
動物園でお金を使えば、あのレッサーパンダがエサにありつけるかもしれない。
そういった「応援」の姿勢こそが、お金を使うことの醍醐味です。
裏を返せば、ひたすら貯蓄と投資の方法を教え込むことで子どもたちが到達できるのは、こうした温かさとは程遠い、「自分だけが満足した世界」です。
誰かを助けたい、応援したい、誰かに賭けたいという気持ちでおカネを使う人たちがいて、自分がそれを受け取ったら、いつか自分も誰かを助ける。それは「ニーズ&ウォンツ」とはまったく違うスタンスのおカネの受け取り方であり、使い方です。
「価格.com」と「推し活」と
そういえばさっき私は恥ずかしいくらいカッコつけていましたが、一方で、Amazonや楽天で本を買うことだって多々あります。
それは自分のお金が大事だからです。家族に残すお金が大事だからです。
結局このバランスなのだと思います。
自分の大切なおカネを、どこに「投じる」のかを考える。
「価格.com」で最安値を調べてお金を使えば、自分のお金は減りにくくなります。でもお金を使うことで誰を助けているのか、ぼんやりしてよく分かりません。
「推し活」にお金を使うと、その人を応援する意思表示が明確にできて、かつ自分の心も満たされます。でもお金はかなりのスピードで減っていくことになるでしょう。
このような「お金を使うことの本質的な意味」を、高校生である子どもたちに肌で教えるのは、いったい誰の役割なのでしょうか。
この機微を子どもに背中で教えていくのは、やはり学校ではなく家庭であり、親である私たちなのだと、本書を読んで感じます。
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まとめ
今回は中山智香子さんの『大人のためのお金学』を読んで、考えたことをまとめてみました。
貯めるときは貯める、使うときは使う。
使ったときは、なぜここでお金を使ったのかを、子どもに教えていく。
「Amazonで買った方がそりゃあ安いけど、このオモチャ屋さんで買ったのには、ちゃんと理由があるんだよ」といったように。
学校教育で脇を固めて、家庭教育でメリハリを教える。
この両輪で行こうと、決意を新たにした読書体験でした。
他にもいろいろな本の書評や感想を書いています。
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他の書評も、よければ読んでみてくださいね。
子育てに関するものは、コチラなどいかがでしょうか。
それでは、また。
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