兄貴とモン吉
棚。
「アニキ~」
「どうした~モン吉~」
「オレっち納得いかねっす」
「何が~」
「俺たちって、
まだ退くのは早いと思うっす」
「どうして~」
「だってまだ、こんなに暑いんすよ?
なのに、もうお払い箱って、
わけがわかんねっす!」
「モン吉~」
「何すかアニキ~」
「今日も暑いなあ~」
「だからそう言ってるっす!
世の中、温暖化とか言って、
四季も変化してるのに、
あいつらいつも通りなんすよ!」
「秋はいつ来るんだ~?」
「もう暦では秋っすよ、アニキ!
そしてやつらの刺客が、
俺らの居場所を奪いに来てるっす!」
「それは、てえへんだな~」
「アニキも大変なんすよ~!
俺らレモン入り商品はこの猛暑日に、
散々熱中症対策として貢献してきたのに。
あいつらときたら秋になった途端、
暦通りきっちり入れ替えてきたんす!
ほらそこにも、
秋の味覚コーナーがあるっす!」
「そいつぁ、てえへんだ~」
「アニキも入れ替えられるんすよ!
隣見て下さい!」
「ん?なんだこれは?
茶色い…栗か?」
「そうっす!クリっす!
やつらが先陣っす!
そして恐らくもうすぐ奴らも来るっす!」
「誰か、客でも来んのか~?
じゃあ~
栗まんじゅうでも用意しとくか~」
「アニキ…もてなす相手じゃないっす!
奴らがこの場所を、
乗っ取りに来るんっす!
秋と言えばアイツ…
カボチャも来ます!」
「プリンもあるといいな~」
「そしてここ数年は、
コイツが最強っす!
キングオブ……IMO…
安納芋がぁ~!!
あいつが来たらもうダメっす!
あいつの通った後はレモンはおろか、
シロツメクサも生えないっす!」
「スイートポテトも美味いよな~」
「アニキ~!
しっかりして下さい!
まだ残暑は厳しいっす!
10月まで暑いって噂っす!
俺らレモンの役目は終わってないっす!
まだやれるっす!
頑張ってこの場所を死守しましょう!」
「なあ、モン吉~」
「何すかアニキ~」
「いつか~
芋や栗や南瓜に~
…
レモンかけるようになったら~
…
幸せだろうなあ~」
「アニキィ~~」