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うつ病の原因と漢方による対処法

メンタルクリニックで予約が取れないと言われる昨今では、漢方薬店でもうつ病やパニック症などの相談が増えています。
現代においても、実はどのような原因でうつ病を発症しているのかというのは、まだ十分に解明されていません。しかし、漢方を続けていくうちに西洋薬の量を徐々に減らしたり、少しずつ元気になることがあります。また、うつと診断される前の段階から手が打てるというのも漢方の魅力です。
今回はうつ病の原因となっている有力な仮説と、どのように漢方で対処していくのかを解説していきます。

1.西洋医学的なうつ病の原因

うつ病にはいくつかの仮説がありますが、どれもそれだけで完璧に説明することができず、いくつかの要因が重なっていることが推測されます。
現在、うつ病の原因と考えられている仮説は以下のようなものがあります。

(1)モノアミンなどの神経伝達物質起因説

1960年代、抗うつ効果が認められた薬の働きを研究したところ、抗うつ薬を与えられた動物ではノルアドレナリンやセロトニンなどの神経伝達物質(モノアミン)が増加していることがわかりました。 そのため、うつ病ではこれらの神経伝達物質が欠乏しているのではないかと考えられました。これをモノアミン仮説と呼びます。 現在使用されている抗うつ薬の多くはこの仮説を元に開発され一定の効果を上げていますが、モノアミンを低下させるような薬物を用いても、うつ病の罹患率があまり変わらないことから、この仮説だけでは十分に説明することができません。

(2)神経ネットワークの調整不良説

脳の神経ネットワークの機能異常が原因で、脳の機能が低下することがうつ病の原因と考えられている説です。 うつ病の脳では、前頭前野を中心に、複数の脳内領域や神経ネットワークのつながりに異常が起きていることが分かっています。

(3)急性、慢性炎症説

うつ病患者の血液中で炎症を促進するはたらきを持つもの(炎症性サイトカイン)が上昇することから、うつ病と炎症との関連が考えられてきました。 ある実験では、ストレスが炎症細胞であるミクログリアを活性化し、うつ様行動を誘導することが確認されています。さらに、炎症性サイトカインに対する中和抗体を投与したところ、ストレスによるうつ様行動が抑制されることも確認されています。
昨今では有力になりつつある説です。


2.中医学的な原因と対処法

全てが解明されていないうつ病であっても、中医学では体に現れる様々なサインから体質を判断して治療します。代表的な症状と対処法は以下の通りです。

(1)肝気鬱結

ストレスが原因で気の巡りを調節している「肝」の働きが失調すると、自律神経やホルモン分泌の調節、血の貯蔵などの働きが上手くできなくなります。 この場合、肝の働きを助け、気の巡りを良くする漢方を用います。また、気の詰まりが強い場合は、開竅薬と呼ばれる漢方を使用します。
漢方:柴胡疏肝湯、加味逍遙散、半夏厚朴湯、救心感應丸氣、敬震丹など

(2)心血虚、心脾両虚

急激なストレスに長くさらされ、脳の栄養として必要な血が不足し疲弊してしまった状態を心血虚といいます。また、考えすぎることで、胃腸の活動が抑制されると心脾両虚と呼ばれる状態になります。これらのタイプは不安感、めまい、不眠、集中できないなどの不調が出やすくなります。心血を補う漢方を用いますが、胃腸症状に応じてさらに脾気を補うものを使います。
漢方:帰脾湯(イスクラ心脾顆粒)、加味帰脾湯、酸棗仁湯など

(3)腎精不足

強いストレスや過労が続くと、体の根本である「腎」が衰えてきます。腎はホルモン分泌と密接であり、腎精が不足すると他の症状として足腰がだるい、疲れやすい、冷え、難聴、耳鳴り、骨や歯が脆くなる、恐怖心を感じるなどの症状が出てきます。 腎精を補う生薬を用いて生命活動の大元である「腎」を強くします。
漢方:参馬補腎丸、参茸補血丸、霊鹿参、カキ肉エキスなど

(4)陰虚火旺

強いストレスを続けて受けたり、睡眠薬服用したりすることで、根本的な体の潤いである「腎陰」が不足してしまうことで熱症状が出ます。すると、動悸やめまい、イライラ、ホットフラッシュ、寝汗などの症状が出やすくなります。 体の潤いを補うことで、体の余分な熱を抑えます。
漢方:知柏地黄丸、亀板配合食品など

(5)心熱

中医学でいう「心」というのは、心臓以外に脳のことも含みます。西洋医学的なうつ病の原因について解説した通り、脳の炎症というのはうつ病の原因になっている可能性があります。心に熱がこもった状態になると、不眠・多夢、顔が赤い、口が渇く、口内炎、舌痛、舌先が赤い等の症状を伴います。 体の上部の炎症を取る生薬を用いて脳の慢性炎症を解消します。
漢方:黄連温胆湯、黄連解毒湯、黄連阿膠湯


3.改善例

職場のストレスを通じて10年以上うつ病の治療をされている患者様。
始めにご相談をいただいた時は4種類の西洋薬を服用されていました。
睡眠薬の中でも強い物を使わないと眠ることができず、7回ほど中途覚醒するその度に睡眠薬を使われており、副作用のためかお話していてもどこかぼんやりした印象。
仕事も週に何回も仕事を休んでいる状態でしたが、漢方を始めて2週間後には中途覚醒は3回に減り、肩こりや頭痛、吐き気、便秘などが緩和されていきました。
その後、漢方薬を変えながらも続けていくうちに仕事を休むこともなくなり、悩んでいた不眠もずいぶんと改善することができました。


4.まとめ

何か大きなストレス源と向き合わないといけないことは誰でも起こり得ることでありますが、限界を迎える前に予防的に漢方を服用することも大切な体を守るために有効です。
あなた自身が苦しい時、または身近な大切な人が苦しんでいる時、困ったときは漢方を試してみようかなと頭の片隅にでも置いていただえると幸いです。
ご来店いただくことが難しい場合、遠方にお住まいの場合は、電話相談やオンライン相談も承っております。


はくすい堂 国際中医専門員 権藤弘敏
電話:0120-8931-81(10:00〜18:00)
相談予約:https://reserva.be/hakusuido

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