"P = p - i" から人材育成におけるコーチングの意義を考える
最近、人材育成の分野でコーチングという言葉が多く使われるようになりました。しかしながら、具体的にどんなことを行うことがコーチングであるか理解をするのが難しかったりします。そこで、組織内での人材育成におけるコーチングとは何かを考えてみたいと思います。
コーチングとは?
スポーツなどをやっているとチームにコーチという役割の人がおり、練習メニューを考えたり、技術向上のためのアドバイスをしたりします。よって、コーチングと聞くと、テクニカルな部分のアドバイスをする人を想像しがちです。しかし、サバ・イムル・マシュー氏(Saba Imru-Mathieu)は、TED Talkの公演の中で、コーチングには大きく分けて二つの意味があると語っています。一つは、先程の例のように指導するという意味でのコーチングです。そして、最近では、ファシリテーターという意味でのコーチングが多く使われるようになってきていると語っています。
よって、会社等組織における人材育成の分野では、コーチングというと、一般的に、部下等社員のパフォーマンス向上のために、1on1ミーティング等の会議にてファシリテーションを行うということを指すことが多くなってきています。ファシリテーションとは、会議等が意義のあるものになるように進行を行うと言ったような意味になると思います。
P = p - i とは?
コーチングにおける有名な数式として、「P = p - i」というものがあります。アメリカで有名なテニスコーチのティモシー・ガルウェイ氏(Timothy Gallwey)が、インナーゲームという著書で紹介したもので、パフォーマンスは、ポテンシャルから障害を除いたものであると述べました。「P = p - i」は、「Performance = Potential - Interference」の略であり、コーチングの文脈で言うと、一般的にコーチングは、ポテンシャルを伸ばすことに注力されがちだが、今ある障害を取り除くということも、全体的にパフォーマンスをあげるためには必要であるというコンセプトです。
人材育成を念頭においたコーチングにて、ファシリテーションを行い、何を目指すのかと考えた場合、もちろん、部下等社員の持つ能力を最大限広げるということも重要ですが、同時に、不安に思っていること等、可能性を広げるための妨げになっているものを明らかにし、それを一緒に取り除くといった行為も必要だということを、この数式は表していると思います。
ファシリテーターとしてのコーチングで必要なこと
ファシリテーターとは、基本的に進行役であるため、自分の意見は述べません。つまり、部下等社員の思いを引き出し、それを分析または要約することをガイドし、パフォーマンスが向上するようなアクションを導き出す行為になります。では、一体どのようにファシリテートするのが良いのでしょうか?コーチングのファシリテーションモデルとして、GROWモデルというものがあり、これに沿って行うというのが一般的ではありますが、ここでは、もう少し簡単にするために、先程のサバ・イムル・マシュー氏のTED Talkで語られている内容をご紹介したいと思います。サバ・イムル・マシュー氏は、コーチング実践の簡単なやり方として、これら4つの質問を順番にしてみると良いと語っています。
本当は何がやりたいと思っていますか? (What)
この質問によって、やりたいと思っていることをできるだけ詳しく言語化し、本当の欲求を探します。
なぜ、それが、あなたにとって重要だと思うのですか? (Why)
この質問によって、やろうと思っていることの意義および価値を言語化してもらいます。
どのように、やろうと思っていますか? (How)
この質問によって、どんな機会があり、それに対するどんな選択肢があるかを探求できます。
いつからやろうと思っていますか? (When)
この質問によって、初めの一歩を踏み出せるように、励まします。
そして、これを実施する際に、よく聞き、会話を遮らず、どんなアドバイスもせずに、相談者が自ら解決策を見つけられるようにファシリテートするのが良いとしています。
ここからわかることは、ファシリテーターとしてのコーチングは、聞き役に徹し、部下等の社員が自ら答えを見つけられるように、会話を進行するということになります。その際に、相談者の考えがまとまりやすい質問の進行方法があり、それらが、上記の順番での質問であったり、GROWモデルであったりします。
よって、組織の人材育成におけるコーチングとは、部下等社員のパフォーマンスを最大限にするために、ポテンシャルを伸ばすこと、もしくは、不安に思っていることを取り除くことを、質問をすることによって行う行為であると言えると思います。
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