愛がすべて
愛が支配している世界。
通勤途中のサラリーマン。
少し先の信号機のない交差点で、
手を上げている女の子。
走行中の車が、
交差点手前で停止。
女の子は急いで渡ると、
運転手にお辞儀をして走り去った。
「愛だね~」
男性は胸が温かくなるのを感じながら、
よく立ち寄るコンビニに。
サンドイッチとコーヒーを手に、
カウンターの店員の前へ。
「いつも…助かってます」
ポーーン!
「はい、大丈夫です。
いつも、ご利用ありがとうございます」
男性はそのまま、
急いで最寄りの駅へ。
改札口。
「いつも、ご苦労さまです」
ピピッ!
改札を抜ける男性。
「良かった~足りてた~」
男性はそのままホームへ。
ホームには通勤通学の人々。
そこに電車が入ってくる。
「おい!」
「やだ!」
「これはヤバいぞ!」
「誰?
足りてない人!」
ホームに到着した電車は1両。
「おい!
みんな感謝が足りないぞ!」
「そうよ!
毎日使ってるからって、
慣れちゃダメよ!」
「日々、こうやって、
会社まで運んでもらえるのは、
時間通りに電車が来てくれるからだぞ!
忘れたのか!?」
「当たり前のことは、
当たり前じゃないんだよ!
小さなことにも感謝を忘れちゃダメ!」
「みんな感謝しよう!」
「そうよ!
電車が来てくれたことに!」
「いつもありがとう!」
「あなたのおかげで、
遠くの会社まで苦労せずに行けます!」
パァーーーーーン!
「来たー!!」
「やったー!!」
「ありがと~!!」
「いつもいつもありがとね!!」
10両編成の電車が到着し連結する。
人々は感謝しながら電車に乗り込む。
「ああ~助かった~」
「ほんとよね~」
「電車、様々だな~」
「いつも快適です」
電車はゆっくり走り出す。
「一時はどうなるかと」
「ほんと…愛がないとダメね」
「日頃から…
感謝の気持ちを、
忘れないようにしないと」
「そうよね。
この世は全て…愛だから」
コンビニでは愛でモノが買え、
改札口も愛があれば通れる。
車も電車も愛で動いていて、
電車は愛の祈りでやってくる。
人々は…
全てのものを慈しみ、
全てのことに感謝する。
この世界の人間は、
愛そのもので生活をしている。
ガタンゴトンガタンゴトン
ガタンゴトンガタンゴトン
「あぶねえ~。
…ったく、さっさと来いよ。
もう少しで、
遅刻するとこだったぞ」
キキーーーーッ!!
「愛確保のため、
緊急停車いたします」
(おいっ!)
(誰だぁー!)
(ちょっと~!)
(何してくれてんのよ~!)
「しばらく、お待ち下さい」
「ダメよ、みんな!」
「人を責めてはダメ!」
「そうだ!
誰だってイラッとする時はある!」
「でもみんな!
それでも感謝を忘れちゃダメだ!」
(ヤバいヤバい!
ごめんなさい!ごめんなさい!
僕のせいです、ごめんなさい!
みなさん、本当にすいません!
みなさんのおかげで、
目が覚めました!
え~と…いつも…
安全に…会社に行けるのは…
あなたのおかげです!
遅刻しそうになって焦るのは、
僕がギリギリで起きるからであって、
決して電車様のせいではございません!
どうかど~か、許して下さい!
週末ボランティアで、
駅構内清掃に参加しますので!
このとおりです!!)
「愛…確認できましたので、
再出発いたしま~す」
ガタンゴトンガタンゴトン