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メイビーブルーウェーブ

続きものです。
前作はこちら。

あらすじ
せっかく大人気ラーメン店で、
念願ねんがんのラーメンを食べれたのに、
想像をはるかに超えたオーソドックスさに、
困惑こんわくの色をかくせない男。
 
それ以上に会社の同僚に、
この店の自慢をしたことが、
さらに男を追い詰めることになる。
 
ラーメン店のカウンターで、
黙々もくもくとラーメンをすする男性。
 
(この味はない…
 あまりに平凡過ぎる…
 特にこのチャーシューは好みじゃない…
 ないけど、これだけ人気だと…
 俺の舌がおかしいのか?
 
 もう、同僚には嘘つこう
 
 まあまあ美味しかったよって、
 ひかえめに言えば大丈夫だろう…。
 
 いや待て!
 
 このレベルめたりしたら、
 逆にあとから食べにきた同僚に…
 
 あれが美味しいってお前、正気か?!
 って言われそうじゃない?
 
 それに美味しいなんて言って、
 じゃあ、今度みんなで行きましょう!
 なんてことになったら…
 
 地獄の呼び水
 なるんじゃないか、これ!
 
 ……わかった!
 
 なぜ気付かない俺~。
 
 このラーメンが美味しければいいんだよ!
 単純なことじゃないか~♪
 
 ちょうど目の前に、
 こんなに調味料があるじゃないか~♪
 
 味変あじへん…これはいける!
 
 よし!
 まずはちょっと胡椒こしょうで様子見…。
 
 パッパッとふた振り…
 
 ……
 
 ……いきなり失敗
 
 様子見の軽い気持ちが、
 あだになったぞこれ!
 
 明らかに味が悪い方へかたむいた。
 浮いてる胡椒がゴミに見えるぐらい…。
 
 仕方ない!
 
 ここはお酢で中華っぽく、
 アレンジするしか手はないな。
 
 ほんの少し入れれば……。
 
 チョンチョンって…。
 
 …… 
 
 合わん!
 …全く融合ゆうごうしない。
 
 中国を越え、
 東南アジアをさらに越え、
 知らない島の料理のような味…。
 
 個性と個性がぶつかり過ぎて、
 口の中が大乱闘!
 
 もう駄目だ…
 これだけは使いたくなかったが…。
 
 もうこれしかない!
 
 ラー油の辛味…。
 
 これで全てを、
 無効化するしかない!
 
 酸辣湯麺すーらーたんめんになることを祈って…。
 
 1・2・3滴…ぐらいかな?
 
 ……
 
 …俺の願い届かず…。
 
 もう万策尽ばんさくつきた…。
 もうこれはベースの問題じゃん!
 
 手のほどこしようがないことを、
 証明しただけじゃん!
 
 仕方ない…もうさっさと食べ終わって、
 この場から立ち去ろう
 
一番奥のカウンターの男性。
 
「店主!替え玉1丁!
「はいよ!」
「店主!こっちも1丁!
「あいよ!」
 
次々と替え玉を頼む客たち。
 
「店主!俺も1丁!
3連続ありがとうござ~い!」
 
(これ何かのイベント?
 奥から順に客が替え玉頼むんだけど
 しかもこれ、
 どんどんこっちに向かってきてないか?)
 
「店主!私も1丁!
7連続!
 今日の新記録ありがとうござ~い!
 
(何なの?
 みんな笑顔で替え玉頼むのって怖っ!
 俺は大盛りやめたから、
 お腹的には入るけど…
 俺はもう一刻も早く帰りたいんだ!
 絶対!頼まないよ!
 頼む!誰か止めてくれ~!)
 
「テンシュ!コッチモ1丁デス!
 
外国人~なんで、あんたまで~。
 この替え玉ウェーブ万国共通?!
 やばい!もうすぐこっちへ来る!)
 
「店主!1丁よろしく!
12連続当店タイ記録!
 ありがとうござ~い!」
 
「……」
「……」
 
「……」 「……」 「……」 「……」
 
全員こっち見てるよ
 しかも人を罪人ざいにん見るような目で。
 いやもう少しで…
 食べ終わって帰るから…)
 
「んッ!んッ!」
「んッ!んッ!」
「んッ!んッ!」
 
入り口で待つ客が咳払せきばらを始めた。
 
「……店主…
 い…っちょう…」
13連続新記録ありがとうござ~い!
 新記録樹立記念
 お客さんにはチャーシュー追加で~!」
 
(やめろ~!
 もう~帰らせて~~~)
 
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

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二月小雨
お疲れ様でした。