大人の力
無邪気に子供たちが、
みんなで集まってお喋り中。
「何で人には、
毛が生えるか知ってる?」
元気な男の子が言う。
その問いに、
みんなが思い思いの答えを返す。
「ブブッー!
みんな不正解。
正解は身を守るため!
でした~!」
「なんでぇ~」
「どうしてぇ~」
「お父さんと、
サウナに行った時、聞いたんだ。
毛が生えてる場所は、
人間の弱点なんだって。
頭に毛が生えてるのは、
脳みそを守るためだって。
そんで、足とか腕に毛が生えてるのは、
寒さから身を守るためなんだって」
「まだ僕、生えてないよ」
「僕ちょっと生えてきた」
「お父さん言ってたけど、
子供はまだ大人に守られてるから、
毛が生えてなくてもいいんだって。
子供は防御力が低いから、
お父さんお母さんが、
守ってるんだよって」
「へぇ~」 「へぇ~」 「へぇ~」
「だから大人に成長すると、
ドンドン毛が生えてきて、
成人式の日には防御力が、
爆上がりするんだぞって!」
「すげぇ~!
じゃあうちの父ちゃんって、
防御力Maxじゃん!
髭も生えてるし、
胸、背中、あそこもお尻も。
全身ボウボウだぜ~!」
「それ最強じゃん!」
「でも、お母さんは生えてないよ。
いつもスベスベでツルツルだよ。
防御力低くて大丈夫なの?」
「あれはわざと剃ってるんだよ。
朝、お母さんヤーコンとかいう機械で、
すね毛やってんの見たもん」
「何でわざわざ防御力低くするの?」
「お父さんに聞いたら、
女の人は防御力を捨てて、
パラメーターを全部、
美しさに注ぎ込んでるんだって…。
言ってることわかんないけど」
「私もそっちがいい~」
「女子わかんね~。
絶対、防御力の方がいいって」
「美しい方が絶対いい!」
「何でも防げる、防御力!」
「防御って、どこで使うのよ~!」
しばらく論争が続く…。
そして落ち着いた頃、
男の子がポツリと呟く。
「でも僕たち、
いつまで低いままなんだろ?
いつ上がるのかな?」
「でも5年生の大輔くん。
結構、毛深いって、
お兄ちゃん言ってた」
「じゃあ、僕らもうじき
レベルアップするんじゃない!」
「おお!」 「おお!」
「待って!」
「……」 「……」 「……」
「本当にそう?」
「何が?」
「大人になると毛が生えて、
防御力が上がるって…
それ…嘘じゃないの?」
「何でだよ!
お前の父さんだってそうだろ?」
「お父さんそうだけど…」
「じゃあ間違いないよ!
僕も早く大人になって、
早く、防御力上げたいなあ」
「俺も!!」
「僕も!!」
「じゃあ!
…校長先生は?」
「……!」
「……!」
「……!!」
「……!!!」
「お寺のお坊さんは?」
「……!」
「……!」
「……!!」
「……!!!」
「これ、
上がるのって防御力じゃなくて、
精神力じゃない?」
「あ~」 「あ~」 「あ~」 「あ~」