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読んだ感想

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【読んだ感想】『暗幕のゲルニカ』原田マハ

【読んだ感想】『暗幕のゲルニカ』原田マハ

「暗幕のゲルニカ事件」
国連安保理の議場入口近くに飾られているゲルニカのタペストリー。これはピカソの存命中にピカソ監修の元で制作された。
2003年2月5日、アメリカのパウエル国務長官はこのゲルニカのタペストリー前でイラクへの軍事作戦の容認を求めた。その時、タペストリーは濃紺の布で覆われていた。

この事件を契機に作者はこの物語を書いた。

1937年〜1945年のパリと2003年のニューヨーク。

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【本の感想】『コンビニ人間』村田沙耶香

【本の感想】『コンビニ人間』村田沙耶香

子供の頃、毎年、鶏を5羽飼っていた。
妹とその鶏達に名前をつけ、小屋の掃除の間、庭に放たれた鶏と遊んでいた。
お祭りやお正月など特別な日に、父がその鶏を〆る。〆た鶏が温かい間に羽をむしるのが私たち姉妹の仕事だった。キャッキャと騒ぎながら羽むしりを楽しむ3姉妹。
それを見ていた母は「この子達は悲しくないんだろうか。この子達に可哀想という気持ちはないのか?」と心配していたらしい。大人になるまで、母のそ

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【本の感想】『薬指の標本』小川洋子

【本の感想】『薬指の標本』小川洋子

薬指の標本

婚約指輪や結婚指輪は、通常、左手の薬指に嵌める。
だから、私は薬指に好きな人との繋がりを連想し、特別な意味合い感じてしまう。

そんな薬指の先を失ってしまった主人公が、偶然見つけた標本室で働くところから物語は動き出す。

無かったことにはしたくはないけれど、心の奥にそっとしまっておきたい出来事や思い出。少なからず、人は1つくらいはそう言うものを抱えていると思う。
辛い出来事、懐かしい

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【本の感想】『苦海浄土 わが水俣病』石牟礼道子

【本の感想】『苦海浄土 わが水俣病』石牟礼道子

人生でこんな本に出会うとは思っていなかった。
友人に勧められていなかったら、きっと読んではいなかったであろう。
水俣病患者の壮絶かつ清冽な記録。

読みながらドキュメンタリーを観ているような感覚に陥った。
ノンフィクションや小説などの書き物を読んでいるのとは全く違う。
情景描写がただの情景描写ではなく、そこに入り込んだ魂が伝わってくるような、そんな文章だった。

私には馴染みのない方言による語りの

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【本の感想】『海のふた』よしもとばなな

【本の感想】『海のふた』よしもとばなな

海のふた

無いものを有るかの如く表す言葉は、不意をつかれるしハッとして何かに気づく。
そして今までに無いその響きにワクワクする。

それで海のふたがどんなものか想像してみた。
世界の海、全体を覆うふた。
これは球体で、北半球と南半球で半分に分かれている。
大陸の部分はくり抜かれていて、上から被せるとそのくり抜かれている部分に大陸がピタッと入る。勿論小さな島々もズレることなくきちんとおさまる。

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