
戦争をエンターテインメントにしろ
注意としては映画が人を選ぶ。味方であれ敵であれ、暴力は即否定する向きの人には向いていない。そしてぼくもそれを否定しない。いついかなる場合でも暴力を受けたとて暴力で返したら同じである、という意見が存在することを尊重する。ぼくも同調するケースもあれば、しない場合もあるだろう。
映画が人を選び人も映画を選ぶが、とにかくクソ以下のカス野郎が一匹出て来、そいつの「活躍」という胸くそ芸に付き合わねばならないターンが一定あることを覚悟しなければならんだろう。それが人を選ぶという意味だ。
自衛をしなければならない。戦争映画とは斯くもカスが栄華を極めるさまばかりがこれまで映し出されて来たが、イングロリアス・バスターズは違った。もしかしたら違わないのかも知れない。その理由はぼくがクソ薄っぺらい理解をこの映画に対してしているだろうから。が、ある程度は違うだろう。
なんといってもブラッド・ピットだ。ぼくが特段ブラッド・ピットが好きなわけじゃないんだが、ブラッドが出てきた映画でだめだったものがないとなると、仕方ない。ウォーなんたら戦争は経済だみたいな題名の映画にも、かなりステレオタイプな役でブラが出てき(しかもお爺さん役だった)、なんかブラッドの割に不完全燃焼感すらあったが、トータルでみたらそんなだめな印象は持ってない。
そしてぼくは映画を見る時に一切の事前情報を断って見るから、エンドロールで初めてこれを撮ったのがクエンティン・タランティーノだと知ってなるほどと腹の底から思えた。
ワンス・アポン・ア・タイムインハリウッドについてぼくは色々書いたが、そのすべてが称賛である。以下にいっそブラ関係の映画の感想を挙げる。
ワンスア
ウォー・マシーン
あとウォー・マシーンよりちょっとブラの生き方にスポットを当ててほしかったあれ
他にもあったんだが、ひとまずはこれらでいい。興味があれば下のマガジンとかいう謎の機能からぼくが書いた映画の感想をいくらでも探せる。でもそんなもんを見るのは時間の無駄だ。
ワンスアではブラがまさに殺戮の天使でいられた。イングロリアス・バスターズより後に作られた映画だろうが、これも実は歴史を元にしているという点でタランティーノの中には歴史的事実を正しい方向へ歪ませて自分の媒体で表現することで、明るい未来を書こうとしているのか?と今回思った。
ワンスアポではかつて惨殺された著名な女がブラの暴力の前にその惨殺者どもが逆に惨殺されることで生き延びれたという話だ。ぼくはその歴史を知らんかったが、上記の通り圧倒的な救いようのないブラピの暴力を楽しんだ。救いようのない未来を与えにきたクソどもに同じことをしてやっているだけだ。だからエンターテインメントである。
そして、まさにその暴力が遠慮なく叩き込まれる爽快感こそがぼくの薄っぺらい理解だ。
ナチスを皆殺しにしていく。中小規模のカタルシスをブラが起こし、演じているわけだ。
ということを理解してもらえれば伝わると思うが、ぼくはこの通り戦争を礼賛などしていない。戦争映画といえば戦場のピアニスト、プライベート・ライアン、アンネの日記……もう凄惨なナチカスのクソ行為ばかりが描かれ、ああいうごみ虫どもが気持ちよくなっているさまを見なければならない。そんなもん教訓でしかなく、エンターテインメントになるわけがない。
映画とは一定のエンターテインメントから絶対に残り滓ほどでも教訓が残るものではあるとぼくはこの場所で感想を話すようになったときにまず言っていたが、それ系の戦争映画とはもはやエンターテインメントじゃなく、すべてが反面教師つまり教訓なわけだ。教訓の比重が馬鹿でかすぎるわけだ。といいますか教訓しかない。自ずから飛び込むわけではない「学び」とは、いついかなる場合でも苦痛に満ち溢れるものだ。
その連綿と連なる戦争映画のパターンを、イングロリアス・バスターズではぶち斬ったのだろう。まさにエンターテインメントだ。ただしめちゃくちゃぐろいので、ぼくは目をそむけた。
惜しむらくはこの映画が続く間永久に続く根底のカスがガチ目に最悪な目に遭うところをオードブルで感じたかったのだが、そんなん言わずともわかるっしょ?とタランティーノは言っているのだろう。かつ、そのかすごみ虫が中途半端に小物であり、The man who sold the world的な不完全燃焼感をブラピ始めぼくら見る側にも与えてくるあたりも、まさに狙い通りだったのか。クエンティンは何も答えてはくれない。
最後に
タランティーノは思ったことだろう。「どう思われようとこの映画を、どんな手段であろうと自らのちからで見れるだけの知能を持った生き物なら、こんな馬鹿で阿呆でクソくだらない戦争などという無意味な行為をしようなんて生涯思うわけがないだろう、最低限、それぐらいはこの映画を好きになろうとならなかろうと思ってくれるだろう。つまりそれこそがこの映画が書く戦争行為をエンタメとして消費してもらうってことだ!!」と。
残念なことに、それがわからないクソ以下の知能のゴミが数国にはいたようだ。
2009年のタランティーノは何を思う?
いいなと思ったら応援しよう!
