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トヨタ流開発ノウハウ|設計者のためのテクニカルマガジン

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トヨタの設計には、競争に勝ち残れる考え方やノウハウがあるのです。このコラムではそれらを1つひとつ紐解(ひもと)いていきたいと思います。
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#設計

現状の設計マネジメントの課題とは?|トヨタ流開発ノウハウ 第36回

◆設計マネジメント さまざまな企業で設計マネジメントに困っている管理職が多くいます。 その原因は1つです。 設計マネジメントを定義(一般的なマネジメントではなく、開発部門や設計部門に特化したマネジメント方法です)しておらず、設計者から管理職になった途端、会社から「マネジメントをしなさい!」と役割だけを追加されているからです。 その結果、管理職毎にマネジメントの方法が異なり、部下の成長を妨げてしまうばかりか、新製品の創造や新たなシステムの導入も日常業務に追われて、できなく

今一度DRBFMの在り方を考える|トヨタ流開発ノウハウ 第35回

皆さま、あけましておめでとうございます。 今年1年間も設計者の皆さまにお役に立てる情報を発信していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ◆DRBFMの在り方 さて、2025年1回目の記事は、約20年前に開発されたDRBFMの在り方について、再度考えてみたいと思います。 DRBFMは2001年にトヨタ自動車が開発し、さまざまな業界で使用されるようになってきました。 最近では半導体業界(装置メーカーも含む)でもDRBFMが使用され、多くの製造業に使用され

設計者が考えるべき再発防止|トヨタ流開発ノウハウ 第33回

前回の記事の続きになりますが、問題が発生した場合(設計での机上計算や評価での問題)、まずは現状分析を実施しながら、要因解析(なぜなぜ分析)を実施しなければなりません(その要因解析については、前回の記事をご参照ください)。   要因解析を実施後、要因と真因について対策を立案しなければなりません。それでは対策立案の考え方を3つ紹介します。 ◆暫定対策 ・要因解析の「要因」についての対策の考え方 要因については恒久対策も検討しなければなりませんが、まずは問題がないように処置

設計者に最も必要な能力|トヨタ流開発ノウハウ 第32回

◆設計者の能力 皆さんは、設計者に最も必要な能力は何だと思いますか? 製図能力でしょうか?構想能力でしょうか?もちろんそれらの能力も重要だと思いますが、最も必要な能力は「問題解決能力」です。 それはなぜでしょうか? 設計という業務の中では、必ず「問題」が発生します。問題がない設計はリピート製品などの設計業務がほとんどない仕事でしょう。 要求仕様などのインプット情報から設計を進めていくと、何かしらバランスを取らないといけない事項が発生します。 バランスというのは、ある

設計書の必要性|トヨタ流開発ノウハウ 第30回

私はコンサルタントとして、製造業の受注品生産企業、見込生産品企業どちらも訪問し、さまざまな設計プロセスや設計手法について触れてきました。 ◆設計者の困りごと 設計者が最も困っている内容として、設計自体に工数がかかったり、試作評価でのやり直しなど、手戻りについての悩みもありますが、やはり一番は設計のインプット段階です。 特に受注品生産企業での場合、お客様からの要求仕様が完全に決まりきる前に受注してしまい、なかなか設計に着手できない状況です。 出荷の期限だけは、決められてい

DRの裏技!|トヨタ流開発ノウハウ 第29回

◆ISO9001のデザインレビュー 製造業でISO9001を取得している企業では、設計者が恐怖するDRが存在します。 多くの企業では、DRが設計審査であり、次の工程に進んでも良いかどうかの承認行為のみに扱われています。 はたして、承認行為のみが本当に正しいのでしょうか。   それではISO9001のデザインレビューに関する記載内容を確認してみましょう。   7.3.4設計・開発のレビュー設計・開発の適切な段階において、次の事項を目的として、計画されたとおりに体系的なレビュ

設計者が実施すべきマーケティングとは|トヨタ流開発ノウハウ 第28回

◆OJTとは? 皆さんの会社ではどのような設計者教育を行っているのでしょうか? 多くの企業では設計者教育自体がほとんどなく、新入社員として入社時に教育されたあと、設計現場での実践での教育≒OJTのみになっていないでしょうか? OJTとは、「On the Job Training (オンザジョブトレーニング)」の略で、実践で指導していくことにより、知識や技術を習得していく方法になります。 このOJTのみの教育に頼ってしまっているのが、多くの企業に見られる現象です。 OJ

お客様の要求が正しいとは限らない?!|トヨタ流開発ノウハウ 第26回

◆設計改革・モジュラー設計導入での設計効率向上 設計改革やモジュラー設計導入(3DCAD導入も含む)で設計効率を向上させるということを目的とすると、やはり標準モデルの設定であったり、過去の設計内容が流用しやすいように整理していくことが近道となります。 そのような改革を進めていくにあたり、最初に検討しなければならないのは市場やお客様の要求がどのような内容で、その結果どのような製品を設計してきたかです。 この内容が企業でどの設計者でも使用できる状態になると、格段に設計効率は

設計マネジメントの在り方とは|トヨタ流開発ノウハウ 第23回

◆設計者マネジメントの考え方のポイント 皆さんは設計者をマネジメントする考え方や方法は社内で統一されていますか? また、設計マネジメントの在り方に悩んでおりませんか? 私が支援させていただいているクライアント先では、マネジメントの在り方について悩んでいる設計部門の管理職の皆さんがたくさんいらっしゃいます。 悩みは次のような声が挙がってきています。   1.年齢があがって管理職になったのはいいが、マネジメントの在り方がまったく分からないし、教育もない。 2.教育はあるが、

変化点内容に対する横並びとは|トヨタ流開発ノウハウ 第22回

◆現状の設計手法について 現状の設計の進め方の多くはモジュラー設計(流用設計)です。 ただし、標準化したモジュールを流用のみで新しい製品を創造することは難しく、必ず新しい設計要素を組み込まなければなりません。 新しい設計要素を組み込まなければならない原因は、標準化したモジュールを未来に起こるであろう市場のトレンドを全て予測し、組み入れることができていないことです。 しかし、お客様の多様化が進んだ今の市場を見ていると、全ての市場のトレンドを予測することは不可能に近いでし

設計部門の標準時間|トヨタ流開発ノウハウ 第19回

■設計の標準時間突然ですが、皆さんの設計部門に「設計の標準時間」は存在しますか? 私は、様々な製造業の企業様でコンサルタントとして支援をさせていただいておりますが、コンサルタントに転職して約10年間、設計部門内での「設計の標準時間」を聞いたことがありません。   設計の標準時間と言えば、製造部門の1つ1つの作業に対して標準時間が設けられ、その標準時間通りに生産していかなくてはなりません。 例えば自動車メーカーの完成品組立ラインは、流れてくる車体に対して、ある一定の距離が

不正から考える設計組織風土|トヨタ流開発ノウハウ 第18回

近年、自動車メーカーによる不正が多く報告され、元自動車メーカーの技術者として非常に残念に思う一方、なぜこのような不正が多くなっているのか疑問に感じています。 不正を実施してしまったのは、技術者自身ですが、不正をはたらくに至った背景から、組織的な問題ではないかと考えます。 今、技術者がおかれている状況は、多くの業務をこなさなければならず、ただ単に設計をしていればいいわけではありません。 設計業務(構想検討、シミュレーション、評価、試作、生産性確認など)に加えて、フロント

正しい技術伝承とは? Part②|トヨタ流開発ノウハウ 第17回

まずは前回の記事のおさらいをしましょう。 技術伝承の正しい方法は、「コア技術内容が誰でも使いたいときに正しく使えるようになる」ことだと考えます。 そのためには体系的に詳細内容までコア技術を正しく記載しなければなりません。 正しくドキュメントに記載する方法は次のようになります。  1.製品機能を明確にする  まずは製品に織り込まれている「機能」を明確にすることです。 設計は「機能⇒方式⇒仕様」を創造し、最終的に図面やBOM(部品表)に落とし込まれます。 現在の時代

正しい原価低減活動|トヨタ流開発ノウハウ 第1回

原価低減はメーカーとサプライヤが一丸となって実現する設計者担当者や購買担当者は、つねにコストを見ながら業務を進めていきます。そんな中、新製品開発でも全ての部品を新規に製作するようなことはありません。過去から存在する部品を必ず使用しています。流用部品を選定する時に、過去の原価実績をそのまま使用していることが多くありませんか? 「他の製品で多く使用している≒製造実績が多くある」ということは製造方法(作業方法や製造設備など)が安定的となっており、最小の製造原価で製作されているのが