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トヨタ流開発ノウハウ|設計者のためのテクニカルマガジン

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トヨタの設計には、競争に勝ち残れる考え方やノウハウがあるのです。このコラムではそれらを1つひとつ紐解(ひもと)いていきたいと思います。
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記事一覧

設計者が考えるべき再発防止|トヨタ流開発ノウハウ 第33回

前回の記事の続きになりますが、問題が発生した場合(設計での机上計算や評価での問題)、まずは現状分析を実施しながら、要因解析(なぜなぜ分析)を実施しなければなりません(その要因解析については、前回の記事をご参照ください)。   要因解析を実施後、要因と真因について対策を立案しなければなりません。それでは対策立案の考え方を3つ紹介します。 ◆暫定対策 ・要因解析の「要因」についての対策の考え方 要因については恒久対策も検討しなければなりませんが、まずは問題がないように処置

設計者に最も必要な能力|トヨタ流開発ノウハウ 第32回

◆設計者の能力 皆さんは、設計者に最も必要な能力は何だと思いますか? 製図能力でしょうか?構想能力でしょうか?もちろんそれらの能力も重要だと思いますが、最も必要な能力は「問題解決能力」です。 それはなぜでしょうか? 設計という業務の中では、必ず「問題」が発生します。問題がない設計はリピート製品などの設計業務がほとんどない仕事でしょう。 要求仕様などのインプット情報から設計を進めていくと、何かしらバランスを取らないといけない事項が発生します。 バランスというのは、ある

開発と設計の役割と責任|トヨタ流開発ノウハウ 第31回

◆それぞれの役割と責任 皆さんは、開発と設計のそれぞれの役割と責任や移行のタイミングなどに悩んでいることはありませんでしょうか? 実はこの2つの機能組織部門の境目を設定するのは、非常に難しく、いつまで経っても開発部門から設計部門に業務が移管できない、また、設計部門がいつまで経っても案件に着手できないなどの問題が発生しているのではないでしょうか。 製造業であれば、必ずこの問題が発生していて、開発者、設計者が業務の進め方や連携について、悩んでいるのです。 この問題を解決す

設計書の必要性|トヨタ流開発ノウハウ 第30回

私はコンサルタントとして、製造業の受注品生産企業、見込生産品企業どちらも訪問し、さまざまな設計プロセスや設計手法について触れてきました。 ◆設計者の困りごと 設計者が最も困っている内容として、設計自体に工数がかかったり、試作評価でのやり直しなど、手戻りについての悩みもありますが、やはり一番は設計のインプット段階です。 特に受注品生産企業での場合、お客様からの要求仕様が完全に決まりきる前に受注してしまい、なかなか設計に着手できない状況です。 出荷の期限だけは、決められてい

DRの裏技!|トヨタ流開発ノウハウ 第29回

◆ISO9001のデザインレビュー 製造業でISO9001を取得している企業では、設計者が恐怖するDRが存在します。 多くの企業では、DRが設計審査であり、次の工程に進んでも良いかどうかの承認行為のみに扱われています。 はたして、承認行為のみが本当に正しいのでしょうか。   それではISO9001のデザインレビューに関する記載内容を確認してみましょう。   7.3.4設計・開発のレビュー設計・開発の適切な段階において、次の事項を目的として、計画されたとおりに体系的なレビュ

設計者が実施すべきマーケティングとは|トヨタ流開発ノウハウ 第28回

◆OJTとは? 皆さんの会社ではどのような設計者教育を行っているのでしょうか? 多くの企業では設計者教育自体がほとんどなく、新入社員として入社時に教育されたあと、設計現場での実践での教育≒OJTのみになっていないでしょうか? OJTとは、「On the Job Training (オンザジョブトレーニング)」の略で、実践で指導していくことにより、知識や技術を習得していく方法になります。 このOJTのみの教育に頼ってしまっているのが、多くの企業に見られる現象です。 OJ

設計者が実施すべきマーケティングとは|トヨタ流開発ノウハウ 第27回

◆マーケティングに対する意識について 設計者の皆さんはマーケティングを意識しているでしょうか? マーケティングを商品企画部門や営業部門だけが実施するべきことだと考えてはいないでしょうか? 私が考えるマーケティングとは、製造業であれば設計者も実施するべき項目が必ず存在すると思っています。 設計者がマーケティングを実施していない場合、お客様に届く商品が設計者の思い描いた使用方法になっていない可能性があります。 見込み生産(自動車など)だけではありません。受注生産の商品に

お客様の要求が正しいとは限らない?!|トヨタ流開発ノウハウ 第26回

◆設計改革・モジュラー設計導入での設計効率向上 設計改革やモジュラー設計導入(3DCAD導入も含む)で設計効率を向上させるということを目的とすると、やはり標準モデルの設定であったり、過去の設計内容が流用しやすいように整理していくことが近道となります。 そのような改革を進めていくにあたり、最初に検討しなければならないのは市場やお客様の要求がどのような内容で、その結果どのような製品を設計してきたかです。 この内容が企業でどの設計者でも使用できる状態になると、格段に設計効率は

フロントローディングの落とし穴|トヨタ流開発ノウハウ 第25回

◆設計改革の困りごと設計改革を進めているとこんな困りことを聞くことがよくあります。 1.フロントローディング、フロントローディングって言うけど、設計時にやること増えてない? 2.設計改革をプロジェクトで進めているみたいだけど、そのプロジェクトで決まった内容を実施したとしても工数が減るようには思えない。 3.不具合対応で忙しい時にフロントローディングなんて実施できない! 4.DRBFMってめんどくさいから資料を適当に作って、DRに提出すればいいや。 皆さんは、このよ

設計開発マネジメントの教育に対する重要性|トヨタ流開発ノウハウ 第24回

◆部下の教育方法について マネジメント層の皆さん、部下の教育方法に迷っていませんか? また、設計者の皆さん、OJTという名の教育に困っていませんか? 古くから技術部門は「背中を見て、覚えろ!」や「先輩の図面を繰り返し読んで、設計の考え方を理解しろ!」なんて言われながら、教育≒OJTとしてきました。 今の時代のマネジメント層が言っていることは・・・ ・若い設計者は今までと同じOJTでは育たない。 ・一から全て教えてあげなければならない。 ・言わないと自ら進んで仕事をしな

設計マネジメントの在り方とは|トヨタ流開発ノウハウ 第23回

◆設計者マネジメントの考え方のポイント 皆さんは設計者をマネジメントする考え方や方法は社内で統一されていますか? また、設計マネジメントの在り方に悩んでおりませんか? 私が支援させていただいているクライアント先では、マネジメントの在り方について悩んでいる設計部門の管理職の皆さんがたくさんいらっしゃいます。 悩みは次のような声が挙がってきています。   1.年齢があがって管理職になったのはいいが、マネジメントの在り方がまったく分からないし、教育もない。 2.教育はあるが、

変化点内容に対する横並びとは|トヨタ流開発ノウハウ 第22回

◆現状の設計手法について 現状の設計の進め方の多くはモジュラー設計(流用設計)です。 ただし、標準化したモジュールを流用のみで新しい製品を創造することは難しく、必ず新しい設計要素を組み込まなければなりません。 新しい設計要素を組み込まなければならない原因は、標準化したモジュールを未来に起こるであろう市場のトレンドを全て予測し、組み入れることができていないことです。 しかし、お客様の多様化が進んだ今の市場を見ていると、全ての市場のトレンドを予測することは不可能に近いでし

正しい技術伝承とは?|トヨタ流開発ノウハウ 第16回

皆さんの会社では技術伝承の仕組みはあるでしょうか?   今までの日本の製造業での技術伝承は・・・ 「俺の背中を見て身につけろ!」 「図面の描き方を見て、ノウハウを盗め!」 のように、主に技術伝承される側が技術ノウハウを身につけるために、何かしらの行動をしてきました。   また、技術伝承をする側からOJTを受けるなどして、技術伝承している気になっている会社組織がほとんどです。 もちろん、今までのやり方を否定しているわけではありません。 「技を盗む!」といった考え方

ムダの見つけ方|トヨタ流開発ノウハウ 第21回

■業務のムダ働き方改革として、効率的な働き方を求められているため、様々な企業が、業務のムダを見つけて効率化に取り組んでいるでしょう。 しかし、その「ムダ」の見つけ方は本当にあっているでしょうか? 私が関わっている多くの企業では、この「ムダ」の見つけ方を感覚だけで抽出してしまっている場合が多いのです。 この感覚的な抽出の仕方では、ある人にとっては「ムダ」でないことを「ムダ」だと判断してしまい、そのムダを削減した結果、逆に効率が悪化してしまうこともあります。 そのため、あ