Smells like 産業スピリット
ところでぼくはウルフ・オブ・ウォールストリートにおける劇伴の使われ方について一切何も述べていなかったことに気がつきましたので書きたい。ヘッダ画像をお借りしています。
それは鬼のように長い物語の中盤で流れるフー・ファイターズのエバーロングです。片仮名で書いてしまうとあほっぽい。
Everlongとは、ぼくにとってFoo Fightersとの出会いの中で最も特筆すべき歌だった。
友達がEverlongの歌詞を所属団体コミュニティみたいなとこのIDとして使っていた(いま現在当該コミュニティは存在しないし、そのIDも別場所で使い回されてはいない)ことに端を発してその存在を知覚した。
それぐらい、あるひとりのパーソナルに紐付けたくなるぐらい―――――いい歌なのだろうかという好奇心が勝った。
当時の時点でもかなり昔の歌であると知った。だけど、USロックにありがちな金の香りもしなかったし、なんなら現時点で2023年にリリースされた歌だと紹介されたら信じると思う。それぐらいの信頼をぼくの中でEverlongに対して抱いてしまっているらしい。
つまり歌として、類まれなる完成度なのがEverlongの特徴なわけです。
斯くしてぼくの中で良い歌であると刻まれたEverlongを、ぼくは果たしてマーティン・スコセッシが監督だったウルフ・オブ・ウォールストリートの中で再び聴くことになりました(別に普段からとんでもない数聴いていた)。
ただでさえマーティン・スコセッシがやたら好きになりつつあるぼくは(レオデカについてはそうでもなかった)、物語が絶頂に及んでいるその場面で、USロックの中でも最高峰の完成度があるとかつて思っていたEverlongが流れたことはちょっと時間が止まる体験価値をもたらした。
ぼくは映像を(当人がガチで理解できるんだったら)基本的にどれぐらいの速度で見ても良いと思っていて、そのルールは自分にも適用されますが、いい歌がかかる場面では流石に等速で見る。
いい歌がかかるときと、はちゃめちゃに緊張するシーンだったり、格闘技術が高すぎて等倍じゃないと目で追えない時もそうですね。
最近で言うと、ファブルの岡田准一が敵をぶん殴ってるところとか、セント・オブ・ウーマンでアル・パチーノが激烈な演説する場面では倍速で見る気にならなかった。アル・パチーノを全身で感じた瞬間だった。
Everlongが起用されたのは前述の通りレオデカが絶頂期にあるシーンでした。つまり悪の限りを尽くした状態……というと聴こえは悪いですが、物語のベクトルが悪な方向に向いてるんだから別に間違ってはいない。ただそっから転落するだけなので何とも言い難いんですが………
そして他にも知る歌がいくらか流れてたんだけど、Everlongの衝撃にすっぽ抜けてしまった。Britney Spearsとかも流れてましたっけ……いやそれはシニアなんたらいう35歳ぐらいまで植物人間だった少女が再び高校に通う映画でしたっけ。
Everlongはレオデカが見た目だけで選んだ女に船を献上するシーンで流れる。船を借りる代もかかっただろうし、水上ヘリ撮影代もパーティシーンの舞台美術も凄まじかっただろうなと思う。
そのようなウルフ・オブ・ウォールストリートの一大シーンを飾る歌がEverlongだったことに、ぼくらはマーティン・スコセッシの選球眼を観るわけです(共同プロデューサであるレオデカの選球だったらどうしましょう)。