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編集部員の気まぐれレビュー

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学芸出版社の編集部員が、気になった本や映画、展覧会などを気まぐれにレビューします。「これを読め!観よ!」という作品の推薦、いつでもお待ちしております【毎週水曜日更新】
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#本

『本は読めないものだから心配するな』

本を読むのが苦手である。
曲がりなりにも編集の仕事をしているにもかかわらずだ。

子どもの頃は図書館の本を読み漁るほどだったが、大学に入り、専門書を手に取ると、そういうわけにはいかなくなった。小説とは違ってすらすらと読めず、理解しないと先に進めないという強迫観念にかられた。
読み終えた本を入力すると「今月は何冊読みました、1日平均〇ページ」と教えてくれるアプリがあるが、専門書には向いていないと思う

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都市で生きるとは?一一『ひとり空間の都市論』

都市で生きるとは?一一『ひとり空間の都市論』

建築家・伊東豊雄が、1989年に雑誌「新建築」に寄稿した論考「消費の海に浸らずして新しい建築はない」。この時私は生まれてすらいないが、どうやら当時の建築家社会+その界隈に、強烈なインパクトを与えた論考らしい。
たしかに、毎月コンスタントに発刊される雑誌の冒頭たった数ページの論考が、今もなおあらゆる局面で引用されるというのは、情報が横溢するこの時代には少し驚きを覚える。
伊東は「凄まじい勢いで建築が

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文を綴ることについて––––『みみずくは黄昏に飛び立つ』

これは、私が学生だった数ヶ月前の修士論文提出日、まだ空気が冷え込んでいた寒空の下大量の研究史料を返却するため向かった図書館で出会った作品である。小難しい史料を読み耽っていた時間から翻って、なんかさらっと軽い本・・・とふと棚へ手を伸ばして見つけた。

©Shinchosha

この本は小説家(川上未映子)による小説家(村上春樹)へのインタビュー集であり、新作『騎士団長』を中心に話が繋がっていく。

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