ゆけっ!大木戸大臣!
委員会室。
「質疑を行います。
坂木みどりさん」
「おはようございます。
自由なんだけ党の坂木でございます。
EV充電器補助金の不正受給が、
先日の週刊誌で報じられました。
大臣の息子さんが代表を務める会社が、
便宜を受けたと報じられてますが…
これについて、
大臣はどうお考えですか?」
「大木戸大臣」
「……」
「大木戸大臣!」
「……どうしよう~?
どうすればい~い?」
「大臣、落ち着いて下さい。
僕が指示しますので、
その通りにお願いします」
「わ、わかったよ…」
「大木戸幸雄くん!」
「はい!…
…どうする?」
「大臣、まずは…
あまえる…で」
「え~坂木議員。
そのお話ここでします?
うちらは同郷…
しかも、同じ大学出身ですよね?
ちょっとは手加減して下さいよ~。
そういえば先週、
共通の友人の結婚式でご一緒しましたね?
色々、お互いの個人的な話もできて、
とても素敵な夜でした。
坂木さんはお酒が入ると、
ちょっと呂律が回らなくなるんですね?
とってもチャーミングでしたよ。
あの夜の口調でもう一度、
質問して頂けませんか?」
「言いません!!
ちょっと、ふざけないで下さい!!
さっさと質問にお答え下さい!!」
「あまえる…大失敗ですね…
というより下手過ぎです。
坂木議員の顔見て下さい…
ドン引きですよ…。
かなり気持ち悪がられてますね…
大木戸大臣」
「すまない…
あまえるが、よく分かなくて…」
「大木戸大臣!
早く、答えて下さい!」
「どうする?
私は何をすればいい?」
「大臣、では次は…
てっぺき…で」
「え~申し上げます。
その件は私の息子のことでありますが、
一個人の話であります。
もし息子がそのような不正に、
手を染めていたのなら、
それは然るべき刑罰が科されるものと、
考えています。
ここで関係のない発言は控えて頂きたい。
国民の血税で私たちは今、
仕事をしている最中なんですよ」
「うっ、ぐぬぬぅ……」
「大木戸大臣いいですよ!
効いてます!
効果バツグンです!」
「そうか、よかった!
君の指示のおかげだよ!」
「大臣…
そう仰いますがお子さんですよね?
血の繋がった息子さんが、
不正を働いていたということを、
全く知らなかったのですか?
知らないにしても…
あなたは親ですよね?
そうなると親としての、
管理能力の低さが露呈した…
ましてや…
子供の不祥事に知らんぷりというのは、
あまりにも無慈悲すぎませんか?
それとも冷酷無比な方だから、
国民からお金を搾り取るような、
政策を打ち出せるということかしら?」
「大木戸大臣」
「…ど、ど、どうしよう?
さらに攻めてきたよ~」
「うろたえないで下さい、大臣!
大丈夫です…自分を信じて!
次は…いちゃもん!」
「え~これは今、
審議しなければいけないことでしょうか?
しかもまだこの件は裁判中です。
刑が確定していない以上、
私の方から申し上げることはありません。
このような貴重な時間を、
私的なことで浪費するのは、
納税者に対して大変失礼なことだと、
私は考えます!」
「ぐっ!ぐぬぬぬぅ……」
「素晴らしいです、大臣!
これでもうこの件に関しては、
質問できないでしょう!
そして次の質問で隙があれば、
反撃に転じましょう!」
「わかったよ、里市補佐官」
「では、もうひとつ質問します。
現在、国民は増税と低賃金、
そして円安による物価高に苦しんでます。
なぜ、消費税を下げないのですか?
国民から金を巻き上げるだけ巻き上げて、
他に目立った政策や打開案もない。
どうやって国民の生活を、
守るおつもりですか?
お聞かせ下さい!」
「ここです、大臣!
今がチャンスです!」
「どうしたらいい?
何をすればいいんだい?」
「大臣…ここは…
つぶらなひとみ!」
「ジーーーーーーー」
………………
「大臣、何ですか急に?!
何で無言で見つめてくるんですか!
気持ち悪い!」
「里市くん!
また、気持ち悪がられたよ!
これ、失敗じゃないの?!」
「大丈夫です。
これで相手の攻撃力が、
下がりましたから」
「そうなの?」
「では、次の手です!
うそなき!」
「ぐすっ……なんで…
なんでそんな…ひどいこと言うの?
別に…私が…増税したわけじゃないよ…
私は反対したんだよ……
しない方がいいですよって…
それを…何も知らないで…
頭ごなしに…坂木さん…ひどいよ…
ひどすぎるよ…
ワアアアアア~~~ン!!!」
「え?!
ちょっと待って!!
大号泣!?
え!?私?!
私が悪いの!?
ウソでしょ!!
こんな場所で大の大人が泣く?!
質問が悪かったの?!
え!?
何、どういうこと?!
これ、どうすればいいの!?」
「大臣さすがです!
これはいけますよ!
あとひと押しです!」
「ワアアアア…
そうか…
よし!
じゃあ、ここで必殺の…
あばれる!」
「大臣~!!
それはダメで~す!!」
「失礼…ちょっと取り乱しました…。
んん!
今の政策は情勢に合わせたものであり、
何ら批判されるものではありません!
言わせていただきますが坂木さん…
あなたの党は何をしたか覚えてますか?
あなたがたが先に、
増税したんですよね?!
大幅増税にも関わらず結果…
国の借金を増やしただけ!
何てことをしてくれたんですか?!
あなたがたは与党の時…
国民の生活を守らず…
私腹を肥やしてたんじゃないですか!?」
「ううっ!ぐぬぬぬぅぅぅ……」
「それに何ですか!!
あなたの政党は、
私たちが何か言うたびに批判批判!
ちゃんと考えて批判してます?!
野党だからって…
逆張りすればいいってもんじゃ
ないんですよ!!
そんなだからブーメラン政党って、
言われるんですよ!!」
「ムムムゥゥ……」
「大臣!!
ヤバいです!!
それ以上は危険です!!」
「野党とはなんですか?!
逆張り論破なんて、
そんなの誰にだってできますよ!!
そもそもあなた方は政治家なのですか?!
うちの議員をご覧なさい!
ザ!政治家って感じでしょ?!
いまだに7割の議員が…
パワハラ・セクハラを繰り返してます!
贈賄?収賄?
やってるに決まってるじゃないですか!
キックバック?!
バックパスもスルーパスも、
みんなプロ級ですよ!!
いいですか!!
うちらは政治家なんですよ!!
ここで実名をお出ししましょう…
これ…
1時間で足りるかな~」
「坂木議員すいません!!
補佐官の里市です!!
緊急事態なんです!!
大木戸大臣はいま、
こんらん状態でして、
ご協力をお願いします!!」
「なに急に?!
あなたは大臣の補佐官でしょ?!」
「わかってます!
でも、今世紀最大の、
政治スキャンダルを止めないと!!
お願いします!!
でないとこの国自体を揺るがす、
大事件へと発展します!!」
「わ、わかったわ!
私は何をすればいいの?!」
「僕の指示に従って下さい!」
「いいわ!」
「じゃあ、坂木議員!
うたう!」
♪いつもいつでも うまくゆくなんて~
保証はどこにもないけど~
「総理大臣なんかねぇぇぇ……
あれだよぉぉぉ………
会員制のぉぉぉ…………
……あそこで……
……ちょめ………
ぐぅぅぅぅ~~すぴ~
ぐがぁぁぁ~~すぴ~」
「よし!
間に合った!
すいません、助かりました坂木議員!」
「今のは、何なの?」
「今のはうたうです。
相手を眠らせることができます」
「まあ、それはいいけど…
大臣どころか…
みんな寝ちゃったんだけど…」
「大丈夫です。
みなさん、いつものことですから」