船の上のブラック企業「蟹工船」を考える。
どうも。宇宙ゴリラです。本日は1929年に小林多喜二が発表した「蟹工船」について考えていきたいと思います。
※この記事は「蟹工船」のネタバレを含みます。
あらすじ
「蟹工船」とは、蟹を捕りそのまま缶詰に加工する船のこと。この、蟹工船を舞台に物語は進んでいきます。「蟹工船」の乗組員のほとんどが、お金に困っており蟹工船に乗ってお金を稼ぐことでしか生きていけないような人達が集められます。船の労働環境は劣悪なもので、毎日長時間の労働を強いられます。命を削りながら働く乗組員たちは遂にストライキを起こしますが…
感想
蟹工船は「プロレタリア文学」と言われるタイプの小説です。「プロレタリア文学」は虐げられた労働者の直面する厳しい現実を描くのが特徴で、蟹工船は日本における「プロレタリア文学」の代表的作品とされています。
蟹工船の面白さは、労働者のリアルを描いた点です。劣悪な労働環境でストレスが溜まっていく乗組員達の描写は吐きそうになるほどリアルな物です。この世の底ともいえるような船での労働に加えて、乗組員たちを厳しく管理している「監督」と呼ばれる男の存在が彼らを蝕んでいきます。この「監督」の暴君っぷりはすごくて、読んでいて「コイツっ…」なります。
「監督」の圧政にも耐え、物語の後半で乗組員たちが、ストライキを起こします。しかし結局、労働者たちよりも大きな権力である、軍隊に敗北することになります。僕が最も面白いと感じたのは最後のオチの部分で、蟹工船が港に戻った際、乗組員に過酷な労働を強いていた「監督」も管理不十分ということで首を切られてしまう点です。
作中で巨悪として描かれていた監督すらも、ただの歯車に過ぎず、乗組員と何ら変わらない立ち位置だったというのは皮肉が効いていて非常に考えさせられるものでした。監督も自身の首がかかっていたからこそ、乗組員に対して非情な態度を取っていたと考えると、複雑な気持ちになります。
「蟹工船」は発行されてから約90年後の2008年に再ブームを巻き起こします。これは、蟹工船での労働の様子がブラック企業にそっくりだと話題になったからです。90年たっても労働環境があまり変わっていないのは、人間はあまり進化していないなと思ってしまいます。コロナウィルスの流行もあり、労働環境が変化していく今こそ「蟹工船」を読むべきかもしれません。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
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