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芙蓉歌句集

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わたくしが詠みました短歌・俳句をこちらでご紹介させて頂きます。
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2019年2月の記事一覧

春雨や雲も月日も通り過ぎ

春雨や雲も月日も通り過ぎ

月日が経つのは早いもので気がつけば2月ともお別れの日ですわね。目の前にはなんとも早く3月がやってまいりましたわ。
思えば今年はお正月から、こちらの日記を含め様々な新しいことに挑戦することが出来ましたから充実した初春を過ごせたかと存じますわ。

来週には春も仲春へと向かってまいりますから、また明日から気を引き締めて花咲く月を歩んで参りたいですわね。

そう言えば、先ほど暦を見ていて気がついたのですけ

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風光る

風光る

白鳩の行く路風の光かな
芝浦の賑わう船や風光る
風光る活字の先の小川かな

伊勢参五十鈴鳴らすや二柱

伊勢参五十鈴鳴らすや二柱

わたくし普段お題に沿って俳句を考える時に「3つ」詠む癖があるのです。

これは何故かと申しますと偶数が落ち着かないという癖がありまして、そういったわけで一句では物足りず三句一組で作句を考えることがございます。

この数字の感覚はあまり人に説明しやすいものではないので困ってしまうのですけれども、わたくし奇数と偶数でしたら「奇数」のほうが何処か愛嬌があると感ぜられるのです。

そこで指摘されて気がつい

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庭椿赤や白より照る緑

庭椿赤や白より照る緑

2月26日は俳人、河東碧梧桐さまの誕生日でしたわ。

碧梧桐さまと申しますと代表的な句に「赤い椿白い椿と落ちにけり」というものがありますけれども、これは子規さま存命の頃の若い時期の作品で、その後は自由律の新興俳句を志すようになられた方ですわね。

正岡子規さまの弟子の中で高浜虚子さまと双璧を成す碧梧桐さまですけれども、その俳句は真逆の思想に向かっておりまして、例えば

「正月の日記どうしても五行で

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白粉の尚白さかな梅茶湯

白粉の尚白さかな梅茶湯

2月25日は北野天満宮さまで毎年恒例の「梅花祭野点大茶湯(ばいかさいのだておおちゃのゆ)」が開かれておりましたわ。梅花を眺めながら「上七軒」という花街の芸子さん舞妓さんに野点をしていただける行事でして、まことに趣のある京の春かと存じますわ。

なぜ2月25日なのかと申しますと、御祭神の菅原道真公が太宰府で御薨去なされた日だそうで、生前梅の花を愛された道真公の縁日として二つの意味で重要な祭典だそうで

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靴墨の擦る手や霞む鐘の音

靴墨の擦る手や霞む鐘の音

本日は七十二候「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」ということで、遠くの山々に薄ぼんやりとした霞のかかる季節になりましたわね。
「霞」は春の代表的な季語の一つで、これが夜になりますと「朧」と言葉が変化してまいりますけれども、どちらも趣きのある情景ですわ。

「霞」という言葉には、実はもう一つ「鐘霞む」という別の季語もありますのよ。

麗らかな春の陽気の中を、梵鐘の音がどこから遠くからぼんやりと聞こえ

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蛤に句を吐かせたり鳴雪忌

蛤に句を吐かせたり鳴雪忌

「蛤に秋の発句を吐かせたり」という句がございます。
これは、正岡子規さまの遺稿「闇汁圖解」というものに載っておりますの。

闇鍋という料理がありますけれども、実は歴史が古く平安時代には行われていたそうで「一種物(いっすもの)」と呼ばれていたそうでしてよ。 文壇でも流行ったらしく正岡子規さまが好きだったそうですわ。 どなたかが大福を鍋に入れたりという記録まで詳細に残っておりますのよ。

その総じて下

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春暁や憂き世知らせる木戸の音

春暁や憂き世知らせる木戸の音

しゅんぎょうや うきよしらせる きどのおと

本日2月21日は明治5年に本邦初の日刊新聞「東京日日新聞」が創刊された日だそうでしてよ。今となりましては当然のように朝晩お家まで届けていただける新聞ですけれども、新聞配達が始まったのは明治8年のことだそうですわ。

当時は各新聞紙の創刊が続きまして、例えば東京日日新聞にはよみがなは振っていないかったのですけれども、2年後に創刊されました讀賣新聞のほうは

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軒先に梅一輪の迎えかな

軒先に梅一輪の迎えかな

軒先に梅一輪の迎えかな
瓦斯燈の照らす梅花や夜の雨
白梅の一輪流るる雲一つ

肩濡れて添ふる手ぬくき春の雨

肩濡れて添ふる手ぬくき春の雨

ごきげんよう。
本日2月19日は二十四節気「雨水」ということで、暦通りと申しますか傘の手放せない、春の移り変わりやすい一日になりましたわね。

「雨水」という季節は雪から雨へ――寒さが和らぎ土が湿る頃のことを示しているそうですけれども、確かに今日の雨には冬の身に染みるような寒雨とは異なりまして、どこか春の訪れを感じる趣があったように存じますわ。

七十二候に目を移しますと、今日からは「土脉潤起(つ

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