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パン職人の修造135 江川と修造シリーズ パン職人NO,1決定戦 Shapen your five senses


「観客の皆さん、テレビをご覧の皆さんこんばんは安藤良昌です。NNテレビが総力を挙げてお送りするパン職人頂上決定戦のお時間が始まりました!パン職人の皆さんには何時間も前から戦いを繰り広げて頂いておりましたが、その中から選ばれた3人のシェフと3人の助手の方々に並んで頂いています」

画面にはそれぞれの経歴と名前が流れた。



江川はそれを見ながら「これって誰が勝ち上がってくるかわからないのに20人と助手の20人分が用意されていたの?」と口をポカンと開けたまま見ていたが自分の顔が映し出されて慌てて口を閉じた。

「それではこれまでの試合の様子を順にご覧頂きましょう」

まず1番目の試合では、各選手が生地を作って分割している所が映し出された、その後江川達が出て行って、那須田と佐々木が生地を計量している所が映し出された。

「成程、選手の皆さんが出た後にブーランジェリータカユキの那須田シェフと北麦パンの佐々木シェフが一つ一つ計っていったんですね、お疲れさまでーす」

画面にその時の3人の点数が出た。

鷲羽が9点、江川が7点、佐久間が7点

あ、これってまだ勝敗が決まった訳じゃないんだ、これから点数が出るんだ。
もう負けたと思っていた江川はほっとした。

安藤が内訳を説明した「この時の10人の合格者は全員※焼減率を計算していました、私もよくわかっておりませんが、※バゲットの焼減率が約22%として計算して焼き上がりが250gになるように計算した者だけが合格だそうです。皆さんの作ったパンは北麦パンの佐々木シェフが成形、焼成してくれましたーっ!」そういって手で指した方から佐々木が200本程のバゲットを台に乗せて運んできた。


今佐々木が運んで来たそれが目の前にある、焼き立てのバゲットだ。

江川は自分の読みが合っていてまたほっとした。

「次に2番目の試合の説明を行いまーす。秤無しで100g分割は五感を研ぎ澄まして手を動かす、正確さとスピードを競い合うのです!正解は98個!中には100個ちょうどじゃないかと100個にするために分割したものから少しずつ足した選手もいましたが、あー残念!惜しかったですねえ」

点数がでた。

鷲羽10点、江川10点、佐久間10点

「こちら文句無く勝ち上がってきた皆さんという事で満点です!流石です」

その時の生地は那須田が成形して凄い量の小型パンの焼き立てを運んで来た。

圧巻のバゲットとブールを見てワーッと満場の拍手が沸き起こった。

「こちら皆さんへのお土産になっておりますのでお帰りには忘れずにお持ち下さい!」と、安藤がパンを指してから説明を続けた「さて、1回目は経験値、2回目は正確さとすると3回目は体力勝負です」

モニターに各選手が生地をケースに移している所が次々に映されていく。

「いやいや凄い迫力ですね、こちらの判定は時間内での生地の移し方もそうですが、ボールに生地が残っていなかった方が合格だったそうです。

江川はそれを聞いて「そうか、普段はナイフでカットしながら生地を移すけど今回は時間がないから手に巻きつけるように全体を持ち上げたんだ、その後カードでひと回し生地を取って行ったのが良かったんだ」そう思っていると、点数が出た。

鷲羽10点、江川6点、佐久間9点

今度はベッカライボーゲルネストの鳥井が食パンを焼きあげて来た。

会場にそれぞれのパンのいい香りがする。
自分たちが持って帰るので拍手にも熱が篭る。

スタッフが手分けしてお土産のパンを袋に入れだした。

ーーーー

ところで

大坂は何日か前に修造から試合会場で江川の手助けをする様に言われていて、なんだか凄く気持ちが高揚していた。

一大事だ

人生の大勝負だ

実際自分が失敗して江川の足を引っ張る訳にはいかない。
そこで江川に黙って色々と練習を重ねていたが中々上手くいかない。

その日
立花は仕事終わりにいつもの町中華屋に来ていた。

食べ終えた頃、大坂が入って来た。

「大坂君」

「あ、立花さん」

大坂は立花の隣に座ってフーッとため息をついた。

「どうしたの?なんだか疲れてない?」

「それが、、内緒だけど修造さんから『パン職人NO.1決定戦』って番組で江川さんが勝ち進んだら俺が助手をする事になって」

「何の助手をするの?」

「タルテイーヌらしいんです。だから俺野菜の切り出しとか練習してるんですが、一体どんな物を作るのか検討もつかなくて」

「まだ何を作るのかは分からないのね」

「はい、現場で作ると思います。江川さんも何も知らされないで出場するんです」

「じゃあタルテイーヌの作業を一から練習しましょうよ。まずは切り出しやソース作りからね」

「えっ?しましょうよって事は立花さんが一緒にって事?」

「良いわよ、以前レストランで働いてたから江川さんの役に立てるかも」

江川さん?と思ったが喜んで手伝ってもらう事に。

急に食欲が湧いてきてチャーハンをモリモリ食べている大坂を立花は微笑ましい目で見ていた。


次の日から就業後に2人でいろんな調理の練習を開始する。

「ソースってどんなのがありますかね」とパプリカを同じ太さにカットする練習をしながら聞いた。

「クリームチーズにナッツを使ったソースとか、アボガドやリコッタチーズベースの物はどうかしら。フルーツベースもいいわね」と何種類かのソースを2人で練習する。

「タルテイーヌってね塗ったものって言う意味があってね、そもそもこれに使うのは粘性っていうか塗りやすい物を使うの。だからソースもパンに水分が染み込みすぎたり乗りにくかったりしない物を選ぶのよ」

「はい」

「今日は煮詰める練習をしましょう。水分を飛ばして濃厚な風味を出すの」

そう言いながら立花の脳裏にかって同じ職場で藤岡に同じように仕事を教えていた時の事が蘇り、慌てて蓋をする。一瞬目を瞑った後、手鍋を木杓子でかき混ぜる手を早めた。

次の日も切り出しやソース作りの練習する。

「今日はフルーツソースを練習してみましょう」

「甘いんですか」

「香りが良くて肉料理にも合うのよ。オレンジやキウイ、りんご、レモンとかの色んなものがあるわ」

「江川さんはどんなものを作るんですかね。勝ち進んだらの話ですけど」

「先にパターンを考えておくのも良いわね、食材に合わせてソースを提案したら良いかも」

「それは良いですね、俺パターンを考えてみます」


つづく


※焼減率=焼成時に(パンを焼くと時に)水分が蒸発するなどしてパンの重量が減る率の事。バゲットの焼減率は22%、計算の方法は(焼く前の生地の重さ−焼いた後のパンの重量)÷焼く前の生地の重さ×100

このお話では焼き上がった時が250gでというお題だったので、焼減率を計算した者の中からより正確だった者が勝ちだった。

250×1.22=305

一般にバゲットの重さは300〜400g
フランスでは350gと決まっている。
計算上は287gに焼き上がるのが理想。
ここでは分かりやすいように250gに。

※北海道の北麦パンの佐々木は修造がパン職人の選考会で戦った相手
新潟のフーランジェリータカユキの那須田は修造の憧れのシェフだ
修造は知らなかったがある人物によって皆裏で繋がっている。

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