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知っておくべき生活保護 支援の力で自立を目指す

生活保護制度は、単なる金銭的支援にとどまらず、受給者が自立を果たすための支援にも力を入れています。しかし、その支援がどのように行われているのか、具体的な取り組みがどのように進められているのかをご存知でしょうか?
 
本記事では、生活保護の支給が決まった際、福祉事務所がどのように「援助方針」を策定し、受給者の自立に向けた支援をどのように実施しているのかについて、詳しくお伝えします。また、実際にどのような「自立支援プログラム」が提供され、就労支援や生活の質向上にどんな役立ちがあるのかも掘り下げて解説します。
 
生活保護受給者の自立支援の実態を知ることが、私たち自身の社会のあり方や支援の重要性を再認識するきっかけになるでしょう。
 
※本稿は、川田泰輔・著『生活保護はじめの一歩 困窮から自立するまでの必勝法』(ごきげんビジネス出版ブランディング)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

1.生活保護とは? 制度の基本を知って自分を守る第一歩に

生活保護は、生活に困窮する人たちに対し、国が最低限の生活を保障するために設けた制度です。この制度は、すべての人が人間らしい生活を送れるよう「最低生活の保障」と「自立の助長」を柱に構築されています。単に生活費を支給するだけでなく、社会復帰や自立に向けた支援も目的としていますが、これらの支援については意外と知られていません。まずは生活保護の基本をおさえ、不安なく申請に踏み切れるような第一歩となればと思います。

生活保護制度の目的

生活保護制度の最大の目的は、「最低限度の生活を保障する」ことにあります。日本国憲法第25条では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定められており、この権利を実現するために生活保護が提供されています。生計が立てられないとき、家賃・光熱費・医療費など、生活に必要な基本費用を支援する制度として役立ちます。
 
また、生活保護制度には「自立の助長」というもうひとつの目的もあります。生活の困窮をただ金銭で補うだけでなく、仕事や医療、生活スキルの指導を通じて生活の再建を支援する役割も担っています。生活保護を受ける方が、やがて自力で生活を維持できるようになるためのステップも重視されているのです。

誰が生活保護を受けられる?

生活保護の対象になる条件は、基本的に「生活費をまかなえない」ことです。主な条件として、以下の3つが挙げられます。
 
1:資産や収入が不足している
所有する資産や働いて得る収入が、最低限度の生活費をまかなえない場合です。貯金・家財道具・保険などが一定額以上残っている場合は審査の対象となることもあります。
 
2:家族の支援を受けられない
親族からの経済的な支援が困難である場合も要件に含まれます。親族に余裕がある場合は支援を依頼されることもありますが、家族関係や状況により現実的でない場合が考慮されることもあります。
 
3:公的な社会保障制度では補えない
年金や障害手当などほかの公的支援制度を利用してもなお生活が苦しいとき、生活保護の対象とされます。
 
こうした条件に基づき、申請が受理されると生活保護費の支給が開始されますが、支給額は世帯の状況や居住地によって異なります。支援額が決定するまでの間は、家計の全体像や生活の実態をしっかりと把握しておくことが求められます。 

生活保護の「誤解」を解く

生活保護を受けることに対し、いまだに「恥ずかしい」「申し訳ない」という感情を抱く人も少なくありません。しかし、生活保護は納税者としての義務を果たしてきたすべての人が、必要なときに利用できる公的サービスです。生活が一時的に困窮したとき、これを使うことは決して恥ずべきことではありません。自分を守り、再び社会での生活を安定させるための「権利」として、正々堂々と利用するべきものです。
 
「生活保護を受けるとプライバシーが守られないのでは?」という心配もありますが、自治体の窓口では個人情報の管理が徹底されています。家族や周囲に知られないように配慮する制度も整っていますので、安心して相談に行くことができます。

2.生活保護に至るまでのステップ

このセクションでは、生活に困窮しはじめた人が生活保護を受けるまでの流れについて、具体的なプロセスを説明します。

①生活困窮のはじまり

職場の人事異動によって新しい仕事に馴染めず、メンタルの不調をきっかけに退職したケースを想定します。この場合、まずは年次有給休暇の取得や、会社に有給の病気休暇制度がある場合は活用、さらに傷病手当金の受給など、休養と回復を図る選択肢が考えられます。しかし、体調が完全に回復する前に退職を余儀なくされる場合も多く、退職後は給与の支給も止まるため、家賃・携帯料金・水道光熱費などの生活費を一時的なキャッシングで凌がなければならないこともあります。

②第1のセーフティーネット

収入が途絶えたことで、まず「失業手当(雇用保険基本手当)」の受給を検討します。ただし自己都合での退職の場合、約2か月の給付制限期間があるため、支給されるまでの生活費が不足する可能性が高く、対策が必要です

③各種支援制度

生活を支えるためには、支出をおさえる支援制度も活用できます。メンタル不調で医療機関に通っている場合は、医療費の負担が1割になる「自立支援医療(精神通院)」の利用が有効です。通常は3割負担ですが、手続きを行うことで負担が軽減されます。また、税金や保険料の支払いが難しい場合には、支払い先に連絡を入れ、支払猶予や減免措置の相談をすることで対応が可能です。

④第2のセーフティーネット

生活困窮者自立支援法に基づく「住居確保給付金」や「生活福祉資金貸付制度」も利用できます。住居確保給付金は家賃補助として最長3か月間(延長可能)支給されるため、生活保護申請前に試みるべき制度です。まずは自治体の自立相談支援機関に相談してみましょう。
 
これらの制度の活用順序は以下のとおりです。
 
在職中に活用する制度(有給休暇、傷病手当金)
支援制度(自立支援医療)
第1のセーフティーネット(失業保険)
第2のセーフティーネット(住居確保給付金)
最後のセーフティーネット(生活保護)

⑤生活保護の相談

第2のセーフティーネットを使い切ったにもかかわらず、生活困窮が改善しない場合には生活保護の相談を行います。まず電話相談を行い、必要書類を確認後に市役所で面談を受けます。場合によっては他の支援制度の利用を提案されることもあります。

⑥生活保護の申請

生活保護が適切と判断された場合、申請に進みます。申請が必要とされる場合には書類の準備などを行い、たとえば以下のようなケースで調整が必要です。
 
退院後に申請する場合:入院時には生活保護が不要でも、退院後の生活費が不足する場合、退院日を決めて申請手続きを進めます。
 
所持金がある場合:現在の生活費をまかなえる程度の預貯金がある場合には、それが減少してから申請に移ることもあります。

⑦生活保護の受給開始

相談と申請を経て生活保護が開始されますが、保護開始時に条件がつく場合もあります。たとえば、生命保険の解約指示が出されるケースや、自動車の一時保有が認められる場合があります。

3.自立支援のしくみと給付金制度

生活保護の支援計画と自立の助長

生活保護は、受給者が最低限度の生活を保障されるだけでなく、自立に向けた支援が求められます。福祉事務所は、各世帯の状況を詳細に把握し、その課題に応じて「援助方針」を策定します。この援助方針は、生活保護の実施機関として、受給者が抱える課題を解決するための指導指示や支援計画を具体的に示すものです。
 
まず、生活保護が開始されると、福祉事務所の職員は訪問調査や関係機関との調査を通じて、受給者の生活状況を把握します。これに基づいて、受給者の自立に向けた課題が分析され、個別に対応する「援助方針」が策定されます。この方針は、本人に説明され、理解を得たうえで実行に移されます。
 
援助方針の策定においては、「最低限度の生活の保障」と「自立の助長」の2つの要素が重要視されます。具体的な目標設定としては、長期的な援助目標を掲げ、それに基づき短期的な援助目標を定め、その後に実行される援助内容が明確化されます。このように、生活保護は単なる保護費の支給にとどまらず、自立に向けた支援を計画的に行う重要なプロセスが含まれているのです。

自立支援プログラムと就労自立の支援

生活保護の目的である「自立の助長」は、とくに重要な支援分野となっています。生活保護を受けている人たちは、問題が多様化・複雑化していることが多く、支援の範囲も広がりを見せています。これまでのケースワークでは対応が困難な場合もあったため、平成17年度からは「自立支援プログラム」が導入されました。このプログラムの目的は、受給者が社会復帰し、経済的に自立できるようにすることです。
 
自立支援プログラムは、以下の3つの主要な自立をサポートします:
 
経済的自立:就労準備支援プログラム。就労に向けたスキルや準備を整え、仕事を得られるよう支援。
日常生活自立:入院患者退院支援プログラム。入院していた人が社会に復帰できるよう支援。
社会生活自立:居場所づくり支援プログラム。社会的な孤立を防ぎ、安心できる場所を提供。
 
生活保護を受けている人が就労によって収入が増加し、生活保護が廃止となった場合には、「就労自立給付金」が支給される制度も整っています。これにより、受給者は新たな生活に移行しやすくなります。具体的には、単身世帯には最大10万円、複数世帯には最大15万円の給付金が支給され、安定した生活を支える一助となっています。
 
このように、生活保護制度は受給者の自立を支援するために多角的なプログラムを提供しており、生活保護が単なる支援の継続にとどまらず、社会復帰と自立を目指した支援へと進化していることがわかります。

関連書籍

『生活保護はじめの一歩 困窮から自立するまでの必勝法』
著・川田泰輔/ごきげんビジネス出版ブランディング/発売:2024年10月31日

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