バ畜
バ畜とは…
学生なのに学業や私生活を犠牲にして、
アルバイトなどに励む人のこと。
人手不足により社員並みに、
働かされているバイトの状況。
休み時間。
女子大学生二人。
「ねえ、ちょっと!」
「どうしたの?」
「これ見て!」
「なに?
ただのバイト募集じゃない」
「ここ!
ここ見て!」
「ん?
え!?ウソでしょ!!
時給3000円!!」
「ついにここまで来たね。
そもそもバイト代って、
安いと思ってたのよ。
正社員と同じことして、
低賃金はおかしいって」
「そうだね。
立場が違うだけだからね」
「私、高校の時にやってたんだ。
レストランのバイト」
「じゃあ、これピッタリじゃない。
申し込んだ?」
「今から…
はい、押した!
…返信来た!
面接日のお知らせも来た」
「レス速いね」
「なかなかこんな高額バイト、
特殊な仕事じゃないと、
ありえないと思ってたから、
ちょっと嬉しい」
「市場の倍以上だからね」
「面接、頑張らないと」
「頑張って」
面接日。
「はい、お待たせしました。
人事担当の佐藤です。
え~と、岡本さんでしたね」
「はい。
本日は、よろしくお願いします」
「合格です。
いつから入れます?」
「え?!
合格ですか?
まだ、何もしてませんけど」
「あなたの履歴書は、
データで貰ってますし、
見た感じ特に問題ないようなので」
「はあ…
ありがとう…ございます」
「明日の昼からって、
大丈夫ですか?」
「明日に昼ですか…大丈夫ですけど」
「じゃあ、明日の昼からお願いします。
制服は3着貸与します。
クリニング代もこちら持ちです。
うちはタイムカードは、
タブレットの顔認証で、
出退勤確認しますので、
あとで登録お願いします。
登録しますと、
チェーン店全店80%割引きになります。
スマホ決済アプリはお持ちですか?」
「あっ、はい。
3つほど」
「バイト代はそれで、
月末にお支払いすることになります。
ですので、銀行口座はいりません。
岡本さんは今回、
ネット申し込みですね」
「はい、そうです」
「あと岡本さんの場合は、
復職扱いということになります。
以前、レストランでの、
バイト経験があるようなので。
そうなりますと、
ネット申し込みで3万円と、
復職応援キャンペーンで7万円で、
合計10万円。
月末のバイト代と一緒に、
振り込まれることになります」
「そ、そんなに!?
わ、わかりました。
ありがとうございます」
「あと仕事の説明ですね。
ホールの給仕は全て、
AI配膳ロボットがしてくれます。
配膳もそうですし、
お客様がこぼしてしまった、
飲み物などの拭き取りや処理も、
やってくれます。
もちろん店内の掃除や、
不足品の補充や消毒も」
「あのう、すいません」
「はい、何ですか?」
「私は一体、
何をすればいいのでしょうか?
それだけAIロボットができるなら、
バイトはいらないと思うのですが」
「あなたには…
クレーム対応をしてもらいます」
「クレーム対応?」
「AIロボットの不始末を、
あ・な・たが代わりに処理して下さい。
たまにあるんです。
誤動作だったり、
経年劣化による暴走が。
そしたらその時が、
あなたの出番です!
いいですか?」
「よくないです!
ロボットの不手際の尻拭いなんて!
絶対に嫌です!
失礼します!」
バタンッ!
「ふ~~。
今日もダメだったかあ~。
本社に連絡しないと…
……
あ~もしもし佐藤です。
……
はい、ダメでした。
ええ…
ちょっと無理がありませんか?
……
それは分かってますけど…
……
ホールに人間を戻すって、
できないんですか?
……
ダメ?
1回ロボット導入したら、
もう元には戻せない。
それも分かりますけど…
……
これで今月20人目ですよ。
断られたの…
……
僕のせいですか?
……
あの、すいません。
そこまで言うなら言わせて貰いますけど、
僕の時給、上げてくれません?
……
せめて、1000円に」
お疲れ様でした。