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永遠に叶わない

思い立って 硝子戸をみる

なにか いますか

みている わたしが いるわけだから
硝子にまた
わたしがいるんだろう

どこ 
みつからない

あるのは 血の染みたぼろきれ

  母さんが死んだ朝にぬがせたよ
脇がほつれた シャツ
弱った皮膚から 染み出した 最後のまなざし

渓谷を みつけたんです
林の向こうに 音がしたから
そこでは 露草の青は 蛍の気ままさで

出鱈目な 季節をおおらかに笑う

返してよ

硝子戸
そこに いるなら
かえしてよ
生まれてからいちども
自分のものになったことがない

だけどそれを
返して下さい。

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