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ショートショート「午前7時30分」
午前7時30分、毎朝同じ時間に僕はこのベンチに腰を掛ける。
学校に行くまでの15分間、このベンチは僕の特等席になっている。
自然公園を名乗るだけあって、この公園は都内にしては中々の広さを持っている。林の広がる公園内には遊歩道や広場が設けられていて、毎朝この時間はおじ様やおば様がランニングやジョギングに励んでいる。
そして恐らく今公園にいる中で最も若いであろう僕は、しかし体を動かさずベンチにふん
短編小説「夏の影」・前編
今年も夏がやってきた。刺すような日差しは肌を焦がし、湿度と気温が意識を茹でる。必死に鳴いている蝉の声にも耳を傾けてやる余裕はない。
こんな季節なってくると思い出すことがある。あまりいい思い出とは言えないが、かといって忘れたい記憶というわけでもない。ただ思い出すたびに、こんなに暑く苦しい夏でも頭が冷め、正気を取り戻す。そんな記憶である。
その頃の俺は、新入社員として覚えたくもない仕事を必死に覚え