雅なお時間 ~自炊~
テラス。
シェードアンブレラの下に、
優雅な振る舞いの女性二人。
「西園寺さん」
「何です、十文字さん?」
「ご存知かしら?」
「何かしら?」
「世の中、お湯を沸かすことを、
自炊と呼ぶの、ご存知かしら?」
「それはどういうことかしら?」
「レトルト食品をそのお湯で温めれば、
それは自炊ということらしいですわ」
「その方はきっと、
お湯を炊いているのね」
「それはどうかしら?」
「どうなのかしら?」
「……」
「……」
「西園寺さん。
コンビニ弁当を温めただけで、
自炊という方がいるの、ご存知かしら?」
「それはどういうことかしら?」
「電子レンジを使うことが、
自炊ということらしいですわ」
「きっとその方は、
フライパンでゴキ●リを潰しても、
自炊というのでしょうね」
「それはどうかしら?」
「どうなのかしら?」
「……」
「……」
「世間では、買ってきたサラダに、
ドレッシングをかけることを、
自炊というの、ご存知かしら?}
「それはどういうことかしら?」
「料理に携わることであれば、
それは自炊ということらしいですわ」
「自宅のお箸を出してもそうならば、
もう自ら炊くという漢字は、
適切なのかしら?」
「それはどうかしら?」
「どうなのかしら?」
「……」
「……」
「西園寺さんは、
自炊されたことございますか?」
「私はそんなことはしませんわ」
「そうなのですか?」
「当たり前です。
私は西園寺家の人間ですから」
「ならばなぜ、
フライパンでゴキ●リなどと?」
「ハァーーーッ!!
十文字さん!!
また、謀ったわね!!」
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