
2024年8月に読んだ本まとめ
2バス停ほどの距離を、運動がてら歩くようにしているこの頃。日本ほどではないものの、やはり夏は暑い。雨季をも感じさせるような日々、カンカン照りの一日、そんな夏を乗り越えた今。
日差しの強さが弱まり、アリの歩みほどなのかもしれませんが秋の訪れを感じました。
日本のようなお盆休みはありませんが、プチバカンスを楽しみました。その中で、意図していつもよりも読書に時間を割いたことで、自分の心を見つめ直したり、心の声と一対一で向き合ったりすることができたと、強く感じています。
そして1か月としては過去最高の18冊という読書量を叩き出しました。ほぼ2日に1回は何かを読み終わっている計算です。
今日のまとめは、そんな8月に読んだ本の中から、第5位までをランキング形式でまとめていきます。秋に向けて、今後の読書の参考になれば幸いです。
第1位『今宵も喫茶ドードーのキッチンで。』
心のオアシスがここにあります。
1位は、2位と迷ったのですが喫茶ドードーシリーズです。夏の水分不足のお肌と心と体に、染みわたる1冊。
「自分が自分をいたわってあげなくて、誰がいたわるんですか。」「ぼくもあなたと同じです。ここで幸せの修行をしている最中です。」この2つの言葉は、私の心の宝箱にしまって、必要な時に触れたいと思うのです。喫茶店主の「そろり(ソローからあやかった愛称)」が紡ぐ言葉は、作者からの読者へのラブレターのような優しさがあります。楡や楓といった樹木に囲まれた都会の森のようなカフェが舞台。一歩足を踏み入れたら、きっとさわやかな風を感じられるでしょう。飾らない副音声のようなナレーションがあるのも読みどころです。
そろりの言うように、人生は、幸せの修行をしているはず。
でも、いつも浅瀬で溺れかけているのはなぜだろう。
この夏は、そんなことを感じざるを得ないことが少なくなかった。いや、私の人生においては、もしかしたらいつもそうなのかもしれない。物理的には、何かを一人で抱え込んでいるわけではない。ヘルプも求められる。
でも私には、自己開示ということがあまりないように思う。
お話の中の喫茶店での情景を反芻するたびに、そこに訪れる人々が心を開いていく様が何度も何度も目に浮かんだ。
その度に、私は自分の中の釈然としない塊を感じたのである。
「幸せの修行には、自分の心と向き合うだけでなく、その心を開く必要があるのではないか。」と
このnoteがそんな私の心の湖となることを願うばかりである。喫茶ドードーがオアシスなら、私の心は湖である。
さて、この喫茶ドードー、冒頭通りシリーズが2巻、3巻と続いています。
きっとあなたも会いたくなる
シリーズ2巻目感想より
1作目に引き続いて、暖かさあふれる作品でした。副音声のようなナレーションはドードー鳥だったのですね。そろりや訪れるお客さんを優しいまなざしで見つめ続けていることでしょう。私もいつか会いたいなあと。第3弾(文庫)が今月発売されたようです。続きが今から気になって仕方がありません。
心の糸電話、からまり注意!
シリーズ3巻目感想より
ひとやすみ。私も人生のひとやすみをしているように思います。海外生活が長くなるか、短くなるかまだわかりませんが、今は日本を離れて「一休み」。離れたからこそわかる故郷のありがたみ、日常の喧騒への懐古、そして家族との日々など、思いめぐらすことは多岐にわたります。シリーズ第3弾もほっこりとした気持ちで読み終わりました。『違いを受け入れることは大切です。でも全ての価値観に歩み寄る必要はないんじゃないですか?』今日もそろりの言葉が心に染みわたりました。白黒はっきりしなくてもいいのかもしれません。人生は、長いですから。
第2位『アンと幸福』
和菓子ミステリーは健在
ハードカバーは重みがありますね。もちろんこの本の中身もいっぱい詰まっています。装丁デザインもシリーズを重ねる度に、美しさに磨きがかかっています。
和菓子ミステリーもさながら、今作は20歳そこそこのアンちゃんの心の成長を、かつての自分と重ねながら読み進めることができました。
とにかく、淡い。
それは恋愛とかロマンスとかの淡さというより、目の前の現実と向き合う、アンちゃんの素直さとピュアさとか擦れてない淡さなんだと思いました。
淡雪という和菓子がありますが、アンちゃんって淡雪のような存在です。寒天の代わりにゼラチンを使うとマシュマロになります。
私は、もう少しマシュマロのようにとがらないようにしたいです。
あんこやチョコが「切実」なのは、それが作られる過程に人の手が加わり、歴史が深いからだと思う。もちろん、それらの素材を生かしたデザートや料理にもオリジナルの歴史や人々の想いが乗せられる。しかし、もっと根本のところで光っているような原石みたいな輝きが、それらにはあるんじゃないだろうか、そんなことをふと思った。アンシリーズ最新作を積読していましたが(珍しくハードカバーで購入)ようやく読むことができて一安心。アンちゃんの成長、椿店長、それに立花さん、新しい店長。和菓子を通しておりなされるお話は、まだまだ続きそう。
第3位『夏美のホタル』
帰りたい夏はありますか?
第3位は、森沢明夫さんの『夏美のホタル』です。ホタルをめっきり見なくなりましたが、水のきれいな川原に、また出かけてみたいものですね。
清流といえば、なぜか私の中では五十鈴川。神宮や橋もさながらですが、その神聖さを体感できるからかもしれません。
夏の朝読書。ホタルの光よりも、夏の太陽の輝きよりも、このお話に出てくる人たちは、それぞれの出会いの間で美しく輝いている。仏師である雲月が自身の最高傑作を彫り上げるところから始まるので、彼の話かと思ったらそれだけでなく、夏美、慎吾、ばあちゃん、お地蔵さん一人ひとり人間の哲学的な成長を味わえる一冊。森沢さんの作品を読むのはこれで3作目だが、夏に読んでほしい珠玉の一冊。エピローグの『凛』は、美しい終わり。
最終章の『凛』はお話冒頭とのつながりを感じさせるだけでなく、この作品全体を象徴している言葉である。
季節でいえば、凛は冬を彷彿とさせる雰囲気をもっているが、夏の凛は、清らかな川辺で暮らしをはぐくむ人々の様と、そこで生き抜く強さ、たくましさ、そして時に厳しさを感じる。
有村架純さん主演で映画にもなっているとのこと。私は原作派なので、観てはいません。
第4位『間の悪いスフレ』
あのヴァン・ショーが心に火を灯す
ビストロ・パ・マルシリーズの最新刊。ハードカーバーしかまだ出てないのと、日本からの発送、到着、読み始めと考えると時間が惜しかったので電子書籍で購入。こういう時、電子版はとても助かります。
サクサクと読み終わりました。ビストロ·パ·マルシリーズの最新刊。シェフが出してくれヴァン・ショーが今回も、人々の心を温めてくれましたね。このシリーズは、日常で、少しケアを怠ってしまいドライになってしまった心をスムーズにしてくれるおまじないのような1冊です。シェフの料理を通じての素敵なメッセージがあなたにも届きますように。そして、フランス料理への見識が深まるおまけ付き。シリーズはまだ続きそうな予感ですね。美味しい料理に次も出合いたいです。
今作にもあの、「ヴァン・ショー」が出てきます。いつか作ろう、作ろうと思いながら、シリーズを重ねてきてしまいました。
ここで2度目の冬を迎えたら、ようやく腰を上げて作ることでしょう。
第5位『黄色い家』
過去の悔恨と今を生きる
ラスト第5位は、川上未映子さんの作品です。実は、川上さんの作品を初めて読みました。文章を通して独特なスタイルを感じました。だからこそ、違いがあるからこそ、作家や作品が存在して、愛されるのだと思います。
久しぶりの長編小説に読了まで時間がかかった。やはり五百ページを超えると読み応えがある。クライム・サスペンスとあるが、もっともっと根の深い作品だと感じた。人間の弱さとか、生き方とか、汚さとか、ドロドロした蟻地獄に吸い込まれるような感覚を覚えた。クライマックスでの花と映水とやり取りはまるでそこで一緒に聴いているような感覚があった。映水のもう終わったことだという言葉は、花にとっては免罪符になったのだろうか。私は、違うと思う。だからこそ花は生き続けるのだと思った。
和菓子ミステリー、フランス料理ミステリーときて、ここでクライム・サスペンスです。免罪符になる言葉はいくらでもあるが、本当の意味での免罪はないのかもしれません。
ホラー番組で肝を冷やすのもいいですが、この作品で涼しくなることもおすすめします。
まとめ/読書の秋にむけて
一覧を目で見ると、わかりやすい。百聞は一見に如かず。

8月後半は、なかなか読書ができず。昨日あたりから積読していた4冊の本をパラパラと併読(電子版がほとんどなので、文字通りパラパラではありませんが)を再開しています。
年末までの読書冊数は、60冊はいくことでしょう。100冊は難しいかもしれません。今月もここまでお読みいただきありがとうございました。
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