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正しい技術伝承とは? Part②|トヨタ流開発ノウハウ 第17回


まずは前回の記事のおさらいをしましょう。

技術伝承の正しい方法は、「コア技術内容が誰でも使いたいときに正しく使えるようになる」ことだと考えます。

そのためには体系的に詳細内容までコア技術を正しく記載しなければなりません。

正しくドキュメントに記載する方法は次のようになります。

 1.製品機能を明確にする

 
まずは製品に織り込まれている「機能」を明確にすることです。

設計は「機能⇒方式⇒仕様」を創造し、最終的に図面やBOM(部品表)に落とし込まれます。

現在の時代では、図面やBOMを確認しただけでは、市場から要求される機能や設計者が考えた機能を全て理解することは非常に難しい状況です。

そのため、まずは製品に必要な機能は何か?から伝えなければなりません。

2.技術基準を設定する


機能を明確にしただけでは、何もまだ分かりません。
機能を具体的にどのような手段で構造化やシステム化したのかを分解しなければなりません。

さらにはその技術的内容をどのように使うのかを明確にしなければなりません。
この基準をどう設定するか?がポイントです。
 
例えば、エンジン関係の部品であれば、このように考えている場合がある。
 
■各部品のクリアランスを他の部品以上に確保する必要がある。
(重要部品関係で、不具合が発生すると、お客様への損失が大きくなるため)

  

このような考え方を部品に実現しようとしている部品に当てはめると、○○~△△mmになる。
これが基準となり、この基準で、今後の部品を設計していく。

この基準が設計者によって異なる場合がある。

それでは同じ品質の部品を設計出来ず、設計者によって品質が変わってしまいます。
そうならないためにも、この「技術基準」を作成しなければなりません。
 
実はこの基準を設定しただけでは、いずれは陳腐化してしまい、誰も使用しなくなってしまいます。
そうならないためにも常にアップデートが必要です。
 
では、アップデートはどのようなタイミングで実施するべきなのでしょうか。
下記に簡単なフローを記載します。

3.ノウハウ抽出のポイントについて


アップデートフロー


このノウハウ抽出会議が重要で、開発時に検討した資料からノウハウとなるポイントを抽出していきます。その時の考え方は下記のようになります。

 
A:開発時の変化点を確認する。
B:変化点から新たに設計した部分を確認する。
C:新たに設計した部分の考え方をまとめる。
D:変化点から新たに評価した部分を確認する。
E:新たに評価した部分の考え方をまとめる。
F:製造部からフィードバックされた情報をまとめる。
 
この時に最も重要になるのが、「変化点管理」資料です。

その開発でどのような変化点が発生し、その変化点に対しての問題を解決するためにどのような手法を使ったか、この手法の部分や、その手法を検証するのに評価した結果がノウハウとなるのです。
 
多くの企業では、この部分が設計者の頭の中に入っていることが多く、他の製品で同じような変化点が発生した場合に、同じ解決方法をとることは非常に稀です。

そのようになっては先ほどもお伝えしましたが、品質が安定しなくなってしまい、お客様が混乱してしまう可能性が高いため、企業としての信頼を失いかねません。

そうならないためにも、各設計内容に対する手法、基準を統一するためのノウハウ書を作成しておきましょう。
 
ノウハウを抽出することが出来れば、あとは新たなノウハウとして追記するかどうかを議論します。
 
最後に追記するノウハウをノウハウ書にまとめていきます。
 
ノウハウ書にまとめることが出来れば、全部門に配布し、新しい設計内容、基準を連絡していきます。
 
実施タイミングは自動車のように開発期間が長い製品では、開発終了時で問題ありませんが、開発期間の短い製品、例えば携帯電話のような場合は、全ての開発で振り返り会を実施していると、多くの工数がかかってしまうため、期間で区切ってもいいでしょう。
 
例えば・・・。
1年に1回実施するなど。
 
このようにして、ノウハウを蓄積する仕組みを構築します。
また、それを日常業務の中に取り入れなければノウハウの蓄積も出来ませんし、ノウハウ蓄積が出来たとしてもアップデートはされません。
 
必ず、「ノウハウ蓄積の仕組み」と「ノウハウアップデートの仕組み」を構築してください。


講師プロフィール

中山 聡史 |株式会社A&Mコンサルト 取締役専務 経営コンサルタント
2003年、関西大学 機械システム工学科卒、トヨタ自動車においてエンジン設計、開発、品質管理、環境対応業務等に従事。ほぼ全てのエンジンシステムに関わり、海外でのエンジン走行テストも経験。2011年、株式会社A&Mコンサルトに入社。製造業を中心に自動車メーカーの問題解決の考え方を指導。2015年、同社取締役に就任
主なコンサルティングテーマ
設計業務改善/生産管理・製造仕組改善/品質改善/売上拡大活動/財務・資金繰り
主なセミナーテーマ
トヨタ流改善研修/トヨタ流未然防止活動研修/開発リードタイム短縮の為の設計、製造改善など
※2023年11月現在の情報です

近著





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