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2020年8月の記事一覧

「恋人」

「恋人」

ほうきとちりとり が
ただ あるだけ
静かに 並んでいるだけ で

なぜ 
いじらしく 
よそよそしいのか

恋人でもないのに

「言葉」

「言葉」

言葉、
飾るほどに重くなってしまう

ひとつが
ひとつの椅子に座っていればいい よ
ひとつの椅子に複数はいらない よ

欲しいのは 意味ではない

健気に
たしかに
添えられた ことば の

美しいこと

「雨」

「雨」

雨は鳴る

そこに落ちると鳴る

屋根と

水たまりと

それから 窓にも。

みんなで傘をひらくと

同じ音に紛れて わからないけれど

ひとりがおとなしく 傘をとじたとき

たしかに まぬけ顔を濡らした雨よ

ほーら

今、ここで鳴ったよ!

「席」

「席」

全くもっておかしな話だ。
笑う理由などないのに
声まで立てて拵えるとは

逃げる前の見栄のようだ

果てには
様になるずり落ち方を真顔で思案し、

ああ、「一瞬」に彩られながら。

それは列車の閃光のように
時間の席に
ひっそりと座っていて。

「湯気」

「湯気」

あらゆる口が 
ぽっかりひらいた。
骨がなにを語ろうか。
湯気を立ちのぼらせて
なにを隠そうか。

「夏に」

「夏に」

ふと
冬を想像する。

引っ張り出した マフラーが
「マフラー」の顔をして
この首に巻かれると思うと、
どちらが滑稽なのかわからなくなって
可笑しくなる

いつも過去だけが 未来へと
大急ぎに 駆け回っているので。