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『生活保護はじめの一歩 困窮から自立するまでの必勝法』第1章・無料全文公開

10月31日発売の書籍『生活保護はじめの一歩 困窮から自立するまでの必勝法』から、第1章「事例で学ぶ 生活保護のよくある誤解」を全文公開!

事例1「相談に行っても冷たく追い返されるのでは?」と過度に心配する

生活保護の相談窓口でご相談を受けていたときに、次のようなことをいわれたことがあります。

「いや~、かなり前に一度相談に来たことがあるんだけど、そのときすごく冷たい感じで厳しいこといわれちゃって……そのときのことがトラウマみたいになっちゃってて、相談になかなか来れなかったんだよね~」

いまはそのようなことはないと断言できますが、どうやら2000年前半~2015年くらいでは、生活保護の相談に来た方の申請をなるべくさせないように追い返す、いわゆる「水際作戦(みずぎわさくせん)」が一部の福祉事務所(地方自治体の福祉担当部局)で実施されていたようです。
「水際作戦」という言葉は、新型コロナウイルスのような感染力の高い感染症を国内に上陸させないために海外からの感染を水際で防ぐ、という意味でもともとは用いられることが多いです。ところが、生活保護の相談窓口をなぜか「水際」にたとえ、「相談」の段階を突破して生活保護の受給開始となることをギリギリで防ぐ、というたとえ話のようにいわれてしまっているのですね。

冒頭のようにいってくる相談者に対し「いまはもう大丈夫ですよ。そんなことありませんよ」とお伝えするのですが、昔は本当にひどい対応が行われていたようですね。
過去に水際作戦にあった方は「あんな思いをするくらいなら、飢え死にしたほうがマシだ」という方も少なからずいます。いくら私のほうから「いまはもう大丈夫ですよ」とお伝えしても安心していただけないケースが多いため、「私も同席して監視するようにしますね。もし役所の職員から失礼な発言が出そうな流れになったら、必ず私のほうで制止しますので安心して相談に来てくださいね」とお伝えしています。
やはり福祉事務所が一度失った信用を取り戻すことは本当にむずかしいようで、「いまはもう昔のように、相談に行っても冷たく追い返されることはありませんよ」と何度も繰り返して根気よく伝えていく努力がされているようです。

読者の皆さまも、あまり先回りして過度に心配せずに、まずは「いまの職員はどんな態度なのか品定めをしてやろう」くらいのお気持ちで、リラックスして窓口を訪ねるのがよいと思います。
なんの根拠もなく「大丈夫、大丈夫」といくらお伝えしても、やはり信じられない方もいると思いますので、厚生労働省の事務連絡をご紹介しておきましょう。

〝厚生労働省社会・援護局保護課 令和2年9月11日付事務連絡
「現下の状況における適切な保護の実施について」
(中略)
1 保護の申請権の確保に係る留意点についてこれまでも全国会議等の機会で周知し、また、現下の状況においては5月26日付事務連絡等でも改めて注意喚起しているとおり、法律上認められた保護の申請権を侵害しないことはもとより、侵害していると疑われるような行為も厳に慎むべきである。今般、面接相談時における留意点を下記の通り整理したので、参照の上、相談者が申請をためらうことのないよう、必要な配慮に努められたい。(以下略)〟

https://www.mhlw.go.jp/content/000671433.pdf

この事務連絡のなかで「保護の申請権を侵害しないことはもとより、侵害していると疑われるような行為も厳に慎むべきである」と断言してくれていて、大変心強い表現がされています。これで心配している読者の方にも納得してもらえそうですね。
過去といちばん違うことは、現在では、生活保護の相談に行き、その日のうちに申請までできなくても、「持ってきてほしいものリスト」などで次回までにどのような書類を用意すればいいかや、「申請書の用紙」を手渡してくれるので、「これに書いて提出すれば申請が受理されるんだな」ということがかたちになって見え、かなり安心できるでしょう。
せっかく役所まで行ったのに手ぶらで帰ってくると無駄足だった気がしてしまいますが、次回までに何を用意すればよいかが明確になっているリストと、記入すればそのまま提出できる申請書用紙をもらってくればプロセスが進んだ気がして、希望がもてるのではないでしょうか。

事例2「生活保護なんて受けたらもう人生おわりだ」と卑屈になる

「生活保護の世話にならなきゃ生きていけないなんて、俺の人生、もうおわりだ」

これはある相談者が生活保護の相談窓口で実際に発したセリフです。

あなたは「生活保護」に対して、どのようなイメージをおもちでしょうか。
学校で習った憲法第25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」のイメージが強いと思いますが、「生活が苦しい人」「国民の権利」「不正受給している人もいる」などのイメージもあるかもしれません。
また、インターネット上の一部の掲示板などでは「ナマポ」などと俗称され、不当に蔑視されている状況も存在しています。特定の個人や集団に対して形成される負の烙印のことを「スティグマ」といいますが、生活保護にも一部ではスティグマの問題があり、生活保護の受給・相談・申請の妨げになっています。
とくに年配者を中心に、どうしても生活保護に対してよくないイメージをもっている方も多く、ご自身が非常に経済的に困窮されているのに、このイメージに引きずられて生活保護の相談窓口に足が向かない方がいるのです。
「ご本人がどうしても生活保護を受けたくないというのであれば、手の施しようがないので何もできなくても仕方がないですよね」といわれることもあります。

これに対して私は少し違う意見です。
「料亭で板前をしていて給料は80万円だった」という相談者Aさんが「もう半年以上、仕事が見つからなくて生活に困っているので、金を貸してくれ」と来庁されました。詳しく話を聞いてみると、「時給換算すると最低賃金レベルになってしまうキッチン担当の求人はある」といいます。しかし「俺は料亭で板前をしていた男だぞ。給料は80万円だったんだぞ。いまさらバイトみたいな仕事で働けるか、冗談じゃねぇ」といいます。
Aさんは「自立相談支援機関」に相談に来た方で、そこの相談員さんが「結局、何か月かは生活保護を受けなければ、もうどうにもならない」と判断し、生活保護の相談窓口にわざわざ同行して来ているのです。しかし、Aさんは状況がまったく見えていません。2時間半ほどAさんの話(言い分)を聞いたところで、私も堪忍袋の緒が切れてしまいました。

「料亭、料亭っていったって、その料亭なんてとっくの昔につぶれてしまって、もう営業してないじゃないですか。そこ以外にこの街に料亭なんてないし、現実的には月給80万円で板前を雇うところなんて、もうないですよ。あなたもこの現実はわかってるんですよね。わかってても認めたくないから、料亭だとか、板前だとか、月給が80万円だとか、いつまでも夢みたいなことをいってるんですよね。いい加減に目を覚ましたらどうですか。月給20万円で居酒屋のキッチンをやる、いや、やらせてもらえる職場を探す。50歳をすぎたオジサンには夢のような勤務条件ですよ。これだけ妥協しても仕事なんてなかなか見つからないですよ。せめて仕事が見つかるまで生活保護を受けましょうよ。あきらめて現実を見て、生活保護を受けながら月給20万円の仕事を探せばいいじゃないですか。生活保護を受けながら働いて自立できるようになれば、10万円の給付金も出ますから。東京へ就職活動に行って、また料亭の板前の仕事を探したらいいじゃないですか。ごちゃごちゃグチばっかりいって、何も動かないで、女性の相談員さんを困らせてるのはダメですよ。生活保護の申請なんてイヤなことばっかりだけど、どうしようもないじゃないですか。いまのあなたは3日でおにぎり1つしか食べてなくて、そんなガリガリに痩せてて、飲食店は体力勝負なんだから勤まるはずがないと思いますよ」

と、ここまでいったところで、黙って聞いていたAさんがキレました。

「冗談じゃねえよ、生活保護なんて頼んじゃいないよ。金が貸せないならそういえよ、生活保護の世話になんかなんねえよ。ふざけんなよ、こんなとこ二度と来るかよ」といい、バン! と机を叩いて相談室を出ていってしまいました。

幸い、Aさんにはこれまで相談に乗っていた相談員さんがついているので、これっきりになって飢え死にしてしまうことはないと私は考えていました。
予想どおり1週間後に再度来庁し、「仕事が見つかるまで生活保護を頼む」といってピョコリと頭をさげたのです。
「わかりました、急いで手続きしますね」と伝え、そのときAさんが持参していた書類だけで生活保護の申請をその場で受理しました。

その後、Aさんが居酒屋のキッチンの仕事を見つけて働きはじめて生活保護を卒業しました、という話ならキレイだったのですが、ある部位にガンが見つかり長期入院となりました。
とくに自営業の方に多いのですが、国保に加入せず、元気だからと病院にも行かず健康診断もせず、という状態で生活保護を受給すると医療費が全額無料になるため、軽い気持ちで病院に行ったところ、あれよあれよと悪いところが見つかり即入院となったのです。

Aさんを「本人が生活保護を受けたくないというのであれば仕方がないですよね」と支援の手を放していたら、どうなったと思いますか?
もしかしたら「孤独死して発見が遅れご遺体が傷んでしまって……」といったことになっていたのではと思うと、ゾっとしてしまいます。 

事例3「若くて障害がない私は受給できないに違いない」と決めつける

生活が苦しくて役所の生活保護の相談窓口に相談に行くと、「若いし、健康だし、働けるんだから、生活保護よりも就職活動をがんばってみてください」などといわれ、生活保護の申請ができずに追い返されてしまうことがあるようです。
こうしたときに引っかかったのが「稼働能力の活用」という問題です。生活保護の申請を受理しなかった役所は、「稼働能力の活用」が十分になされていないと判断したと考えられます。
私はこのような役所の態度には問題があると考えています。まずルールではどうなっているのかを確認してみましょう。

生活保護法第4条では「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」と定めており、「能力」を活用することが保護の要件であるとされています。
では、「能力」の最大のものである「稼働能力」の活用(自ら働いて収入を得る力)の意義ですが、通達などで次のとおりとされています。

〝厚生労働省社会・援護局長通知 第4
1稼働能力を活用しているか否かについては、①稼働能力があるか否か、②その具的な稼働能力を前提として、その能力を活用する意思があるか否か、③実際に稼簡能力を活用する就労の場を得ることができるか否か、により判断すること。(以下略)〟

『生活保護手帳2024年度版』P271(中央法規)

また、この記述について、厚生労働省所管の審議会の資料では次のとおりとなっています。

〝例えば求職活動を行っていても現実に働く職場がない場合には保護を受けることができ、よって、申請時において、単に稼動年齢層であるのに就労していないことをもって申請を却下することは適当ではない。(以下略)〟

社会保障審議会-福祉部会 生活保護制度の在り方に関する専門委員会

第14回(平成16年7月14日) 資料1https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/07/s0714-3a9.html

いかがでしょうか。冒頭の「若いし、健康だし、働けるんだから生活保護よりも就職活動をがんばってみてください」という態度は、上記の①だけを問題にして、②③については検討していないため、適切とはいえませんよね。

例として、Bさんは心身ともに健康で①を満たしていたとしましょう。
②の稼働能力を活用する意思もあり、熱心に就職活動を行い、数多くの面接を受けています。しかし、恥ずかしがり屋のBさんは面接が苦手で、いつも不採用になってしまいます。そのため「③就労の場を得る」ことができない状態になってしまっているのです。

さて、Bさんは「稼働能力の活用」を行っているでしょうか?

私は十分に稼働能力を活用していると思います。現状でのBさんは、就職活動をがんばっているのに不採用が続き収入が得られないので貯えが底をつき生活できなくなった、ということですから、一時的に生活保護を受給することもやむを得ないと考えます。
ただし、預貯金が一定額(たとえば10万円程度)以上ある場合は、「住居確保給付金」などの制度の活用が先に検討されることがあるでしょう。
Bさんに限らず、この問題のポイントは「稼働(働くこと)の意思」にあると考えています。

極論をいうと、相談に行った役所の窓口でいままさに嘱託職員を募集していて、採用担当者から「5分で書ける履歴書をいまここで書いてくれれば、すぐに面接しますよ。合格ならあしたから働けますよ。応募してみますか?」といわれたとき、「はい、お願いします」といえるかどうかです。
ここで「いや~、私コミュニケーションが苦手なので、お客さんと対応する仕事はやりたくないんです」などといってしまうと、「稼働する意思がない」とみなされてしまいます。やや極論がすぎましたが、考え方としてはこのとおりです。

日本には素晴らしい憲法があり、職業選択の自由がありますから、基本的にはどのような職業に就くかは本人の自由ですが、生活保護を受給しようとするときに職業選択の自由が無期限かつ無制限に容認されるかというと、そこはまたむずかしい議論があります。
前節で出てきた元板前のAさんの例を参考に考えてみてください。

事例4「別居してるけど、親も兄弟もいるから受給できない」とあきらめる

まずは、よくある次のような例から考えていきます。
生活保護の相談窓口の電話が鳴ったので出てみると、次のような会話になりました。

相談者「すいません、私、働いていなくてお金がないので、生活保護を受けたいのですが」
役所「そうなんですね。これまではどうやって生活していたんですか?」
相談者「いや、なんとなく貯金を使って暮らしてました」
役所「そうなんですね。働いていたとき、最後に給料をもらったのはいつですか?」
相談者「いや、働いたことはないんですけど……」
役所「あ~、そうなんですね。いまはひとり暮らしですか?」
相談者「いえ、1人世帯です」
役所「そうですか~、いま住んでいる場所のひとつの屋根の下には、何人が暮らしていますか?」
相談者「ひとつの屋根の下って、どういう感じですか?」
役所「あなたさまのことではないのですが、たまに一軒家でご両親と同居している方が住民票だけ自分と両親とを別にして、私は単身世帯だから自分ひとりで保護を受けたいといってくる方がいまして」
相談者「それだと保護は受けられないんですか?」
役所「いえ、保護は受けられますが、ご両親とあなたと3人世帯での保護になります」
相談者「それだと意味がないんです。私ひとりで受けられないんですか?」
役所「お電話だけで正確なことはいえませんが、生活保護では『世帯』というものを保護受給の単位と考えていまして、いっしょに住んでいて財布が同じメンバーは住民票の形式がどうなっていようと『1つの同じ世帯』と考えるんです」
相談者「ネットには、住民票を別にすれば別世帯扱いになると書いてありましたよ」
役所「そのネット情報は、半分正解で半分不正解ですね。市町村が提供する福祉サービスの多くは住民基本台帳に記載されている世帯単位で実施されますので、その意味では正解です。しかし、生活保護は常に『実態』で認定していきますので、残念ながら不正解ですね」
相談者「そんなのおかしいじゃないですか」
役所「おかしいかどうかはわかりませんが、例で申し上げると、DV被害に遭っている女性とお子さんが別の町からこの町に避難してきたときに、事情が事情なので住民票を動かせないケースも多いのですが、『住民票が動いてないからあなたは市民ではありません。住民登録のある町に保護申請してください』とはいえないじゃないですか。実態で認定するっていうのは、そういう意味ですよ」
相談者「じゃあ、私はどうしたらいいんですか?」
役所「その質問がどうしたら保護を受けられますかという意味なら、いまご両親と同居していて生活できているあなたに対してアドバイスはありません。しかし、たとえば、お父さんからひどい暴力や虐待を受けていて、いまの家を逃げ出したいけど、ひとり暮らしをしても生活できる見込みが立たないから実家を出られないんです。実はメンタルクリニックにも通っていて、そこの先生も『親から自立してひとり暮らししたほうがよい』と助言されているんです、ということであれば、これは違う問題ですから対処する必要がありますよね」
相談者「だいたいそんな感じですけど、そうだったら、どうしたらよいですか?」
役所「今回のようなケースは、どこかに行って相談しても、たらい回しにされそうなケースなので、誰かひとり、あなたにとって担任の先生のような存在を決めたほうがいいかもしれませんね。こちらで担当してもいいのですが、ご両親に生活保護の相談をしていると伝えると強く反発されそうなので、まずは『自立相談支援機関』という相談窓口がありますので、そちらをご紹介しますね(以下略)」

この事例は要するに、実家に引きこもっているニートが親に内緒で生活保護を受けて小遣いを増やしたい、という相談内容で、わりとよくある相談です。
この例はネットで調べた「住民票的に別世帯にする」という、こざかしいテクニックを駆使した相談というか、グチというか、親からキツイことをいわれるたびに電話してくる「常連さん」的な方もいるような話ですから、箸にも棒にもかからないのですが、別居しているケースならどうでしょうか。
実家の斜め向かいに古い単身用のアパートがあり、息子がそこで引きこもってニートをしている、となると生活保護的には判断が逆転します。

例として、高校を卒業してから10年間、息子がいつか働きはじめて自立してくれると信じ、実家の近所でひとり暮らしをしている息子に、月に15万円ずつ仕送りを続けてきたところ、親世帯も年金生活のうえに父親が介護状態となって自宅を出て施設入所することになり、経済的にこれ以上息子に仕送りを続けることができなくなったとしましょう。
このままでは息子が飢え死にしてしまうと、両親と息子がそろって生活保護の相談窓口に来た場合、これは追い返すのは無理に近いですね。
息子が働けるのか、働けないのか。働けないならその理由は何か。障害なのか、病気なのか、パーソナリティなのか、医療機関の受診はあるのか、などさまざまな確認すべき事項はありますが、息子が本当に「親とは生計が別の単身世帯」なら保護開始となる可能性も十分にあります。

この事例とは少し違ったパターンですが、子どもが同居している親の面倒を見ていたところ、要介護度が上がって施設入所となったが施設費用までは援助しきれないとなり、別居を機に仕送りを終結し、保護の申請に至る場合も多く見られます。

「親や兄弟がいるなら、その人たちに助けてもらうべきで、生活保護を受けるなんてとんでもない」という考え方も見受けられますが、生活保護制度では親族からの扶養を最優先にはしていません(夫婦と未成熟の子の親は除く)。実態は、一定以上の収入がある親族がいても生活保護の申請や受給は可能となっています。
親族から仕送りが得られる場合は、「仕送り収入」として収入認定され、保護費が減額されるのです。また、最低生活費以上の仕送り収入がある場合は、申請時は保護が却下され、受給中の場合は保護の停廃止が検討されることになります。

事例5「持ち家・マイカー・借金がある人はNGだ」というウワサを信じてしまう

 「持ち家や車をもっている人や借金がある人は生活保護を受けられません」

このようなウワサを聞いたことがないでしょうか?
このウワサが正しいか、正しくないかでいうと、「そうとは限りません」が答えです。

「持ち家」については、本当は土地と家屋で分けて厳密に考える必要がありますが、ここでは私の主観だけでざっくりした目安をお伝えしておきますと、築30年以上でその町の平均的な面積の土地家屋であれば、土地家屋を所有したままでも生活保護は開始になり、そのまま住み続けてもよい、という扱いになると思います。
これは自治体によって異なりますが、私が勤務していた自治体では、土地家屋の時価評価額が2千万円台中盤まで保有が容認されていました。
「車」については、持ち家よりも保有が容認される要件は厳しくなっていますが、車をもっているから絶対に生活保護を申請できない、受けられない、というわけではありません。

身体障害者の通院用については使用も許可される場合があります。また、保護開始後6か月以内の求職活動期間中については「処分保留」として売却までは求められないものの使用は禁じられる、という対応が多いことでしょう。
このほかのケースでは、夜勤の方などが通勤時に公共交通機関が利用できないなどの場合に容認される以外は極めて限定的に運用されています。
つまり、車をもったままで継続的に生活保護の受給が続けられるのではなく、申請時には車をもったままでもよいが、保護開始となったときに売却処分が指示される、というイメージです。

参考のケースをお伝えしておきます。現在では、パーツ取りなのか、輸出なのかわかりませんが、どれほど古くて故障している車でも数万円で買い取ってくれる業者がいることでしょう。売却して得たお金は、次回の保護費から差し引かれることになります。ちょっと厳しいですね。
「借金」については、借金をなくしてから保護を申請することは事実上不可能ですから、抱え込まずに借金があっても気にせずそのままで申請してほしいと思います。
ただし、借金に関しても、保護が開始になったあとにその取り扱いルールがあり、きちんと債務整理することが求められるのです。具体的には、法テラスに相談して自己破産し免責してもらうケースが多いと思います。債務整理にかかる経費も生活保護受給者は減免されますので、生活保護の担当者の指示に従って債務整理を進めてください。
場合によっては免責にならない債務などもあると思いますが、担当のケースワーカーに相談してみてください。実際は、債権者に自分が生活保護受給中であることを伝え、月額数千円程度の分割払いで対応してくれるようにお願いすることになると思います。多くの場合で認めてもらえる可能性が高いため交渉してみましょう。

余談ですが、生活保護が開始になったあと新たに借金することも禁止です。生活保護は「最低生活費」という決められた金額でやりくりして生活することが求められますので、借金は禁止であることはもちろん、借金した額が次の月の保護費から減額されることになるため、借りた分の返済とあわせると一気に資金繰りが悪化しますので気をつけてください。

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第1章はここまで!
続きを読みたい方は、各電子ストアにて10月31日より随時発売になります。ぜひお買い求めください。
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迷わず申請! 生活保護で自立を支援する方法を徹底解説

「自分が本当に生活保護の対象になるのだろうか……」
「申請したら家族に知られてしまうのでは……」
「生活保護を受けることで、世間から非難されたり、自分が責められるのではないか……」

そんな不安や葛藤を抱え、相談窓口に行くのもためらっている方へ。
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人にはいろいろ事情があり、好き好んで生活保護を申請しようとする人はいません。
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何も恥ずかしいことはないため、正々堂々と申請してほしいと思います。

著者は、市役所の生活保護課の係長だった「中の人」が、市役所を退職して行政書士になり、生活保護の申請をサポートする「外の人」として、この本を執筆。中の事情も外の都合も理解できる著者が、「相談に行っても冷たく追い返されるのでは?」などのよくある誤解、母子世帯・障害者世帯などタイプ別のポイント、支援者と心を開いてホンネで話せるようになる方法、など生活保護の申請から受給までの必勝法を解説します。

生活保護を申請する人も手伝う人も必見の1冊。
生活保護を申請して「しあわせ」を手に入れましょう!

【目次】

第1章 事例で学ぶ 生活保護のよくある誤解
第2章 タイプ別に生保申請の必勝法教えます
第3章 経済的支援だけではない生活保護制度
第4章 支援者とのよいコミュニケーション関係のつくり方
第5章 生保を受けてしあわせになった事例
第6章 みんなが聞きたい生活保護のQ&A

【著者プロフィール】

川田泰輔

生活保護申請サポート行政書士
元・生活保護の「中の人」。北海道旭川市役所で生活保護の申請窓口の係長として6年間で約5000件の新規申請にハンコを押してきた。現在は、生活保護申請サポート業務を取り扱う行政書士。サポートした生活保護申請の受理率は100%。老人ホームや病院などから依頼を受け、自分では申請が困難な方の生活保護申請をサポートしている。
過去に妻がうつ病になり、働きながら子育てとうつ病の妻のダブルケアをした経験がある。カウンセリングに興味をもち、産業カウンセラー資格を取得。カウンセリングマインドをもちながらの生活保護希望者との相談対応が好評で、「これまでの人生で一番話しやすかった」などの声が多く寄せられている。

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